黄金(1948)
1948年/アメリカ
ジョン・ヒューストンの本領発揮
総合
85点
ストーリー
85点
キャスト
85点
演出
85点
ビジュアル
85点
音楽
80点
B・トレイヴンの原作をジョン・ヒューストンが監督・脚本化し<人間の欲望の果てがもたらす人生の可笑しさ>を描いた3人の男の物語。
赤貧の暮らしから抜け出すために必死な男盛りのドブス(ハンフリー・ボガート)、しっかりものの若者カーテイン(ティム・ホルト)そして年老いた山師ハワード(ウォルター・ヒューストン)が出会ったのがメキシコのタムピコ港。ハワードの自信たっぷりな言葉に乗ってシエラ・マドレ山脈に金鉱掘りへ。
H・ボガートが代表作「カサブランカ」のイメージ脱却を試みた異色の汚れ役。貧しいがそれなりの良心を持っている男が金を手に入れると仲間を信じられず疑心暗鬼になっていくさまが哀れに描かれてゆく。人間の欲の深さは限りないというお手本のよう。ハリウッド映画としては異色の展開ぶりがかえって評判を呼んでヒットしたという。
J・ヒューストンと黒澤に例えると、ボガートは三船である。
志村喬にあたるのがW・ヒューストンで監督の実の父である。行く末を見越した豪快な笑いはアカデミー助演男優賞受賞に相応しい。もう一人の男T・ホルトは木村功か?決して不幸な終わり方はしない良識ある暮らしが待っているタイプ。
3人3様の鋭い人間観察はJ・ヒューストンと黒澤の共通項でもあり、これでアカデミー監督・脚色賞を受賞したのも頷ける。