・ チャン・イーモウ監督の優しさ溢れるドキュメント風感動作。
「紅いコーリャン」(88)でベルリン金熊賞を獲得以来、欧州の映画賞を総なめにしてきた中国のチャン・イーモウが、パートナーのコン・リーと別れ新作に挑んだリアルで感動的なドキュメント風作品でベネチュア映画祭グランプリを獲得。同年にチャン・ツィイー主演の「初恋のきた道」がある。
中国の過疎化が進む(水泉村)で代用教員になった13歳の少女ミンジと28人の生徒との交流物語。
ハイライトは母親の病気で出稼ぎのため都会に出た腕白少年ホエクーを追って、連れ戻そうと探しに出るが行方不明となり、必死に探し求めるミンジの姿をドキュメンタリー的手法で描いているところ。
主演のミンジやホクエーなど子供たちはオーディションで集め、村のチャン村長やカオ先生も本名で出演した素人。脚本を渡さずに順を追って演技させたという。そのため子供らしい素朴な言動が画面に躍動している。
日本人の道徳観とは違和感があるのは大人も子供もお金が動機で行動する拝金主義。ミンジはカオ先生が親の病気療養で1か月休むため50元で雇われたが、その間ひとりも生徒が辞めなければ報奨金が出ると言われ必死になってホエクーを連れ戻そうとしている。
それでも周りの大人には温かい目で見守る人もいる。バス代捻出のためレンガ運びをした子供たちにお金を渡した工場長や都会に出て迷子になったホクエーに食べ物をくれた食堂のオバサンなど・・・。
監督は、赤いほっぺで笑顔を見せない危なっかしいミンジにも優しい眼差しでカメラを向けて行く。いつしか彼女のホエクー探しがお金のためではなく、弟を探す姉のような愛情溢れる姿へ変わって行くさまを息づかせている。
躍動感溢れる都会の暮らしとはかけ離れた泉水村の暮らし。子供たちはチョークの大切さ、初めて知るコーラの味に驚く姿は微笑ましい。
監督は否定しているが、高度成長期の現代中国における都会と地方の格差をやんわりと警告しているように映る。制作時から15年以上経過した現在、その格差は益々拡がるばかりだ。
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