ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

ガソリン価格高騰はヘッジファンドと金を貸した金融機関の仕業

2008年12月06日 | 時事問題
asahi.com 2008年12月6日6時12分
レギュラーなんと97円 高知でガソリン安売り  
 高知市やその周辺など、高知県中部でガソリン安売り競争が激化している。11月は都道府県別で全国最高値だった小売価格が12月に入って一転。100円を切るガソリンスタンドが続出した

ガソリン・穀物・食品をはじめ物価高騰は仕組まれた 物価はこれから下がる 雇用も危機に陥る
やりたい放題の金融工学と元凶の金融機関に規制強化を 

加藤周一氏死去 往年の「リベラリスト・文化人」 日本の知性の死を悼む

2008年12月06日 | 時事問題
asahi.com 2008年12月6日0時35分
「日本文学史序説」「九条の会」設立 加藤周一さん死去
 戦後日本を代表する知識人で、和漢洋にまたがる幅広く深い教養をもとに、政治や社会、文化を縦横に論じた評論家、加藤周一(かとう・しゅういち)さんが、5日午後2時、多臓器不全のため都内の病院で死去した。89歳だった。葬儀は近親者のみで行い、後日お別れの会を開く予定。喪主は妻の矢島翠(やじま・みどり)さん。

リベラリスト加藤周一
 文化、芸術だけにとどまらず、常にリベラルな立場から、核問題や安保問題などの現実問題にも積極的に発言。04年には作家の大江健三郎さんらと、憲法9条を守ろうと「九条の会」を設立した。その旺盛な評論と創作活動に対し、94年、朝日賞が、00年にはフランス政府からレジオン・ドヌール勲章が贈られた。
 88年4月から立命館大国際関係学部の客員教授を務め、戦争の記録や平和運動の資料などを展示する博物館「立命館大学国際平和ミュージアム」(京都市北区)の初代館長に就任した。

読書ノート 辻井喬 上野千鶴子対談 「ポスト消費社会のゆくえ」 文藝新書

2008年12月06日 | 書評
セゾングループの歩みから日本の消費社会を総括し、ポスト消費社会の姿を探る 第3回

序(3) 上野千鶴子とはどんな人物か

 上野千鶴子(うえの ちづこ、1948年7月12日 - )は、日本の社会学者。東京大学教授。 専攻は、マルクス主義フェミニズムに基づくジェンダー理論、女性学、家族社会学の他、記号論、文化人類学、セクシュアリティなど。文学修士。富山県上市町出身。代表著作は「おひとりさまの老後(法研、2007年)」、 『近代家族の成立と終焉』、『家父長制と資本制』など。

 研究者としてのスタートは、構造主義文化人類学と社会科学の境界領域を論じた理論社会学であり、この頃の1970年代の論文は『構造主義の冒険』にまとめられている。1980年にマルクス主義フェミニズムを知り、これの紹介者・研究者となる。『家父長制と資本制 ― マルクス主義フェミニズムの地平』(1990)が代表作。
また、『主婦論争を読む――全記録(1・2)』(1982)の編集など、思想輸入ではない日本の女性問題史の整備にも努め、『美津と千鶴子のこんとんとんからり』(1987)など田中美津に脚光を当てることで1970年代に起きたウーマンリブ運動の再評価を世に働きかけた。

 『セクシィ・ギャルの大研究』(1982)では 栗本慎一郎・山口昌男が表紙カバーに推薦文を寄せ、 鶴見俊輔などに絶賛され、専門領域である社会学のみならず文化人類学・記号論・表象文化論などの方法を駆使しながら、現代の消費社会を論じるフェミニストとして知られるようになる。特に1987年から88年にかけて世論を賑わせたアグネス論争にアグネス・チャン側を擁護する側で参入し、名を馳せた。
オーバードクター時代にマーケティング系のシンクタンクで仕事をしていたこともあって、消費社会論の著作も多く、『<私> 探しゲーム ― 欲望私民社会論』(1987)、『セゾンの発想 ― マ-ケットへの訴求』(1991)などがある。

 上野千鶴子は、様々な分野で発言して多くの論争に関わり、その挑発的かつ歯切れの良い言動はたびたび批判を受けてきた。「吉本隆明や柄谷行人ら、名だたる男性知識人を片端から言い負かした女性論客」というイメージは、たとえば遥洋子『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』(2000)、上原隆『上野千鶴子なんか怖くない』(1992)や『接近遭遇』(1998)のような対談集で確認することができる。


経済問題  春山昇華著 「サブプライム後に何が起きているのか」  宝島新書

2008年12月06日 | 書評
格付け信用の失墜とレバレッジ手法の終焉 第8回

3) レバレッジバブルの正体  (2)

 薄い金利差を大きく見せる手法がSIV、ABCPを使った「レバレッジ」という「鞘抜き」ビジネスである。これもすべてがうまくいった場合に限るのである。どこかでつまずけば損失も梃子の原理で拡大する。特別目的会社SPCがトリプルA 証券化商品を保有し、借金なしで自己資金50億円を3年の金利3.5%で投資したとすれば1億7500円の儲けである。ところが950億円を金利3.3%で借金して1000億円を金利3.5%の商品に投資すれば、得られる利益は35億円で、払う借金の利子は31.35億円である。差し引き3.65億円の儲けとなり、なんと利益率は自己資金が50億円だからみかけは7.3%になる。投資と借金の金利差0.2%でもこのようなレバレッジ効果がでる。借金の期間が短ければ金利はもっと下がるのである。普通は6ヶ月の借金期間を繰り返して3年間の投資にやりくりする。是が借金を利用して利益を膨らませる「レバレッジ戦略」という。是が成り立つためには、自分の格付けがトリプルAを維持しなければならない。もうひとつは投資期間と借金期間のギャップである。証券化商品が担保となって資金を調達するので、商品が格下げされると金を貸してくれるところが無くなる。そうするとこのビジネスモデルは終焉を迎える。それが2007年度夏以降の事であった。「信用創造メカニズム」が逆回転をした。金融界ではこれを「信用収縮」といいデフレとなる。サブプライムローン問題の本質はこの「レバレッジバブル」であった。日本の失われた13年の歴史が教えるところは、不動産バブル崩壊後の修復過程では、金融機関がまず復活し、その後に不動産市況が底を打つと云う順番である。

文藝散歩 「ギリシャ悲劇」

2008年12月06日 | 書評
啓蒙・理性の世紀、紀元前5世紀都市国家アテネの繁栄と没落を描くギリシャ悲劇  第8回

丹下和彦編 「ギリシャ悲劇」 中公新書 (7)


2) アイスキュロス 「オレステイア三部作」ー法の正義  (1)

  アイスキュロス晩年の大作 「オレステイア三部作」が上演されたのは前458年であった。アイスキュロスがこの「オレステイア三部作」で提示しようとしたのは、全ギリシャの文化共同体を支えた市民の価値観であった法の正義の実現過程であったようだ。ペロポネス半島の国アルゴスの盟主アガメムノン一族の血塗られた物語に材をとった「アガメムノン」、「供養する女達」、「慈しみの女神達」からなる三部作の悲劇である。トロイア遠征軍の総大将アガメムノンはアルゴスへの凱旋直後、妻クリュタイメストラとその愛人アイギストトスに惨殺される。時が経ちアガメムノンの息子オレステスが亡命先から帰国し、姉のエレクトラと協力して母クリュタイメストラとその愛人アイギストトスを殺して父の復讐を果たした。しかしオレステスは復讐の女神エリニュスから厳しい追及を受けアテナイに逃れ、そこでに設けられた法廷で裁きを受け無罪とされるというのが全体のストーリーである。