晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「歩いても歩いても」(07・日) 80点  

2013-12-20 08:18:10 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

 ・ さり気ない日常に、家族のリアリティがある。

     
 失業中の次男・良多(阿部寛)は妻・ゆかり(夏川結衣)と連れ子の息子と一緒に里帰りする。実家は元医者を廃業した父・恭平(原田芳雄)と母・とし子(樹希樹林)。母は姉・ちなみ(YOU)とともに料理に勤しむ。どこにでもある日常から始まるこの24時間ホーム・ドラマは一筋縄では行かない。この日は、15年前に死んだ長男の命日で、その死因も徐々に見えてくる。

 「幻の光」「誰も知らない」で欧州でも知られる是枝裕和監督の脚本・編集による家族劇。物語は、小津安二郎監督の「東京物語」を彷彿させるリアリティさと、向田邦子の女の凄さを見せるドラマを想い起こさせる。<さり気ない日常の会話と情景にドラマとリアリティがある>計算された是枝作品に仕上がった。

 出演者では、やっぱり樹希樹林が秀逸である。死んだ長男への想いを捨て切れずにいるが、子供達家族との接し方もしっかり心得ている。決してスキを見せまいとして言葉の橋橋に本音が出る。風呂場で入れ歯を洗うシーンは、彼女以外では思いつかない。老いと向き合いながら逞しく暮らす女を現代の母親像として描き出している。思い出の曲が「ブルーライト ヨコハマ」である所以も、女ならではの逸話である。

 注文を付けるとすればラストシーン。納まるところへ納まった感じがした。