晴れ、ときどき映画三昧

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『野のユリ』 85点

2010-09-30 12:17:00 | 外国映画 1960~79

野のユリ

1963年/アメリカ

ラルフ・ネルソンの熱意が溢れる名作

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆85点

ウィリアム・E・バレットの原作を社会派監督ラルフ・ネルソンが製作、アーネスト・ホーラー(撮影)、ジェリー・ゴールドスミス(音楽)など錚々たるメンバーが揃った。何しろ低予算(24万ドル)、短期間の撮影スケジュール(13日間)なのでモノクロ作品だが、かえって渇いたアリゾナの風景や登場人物の雰囲気が良く出ていた。主演のシドニー・ポワチエが黒人初のオスカーに輝いたことで知られているが、ネルソン監督の熱意なくしてできなかった作品である。
車で旅をする途中水をもらうため、あばら家に立ち寄った黒人青年と東独から亡命してきた尼僧5人の心の交流を描いたヒューマン・ドラマ。
尼僧のマリアは、青年ホーマーを一目見て「神が遣わした男」と思いこみ、強引に引きとめ屋根の修理をさせる。金になると思ったホーマーは引き受けるが、これが誤算となって教会づくりを無償でするハメに。
信仰心のない筆者にはマリアの<信じることの強さ>は想像の域を出ないが、周りの人を動かす力があることは確か。人の好いホーマーは尼僧たちの英語教師・運転手役まで駆って出る。いちど大都会で気ままに暮らそうと去って行ったホーマーだが、その生活に飽きたのかまた舞い戻ってくる。このシーンは砂埃が舞う道を黙々と歩く尼僧たちとアロハシャツ姿のホーマーが車をUターンさせる俯瞰映像で描かれ静かな感動を呼ぶ。
独りで教会はできるはずもなく多くの協力者が必要で、材料は地元の建設会社から労力は地元のマイノリティたちが強力することに。ここでアメリカの多国籍民族からなる縮図がさりげなく示される。ボランティア精神は彼らにとって強要されるものではなく心の充足を満たすものなのだ。ホーマーも一匹オオカミではなく現場を監督するという仕事を得ることができた。
黒人霊歌Amenを尼僧たちと歌うホーマーはお金では得られない幸せを感じているに違いない。
マリアを演じたリリア・スカラは夫がユダヤ人でオーストリア生まれのひと。苦労して英国から渡米してきただけあって、演技も筋金入り。そしてノン・クレジットながら建設会社・社長役で監督も出演している。話題豊富な94分の名作だ。



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