息子のまなざし
2002年/ベルギー=フランス
ダルデンヌ兄弟らしい少年への思いやり
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 80点
演出 85点
ビジュアル 80点
音楽 0点
「ロゼッタ」のダルエンヌ兄弟の製作・監督・脚本。自分の息子を殺された少年に、どのように対処するのかという複雑な役を演じたオリヴィエ・グルメが、カンヌ映画祭主演男優賞を受賞。
いつも通り音楽を使わず、SEによる映像がドキュメント風で効果的。今回は出演者が少ないのに驚かされる。2人以外で台詞がハッキリあるのは別れた妻しかいない。長廻しのカメラで2人の内心が時間が経つにつれ、はっきりと浮き彫りにされていく。
オリヴィエを通じて、家庭環境に恵まれない少年が、弾みで殺人事件を犯してしまったことへの思いやりが、観客にじわじわと伝わる秀作だ。
みなさん、さようなら('03)
2003年/カナダ=フランス
こんな「幸せな最後」は映画だから?
shinakamさん
男性
総合 85点
ストーリー 85点
キャスト 85点
演出 85点
ビジュアル 80点
音楽 80点
'03アカデミー賞外国映画賞受賞作品。カナダの巨匠ドゥニ・アルカン監督ならではのセンス。
末期ガンの大学教授レミ(レミー・ジラール)がロンドンのディーラーで15年振りに戻った息子セバスチャン(ステファン・ルソ)の配慮で、どのような最後を迎えたのか?
ワイン・書物・音楽・女をこよなく愛する男の晩年は未だ人生に未練タップリ。それでも内心は死を覚悟するが、妻や息子に頑固な態度を崩さない。さしずめカナダの森繁だ。
元愛人や親友を病院に呼び昔話に花が咲く。教え子に金を渡して見舞いに来てもらったり、公立病院のベッドを移させたり、違法な劇薬を入手・看護させたり、現実不可能なことをするが違和感はない。最後に親子が和解して望みは「お前のような子供をつくれ」と言い残すのが、感謝の言葉となるのも粋な言葉だ。尊厳死の話は多いが、こんなに穏やかで幸せな最後を迎えられたのは映画ならでは。こんな最後を迎えられたら、さぞ幸せだろう。
フォーリング・ダウン
1993年/アメリカ
生真面目で対照的な男が2人
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 80点
演出 80点
ビジュアル 75点
音楽 70点
マイケル・ダグラス(D・フェンス)がホワイト・カラーの中年男、ロバート・デュバル(プレンダーガスト)が初老の刑事。’91年の猛暑のロスで僅か半日で起きた出来事。米国社会の矛盾に対する怒りが爆発するプロセスが「わらしべ長者」的で面白い。
D・フェンスは離婚・失業で失意のどん底にいながら、自分のプライドを捨てきれないで、娘の誕生日に妻子に会いに行こうとする。プレンダーガスト刑事は敏腕ながら幼い娘を失い心の病を抱えた妻のために退職を余儀なくされている。
ジョエル・シューマーカー監督は、人種のルツボ・ロスならではの社会現象が随所に出しながら、対照的な2人の性格描写を的確に表現していて、なかなか達者な演出振り。
ブロークン・フラワーズ
2005年/アメリカ
若い人には実感湧かない愛おしさ
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 85点
演出 85点
ビジュアル 80点
音楽 80点
「コーヒー&シガレット」のジム・ジャームッシュ久し振りの監督。カンヌ・グランプリ作品だが、ハリウッドの派手さは微塵もない。
初老のドン(ビル・マーレイ)の女性遍歴を尋ねる物語。お節介な隣人(ジェフリー・ライト)に乗せられイヤイヤ女性達に会いに行く。その受身で何処か自分探しの旅に出る男を「静の演技」でこなしている。まるで自然で演技していないのではないかと思わせるほど。シャロン・ストーン、ジェシカ・ラングなど元愛人の4人が豪華。現在の人生もサマザマで、久し振りに突然現れたドンに対する対応も人それぞれなのが面白い。
淡々と流れる女性遍歴の旅で、ドンの人生が浮き彫りにされている。真実(息子がいたのか?母親は誰か?)を知ることが人生の目的(幸せな老後)ではないことを教えてくれる。若い人には実感湧かない愛おしさが感じられ、見終わって和やかな気分になれる作品。
戦場のアリア
2005年/フランス=ドイツ=イギリス
歌は国境を越える
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 80点
演出 75点
ビジュアル 75点
音楽 80点
第1次大戦中、実際にあった奇跡の物語を、フランス北部出身のクリスチャン・カリオンが監督。一人のテノール歌手が歌ったことがキッカケで、ノーマンズ・ランドでのクリスマス休戦があった事実を映画化。感動の物語だが、逸話が多くて散漫になってしまったのが惜しい。3カ国を均等に扱わなくても良かったのでは?
また、ニコラウスとアナの2人の歌手に一流の歌手を吹き替えに使っていたが、口の動きで如何にも吹き替えが分かってしまうのが気になった。
演技陣ではアナ役のダイアン・クルーガーの凛とした美しさと神父役のゲイリー・ルイスの抑えた演技が印象に残った。
ピカソ・天才の秘密
1956年/フランス
クルーゾー監督だから撮れた映画
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 70点
キャスト 90点
演出 80点
ビジュアル 90点
音楽 80点
監督が天才ピカソと長い交流があったから、この手法で映画化ができたらしい。美術解説映画は殆ど見たことはないが、ピカソが描く絵画が、真っ白なキャンパスからどう完成して行くかが分かり、貴重な記録映画といえる。
ハイスピードカメラで膨大なフィルムを使っていて、キャンパスの絵がアニメのように変化して行く。その撮影プロセスを想像するだけで感動する。天才ピカソの一端が映像化されただけでも意味がある。
アポロ13
1995年/アメリカ
エド・ハリスが印象深い
shinakamさん
男性
総合
80点
ストーリー
80点
キャスト
85点
演出
80点
ビジュアル
85点
音楽
75点
アポロ13号ジム船長の回顧録を基にアカデミー賞男トム・ハンクス主演、ロン・ハワード監督の宇宙ステーション感動物語。’70当時、アポロ計画は世間から飽きられ、行き詰まっていた。このアクシデントで全世界が注目したという皮肉がベースにあるものの、全体では米国大好きの正義と友情のドラマになっている。
13は欧米では好まれる数字でないのも暗示的だが、ジム船長(トム・ハンクス)は急遽繰り上がり指名を受けたり、信頼していたケン(ゲイリー・シニーズ)が健康診断で代替要員のジャック(ケビン・ベーコン)に代わったり伏線があるのもドラマチック。まさに事実は小説より...である。そして何より格好良かったのは、フライト・ディレクターのジム役のエド・ハリス。どんな役柄もこなす名優だが、なかでも印象深い。
ハンニバル
2000年/アメリカ
A・ホプキンス=ハンニバル・レクター
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 85点
キャスト 80点
演出 80点
ビジュアル 85点
音楽 80点
「羊たちの沈黙」から9年、待望の続編。前作より面白かった。クラリスは代役でも、A・ホプキンス=ハンニバル・レクターで他の人では成り立たない。不気味な薄笑いだけで、頭脳明晰で凶暴なレクター博士に成りきっている。
前半のフィレンツェ・ロケがこの映画の重厚さを増していて、バッツィ刑事(ジャンカルロ・ジャンジーニ)の役柄も個性的で印象深い。殺害シーンが残酷で正視に耐えない箇所が幾度となく出てくるが、怖い物見たさで見てしまうのもこの映画の特徴か?
ナイロビの蜂
2005年/イギリス
骨太な愛の物語
shinakamさん
男性
総合 85点
ストーリー 85点
キャスト 80点
演出 85点
ビジュアル 90点
音楽 85点
「シティ・オブ・ゴット」のフェルナンド・メイレレス監督、ジョン・ル・カレ原作、ジェフリー・ケイン脚色。英国高等弁務官ジャスティン(レイフ・ファインズ)とテッサ(レイチェル・ワイズ)の愛の物語だが、ただのラブロマンスではない。冒頭にテッサが死んでしまうが、その原因を明かす単なるサスペンスでもない。
涙が乾く間もなく、先進国とアフリカの開発途上国の政治・経済が複雑に絡んだ欲深い人間の現実を思い知らされる。庭いじりが趣味の二世外交官と社会の歪みを正すのが生き甲斐の若き闘士の2人が惹かれ合うケニア。その壮大な景色とそこに住むエネルギッシュな現地人に圧倒される。「ホテル・ルワンダ」同様現地ロケが、この映画の生命線だ。
体当たりの演技で、アカデミー助演女優賞を獲得したレイチェル・ワイズが印象深い。
愛に囚われて
1994年/イギリス
身分違いの愛に共感できるか?
shinakamさん
男性
総合 70点
ストーリー 70点
キャスト 75点
演出 70点
ビジュアル 75点
音楽 70点
自伝を基にした人気TVドラマの映画化。英国で数々の賞を受賞したらしいが、正直期待外れ。妻殺しの監獄犯と女性歯科医のラブ・ロマンスがあまりに違いがあったので、実話ならドラマチックだが、映画ではそれ程驚かない設定。
主演のジュリア・オーモンドは可憐な顔立ちでなかなかの熱演。相手役のティム・ロスはうす笑いの顔が不気味でどうしても純粋に女性を愛する男に思えなかった。