トリノ、24時からの恋人たち
2004年/イタリア
トリノの街が影の主役
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 75点
キャスト 80点
演出 80点
ビジュアル 85点
音楽 85点
トリノ在住のインディペンデント製作者であるダヴィデ・フェラーリオ監督ならではの、映画へのオマージュ。映画好きには堪らないシーンが続出するので、片時も見逃せない。
若い女性アマンダに片思いのマルティーノとアマンダの恋人アンジェロのラブストーリーだが、ネチネチしたところがない。これはヌーベル・バーグのトリュフォー監督「突然炎のごとく」がベースになっている。アンジェロの人物設定はゴダール監督「勝手にしやがれ」のジャンポール・ベルモンドにそっくり。
そして何よりこの映画に欠かせないのは、トリノの街並みとその象徴である国立シネマ・ミュージアムだ。まさに影の主役といえる。
主役の3人はそれぞれ持ち味を出して魅力的。なかでもヒロインのフランチェスカ・イナウディが映画初出演とは思えないノビノビとした演技に好感を持った。
フェラーリオ監督が「国立シネマミュージアムの創設者・マリア・アドリューナ・ブローロと喜劇王バスター・キートンに捧ぐ」思いがバンダ・イオニカの叙情たっぷりな音楽と相まって全編を流れている。ラブ・ストーリーを期待してみると展開が唐突で物足りない。好き嫌いがハッキリする映画でもある。
太陽がいっぱい
1960年/フランス=イタリア
ヨーロッパ映画全盛期の印象的なサスペンス映画
shinakamさん
男性
総合
90点
ストーリー
85点
キャスト
85点
演出
85点
ビジュアル
85点
音楽
85点
ルネ・クレマン監督、アラン・ドロン主演の傑作。2人にとって、これが代表作と言っていいのでは?イギリスの探偵小説家、パトリシア・ハイスミスの原作をスリム化して、一級品のサスペンス映画となった。
A・ドロン(トム)は貧しいながら野望を秘めた若者を好演している。モーリス・ロネ(フィリップ)に対する憧れと嫉妬から殺してしまうにも拘らず、見ていて思わず同情してしまう。そしてニーノ・ロータのテーマ音楽に乗ってハラハラ・ドキドキのラスト・シーンを迎える。
この頃のヨーロッパ映画は全盛期で、その中でもこの映画は印象に残っている作品のひとつだ。
リプリー
1999年/アメリカ
原作に忠実な「太陽がいっぱい」のリメイク
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 80点
演出 75点
ビジュアル 80点
音楽 75点
「イングリッシュ・ペイシェント」のアンソニー・ミンゲラ監督がマット・デイモン主演でパトリシア・ハイスミス原作を映画化。「太陽がいっぱい」のリメイクでもある。
サスペンスとしての面白さよりも、若くて貧しいアメリカ青年リプリー(M・デイモン)の心情を中心に描いている。ディッキー(ジュード・ロウ)に対するホモ的愛情や友人ピーターとのウエイトが終番高くなったのも「太陽...」との違い。
リプリーと2人の女性マージ(グィネス・パルトロウ)やメレディス(ケイト・ブランシェット)との関係も明確で、見ていて彼に対する思い入れが薄れてしまい、ラストーシーンの盛り上がりに欠けるハメになってしまった。
「カポーティ」でアカデミー主演男優賞に輝いたフィリップ・シーモア・ホフマンがディッキーの遊び友達で出ているのに注目。
影武者
1980年/日本
黒澤時代劇の集大成
shinakamさん
男性
総合
85点
ストーリー
85点
キャスト
80点
演出
90点
ビジュアル
95点
音楽
85点
黒澤明監督久々の時代劇超大作でカンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品。製作にフランシス・F・コッポラとジョージ・ルーカスが加わっているだけあって、グロバール・スタンダード作品に仕上がっている。特に戦いのシーンが素晴らしい。これだけのエキストラと馬を使った日本映画を見たことがない。今ならCGを駆使して作ったのだろうが、全て実写で撮った黒澤監督の執念を見た気がする。途中で製作費が不足して中断したのも頷ける。
欲をいうと、流れ者の盗人が一目遭っただけで、何故信玄の影武者を承諾したかが描き切れていない気がする。仲代達矢が急遽主演となって好演しているが、勝新太郎にさせて見たかった。
モブスターズ 青春の群像
1991年/アメリカ
実在のギャング、C・ルチアーノの青春ドラマ
shinakamさん
男性
総合 75点
ストーリー 75点
キャスト 80点
演出 70点
ビジュアル 75点
音楽 75点
米国・禁酒法時代のNYで育った4人の若者達の青春ドラマ。アル・カポネと並ぶ実在のギャング、チャールズ・ラッキー・ルチアーノがリーダーで、どのような青春時代を送ったかを描いている。CM界出身のマイケル・カーベルニコフ監督らしくカット毎の映像は丹念で美しい。しかしドラマ全体のメリハリ盛り上がりには欠けている。
ひとつは、実在の有名人を描くことで、事実に囚われすぎ散漫になってしまったこと。もうひとつは類似の名作を超えようとしたあまり焦点がボケてしまったこと。
ギャング映画として見所が豊富なだけ惜しい気がする。
主演のクリスチャン・スレーターは多感な若者を好演しているが、この手の映画の主役としては華がない。2人のドンを演じたマイケル・ガンボン、アンソニー・クインが迫力満点。
用心棒
1961年/日本
時代劇の常識を覆した画期的な作品
shinakamさん
男性
総合 90点
ストーリー 90点
キャスト 85点
演出 90点
ビジュアル 90点
音楽 85点
黒澤明監督の時代劇娯楽大作。円熟期に差し掛かった三船敏郎の代表作でもある。「七人の侍」と並んで、後に海外でリメイクされ、類似作品も多く作られた。何より大切な観客を楽しませる要素であるストーリー・アクション・映像美を全部満足させてくれるからだろう。特に日本映画の常識を覆した衣装・美術・殺陣・音楽をリアルに創造していて、モノクロ映画ならではの映像美を作り上げている。
黒澤組の面々が総出演しているが、ストーリー優先で有名俳優でも殆どアップで写していないし、メイクで素顔が分からないヒトも多い。それでもワン・カット毎にイキイキとした演技が見られるのは黒澤明監督ならではの手腕なのだろう。
男はつらいよ 花も嵐も寅次郎
1982年/日本
30作目で少し疲れが見えた?寅さん
shinakamさん
男性
総合 70点
ストーリー 70点
キャスト 80点
演出 75点
ビジュアル 70点
音楽 70点
シリーズ30作目記念で沢田研二がゲスト出演。
マドンナが田中裕子で寅さんはいつもより控えめ。2人の恋の後押し役に廻る。ネタ切れをチョッピリ感じさせる。もっとも観客動員数は歴代3位だったのでシリーズ健在振りも併せ持った作品でもある。
マッチポイント
2005年/イギリス
ウディ・アレンがロンドン上流社会で描きたかったもの
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 80点
演出 75点
ビジュアル 75点
音楽 80点
都会派コメディの大御所ウディ・アレンが、舞台をNYからロンドンへ舞台を移した、とても皮肉な物語。ジャンルとしてはラブ・サスペンスに入るのだろうが、何とも微妙なポジション。
ウディ・アレンはスカーレット・ヨハンソンという最もセクシーな女優をどう扱うかがこの映画の評価の分かれ目。アメリカから女優になるためロンドンへ渡ってきて、生きるのに必死で男に夢中になると他は目に入らないという性格をインプット。かつてのマリリン・モンローを思い出させる。
終盤のサスペンスが盛り上がったところで、完全に肩透かしを食らわせるところがW・アレンらしい。観客席のドヨメキを聴きながら一人ほくそ笑んでいるに違いない。
キンキーブーツ
2005年/アメリカ=イギリス
英国ならではのハートフル・コメディ
shinakamさん
男性
総合 85点
ストーリー 85点
キャスト 85点
演出 85点
ビジュアル 80点
音楽 85点
新鋭ジュリアン・ジャロルド監督が、英国特有のハートフル・コメディを手掛けた。製作・脚本は「カレンダーガールズ」のスタッフで、「フル・モンティ」「シャンプー台のむこうに」などに代表される、可笑しくてハッピーなのに思わずホロリとさせられるストーリーは、分かっていてもはめられてゆく。
カリスマ・ドラッグクイーンのローラ(キウェテル・イジョフォー)の存在感がこの映画の全て。衣装・メイク・音楽スタッフの総意でキャラクターづくりに苦慮した賜物だ。
主役の靴工場主、ジョエル・エドガートンは手堅い演技。従業員の脇役陣が個性豊かで、サラ=ジェーン・ボッソ、ユアン・フーバー、リンダ・パセット、ニック・フロストと枚挙に暇がない。
これも実話を膨らませた脚本を上手く表現したJ・ジャロルド監督の手腕に起因するのだろう。
アリ
2001年/アメリカ
ウィル・スミスがモハメド・アリになりきった
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 75点
キャスト 85点
演出 75点
ビジュアル 80点
音楽 80点
現存のボクシングの英雄・モハメド・アリがザイールでチャンピオンに復帰するまでの半生を描いた。マイケル・マン監督でウィル・スミス主演。
現存の人物を描いた映画は得てして本人を美化してしまい綺麗ごとで終わってしまうきらいがあるがこの映画も少し影響を受けている。特に私生活を描く部分にその感は否めない。
ウィル・スミスのアリ振りはその体形・ボクシングスタイルとも見事というほかない。これだけでアカデミー主演男優賞候補になったのも頷ける。勿論抑えた演技も素晴らしく、徴兵拒否をキッカケに人生が大きく変りながらボクシングを諦めない一途さを、抑えた演技振りが光る。
マルコムX(マリオ・ヴァン・ビーブルス)やジャーナリスト・コーセル(ジョン・ボイト)との交流など前半のエピソードは盛り上がりを見せるが後半は女性遍歴とボクシング・シーンだけが目立ってしまったのが残念。