金の仔牛 佐藤亜紀(著)2012年9月発行
18世紀のパリを舞台に、
(チューリップ狂時代(オランダ)や南海泡沫事件(イギリス)と
ともに、史上三大バブル経済の喩えのひとつとされている)
“ミシシッピ会社計画”の発生とその後が描かれた物語。
ミシシッピ株バブルを解説しながらも
莫大な借金にあえぐフランス、その膝下パリで生きる
様々な階層の人物が絡み合い、それぞれの思惑が交錯し
多様な人間模様を描きつつ展開するストーリーは、
なかなかに痛快でスリリング、楽しめます。
ミシシッピ会社株バブルを計画したのは、
天才かつイカサマ師だった「ジョン・ロー」。
「需要と供給で価格が決まる」という法則を発見、
巧みな市場操作で、パリにバブルを発生させる。
このミシシッピ会社への熱狂的な投機ブームを背景と
した歴史小説であり、且つ紙幣(=株)システムの
誕生やインフレやバブルの仕組みを面白く解説した
経済小説でもある。
主人公は若い追いはぎ「アルノー」と若い愛人なのだが
彼等を操り、ミシシッピ株を暴騰させる謎の老紳士によって
アルノーは、みるみる株式相場の錬金術師へと変貌をとげ
彼は、成金青年実業家となっていく。
株の転がし方や、ただの紙でしかなかった紙幣を金へと
変えていく経過が、とても面白く描かれていて、
現在の金融と共通するところが大。
アルノー、謎の老紳士の他にも、
裏街道を歩む故買屋、泥棒の親方、冷酷な貴族、
表の顔は金細工師で策士な三兄弟、狡猾な金貸し、、、
こんなユニークなキャラクター達がミシシッピ株のバブルを
めぐり、騙し騙され命がけのマネーゲームを繰り広げる。
個人的には、金細工師の三兄弟がなかなかに魅力的でした。
世の中がアベノミクスとやらで浮かれる株式市場を
斜めに眺めながら、この小説を読んでおり、
そろそろ危なそうだな~、、、なんて思いながら
読み終わるころに、ちょうど1,000円の急落、、、。
タイミングがいいのか悪いのか、、、。
まあ、好き嫌いは別として、
歴史、経済の勉強になる面白く、上手い小説ではありました。
わがまま母