晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「映画に愛をこめて アメリカの夜」(73・伊) 80点

2013-12-05 14:25:49 | 外国映画 1960~79

 ・ トリュフォーと映画好きにとって興味深い作品。

    
 俯瞰のカメラが、パリの地下鉄から上がってきた青年(ジャン・ピエール・レオ)を追って行く。あるビルの前で中年の男(ジャン・ピエール・オーモン)に出会い、いきなり平手打ちする。そこで「カット!」という声で映画の撮影だと分かる。2人は親子の役で息子の妻(ジャクリーン・ビセット)を巡るシリアスなドラマで、フェラ監督(フランソワ・トリュフォー)の「パメラを紹介します」という作品。

トリュフォーが映画製作に携わる諸々の人間模様を描いて、米アカデミー賞外国語映画賞を受賞している。<アメリカの夜>とは撮影技法のひとつで、昼間カメラにフィルターを掛け夜間撮影するより夜らしい疑似夜景のこと。トリュフォーは「映画の魅力は作られたものほど真実に見える」ことを実践して見せる。

 俳優・スタッフも撮影中にさまざまな出来事でドラマのような人間模様が繰り広げられ、フィクションなのか?真実なのか?見境がつかない。これはトリュフォーが過去撮影中に起きたことをヒントに、この映画を作ったから。トリュフォー・ファンにとって、彼の作品を思わせるシーンが随所に見られ、楽屋落ちが楽しめる。

 監督が映画館に貼ってある「市民ケーン」の写真を盗む夢は自身の体験だし、「大人は判ってくれない」でも同様のシーンがある。特性バターを要求するのは「エヴァの匂い」でジャンヌ・モローがした模倣だし、台詞を覚えられない女優は、晩年のマルチーヌ・キャロルをもじっている。「柔らかい肌」での猫のシーンを思い出すところや、ハンフリー・ボガートを連想させる父親役のJ・P・オーモンなどなど・・・。
まるで映画のメイキングを観るようだ。

 苦労しながら漸く完成した映画に、TVのインタビューに答えた大道具係のコメントが<虚構を大事にする>トリュフォーの真骨頂である。