・ コメディとシリアスが交錯したスパイ・ムービー。
ジョン・ル・カレのスパイ小説をジョアン・プアマンが監督・脚本化。パナマ運河を巡る英国諜報部員アンディ(ピアース・ブロスナン)と仕立屋ハリー(ジェフリー・ラッシュ)の駆け引きが、国を揺るがす大事件へと発展してしまうという一風変わったスパイ・ムービー。
ご存知ジェームズ・ボンド役のP・ブロスナン演じるアンディは、女癖や金に意地汚くモラルに欠けたアンチヒーロー。対する仕立屋ハリーも投資に失敗し、負債を負っていてオマケに元犯罪者であることを妻に内緒にしている小市民。
この2人が絡んでコメディタッチで進むうち、ブラックでシリアスな展開へと変わって行く。正直この辺のちぐはぐなタッチに戸惑いを感じてしまった。そして想定外の結末をを期待していたが、筆者の期待には応えてくれなかったのが残念!
J・ラッシュは、やっとつかんだ幸せな生活を必死に守るためついた嘘が、取り返しのないことになってしまう。癖のある俳優だが、悲哀を滲ませた流石のオスカー俳優ぶりを見せてくれた。P・ブロスナンはボンドとは正反対のキャラクターを自虐的に楽しんでいたようだ。
亡くなったハリーの叔父が良心の声で出てくるが劇作家ハロルド・ピンターだったり、ハリーの息子役がのちのハリー・ポッターのダニエル・ラドクリフだったりするのも、今観ると見逃せないキャスティングではある。
とくに印象に残ったのは<異国情緒たっぷりな現地ロケが効果的>でスパイ・ムービーには欠かせない雰囲気を醸し出していたこと。