晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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『クイズ・ショウ』 85点

2010-07-22 10:15:38 | (米国) 1980~99 

クイズ・ショウ

1994年/アメリカ

無垢な時代の終焉を迎えた50年代の米国

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

TVというメディアが今とは比べ物にならないほど影響力を持つ50年代の米国で起きたスキャンダルをもとに、「普通の人々」のロバート・レッドフォードがアメリカの良心を描いた社会派ドラマ。
クイズ番組は誰でもチャンスが与えられリッチになれるアメリカンドリームの象徴的な存在。その頂点に立つ「21(トゥエンティ・ワン)」がヤラセではないか?と気付いた立法管理小委員会の若き捜査官ディック・グッドウィン(ロブ・モロウ)。この映画の原作者でもあり、のちにJ・F・ケネディのスピーチ創案者で大統領顧問になったヒトである。本来なら彼が放送業界の不正を糺す奮戦記になりそうだが、レッドフォードは2人のクイズ解答者からその仕組みと時代性を浮き彫りして見せる。ひとりはハービー・ステンペル(ジョン・タトゥーロ)で風采の上がらないユダヤ人。もうひとりはチャールズ・ヴァンドーレン(レイフ・ファインズ)で名門の一族の大学講師。対象的な2人が味わう快感と挫折感がTVという虚構のヒーローが貧しいものが成功する時代から見栄えのいいインテリがもてはやされる時代に変革しようとしていることを表している。登場人物の誰もがもつ共感部分とあわせもつ弱みを同時に描いてゆくので、観客は主役不在の不安感に苛まれる。これこそ社会派レッドフォードの真髄でもある。
前半、J・タトゥーロのオタクの怪演振りが目立つ。ラジオ向けの顔と言われながら、クイズにおける知識を武器にマスコミでの成功を夢み<自分の都合だけでネタを追うマスコミ>に幻滅する。レイフ・ファインズの誘惑に惑わされる気弱なインテリぶりもいい。勇気ある自己批判者は賞賛に値するというアメリカ好みの計算が崩れるときの戸惑いの表情は印象的。
ディック・グッドウィンは、ハーバード大の首席卒というエリートであることを武器に、ユダヤ人であることを隠そうともしない。無垢な時代の終焉を迎える変化を読みとったので後の成功に結び付いたのだろう。演じたR・モロウが2人の個性に負けてしまったのが残念。



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