よこまち余話 木内昇(著)2016年1月発行
天神様の社につづく東西に細くのびた幅一間ほどの路地、
時代はおそらく大正の後期くらい?
登場人物は、路地の住人たちと住人たちに関わりがあり時々やってくる数人。
そんな舞台で、静かに繰り広げられる不思議な物語。
主人公となるのが、ひっそりとお針子をして暮らす「齣江さん」。
そして、彼女の部屋へしょっちゅう入り浸ってる「トメさん」(お婆さん)と
魚屋のおかみさんと二人の息子「浩一」と「浩三」や
齣江宅に出入りする糸屋の青年、美味しい和菓子屋の親父さん、
そんな数人の登場人物。
一見、日々地味に暮らす人々の暮らし、と普通に思える設定ながらも、
読み進むほどに謎が増す。
齣江の部屋に一冊置かれている「花伝書」が妙に暗示的だし、、、
ついには、能舞台のシーンも現れ、
店賃をとりに来る「雨降らし」なる陰のように怪しい男やら
「遠野さん」という人物も、何やら齣江と深い関わりがあるような・・・
謎を解こうと焦ると、小説の良さを味わいきれないような・・・
個人的には、チョイと苦手なタイプの小説。
だから、途中でそんな気持ちを放り出すことにした。
ただ、一緒にひっそりとした不思議な物語の世界に身を任せてしまうのが
一番心地よい味わい方かもしれない。
一話づつ短編としても楽しめるが、一編の小説として読む方が魅力が増す。
『笑三年、泣き三月』『櫛引道守り』『ある男』本書と読んできて、
母としては、以前の作品の方が好き、かな。
わがまま母