ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

「基礎的財政収支の黒字化」 この大不況で夢遠のく

2008年12月25日 | 時事問題
asahi.com 2008年12月25日9時11分
「11年度黒字化」維持へ 政府、財政再建目標巡り調整
 政府は、「11年度に基礎的財政収支を黒字化する」という財政再建目標を努力目標として維持する方向で調整に入った。景気の急速な悪化で税収が落ち込み、財政収支は大幅に悪化。与謝野経済財政相は見直しを示唆していたが、政府内に「財政規律がなし崩しになる」と懸念する声が強く、維持の方向となった。
 だが、歳出増圧力をかわすためにも、「達成できるかどうかは別として、目標を掲げ続けること自体に象徴的な意味がある」(経済官庁幹部)との判断に傾いた。

誰もできるとは思っていない しかし看板だけは下ろすわけには行かない

フィギュア全日本選手権 始まる

2008年12月25日 | 時事問題
asahi.com 2008年12月23日11時57分
真央、連続3回転「跳ぶ」 全日本選手権25日開幕
 フィギュアスケート全日本選手権は、長野・ビッグハットで25日に開幕する。女子はグランプリ(GP)ファイナルを制した浅田真央(愛知・中京大中京高)の3連覇が濃厚。男子は昨季まで3連覇の高橋大輔(関大大学院)が負傷で欠場するため、復活のシーズンを迎えた織田信成(関大)と、成長著しい小塚崇彦(トヨタ自動車)が、ともに初優勝を争うことになりそうだ


読書ノート 梅棹忠夫著 「文明の生態史観」  中公クラシックス

2008年12月25日 | 書評
京都学派文化人を代表する文化人類学者 野外フィールド研究のパイオニア 第3回

序(3)

 梅棹忠夫氏の著作の特徴は大まかに4つにまとめられる。第1の特色は、フィールド調査(野外研究、探検)である。第2に比較文明論である。日本と西ヨーロッパの文明は互いに平行進化してきたという。日本の近代化は日本独自に成長したもので、西洋化によってもたらされたのではないと主張する。第3に日本の近代化の系譜は江戸時代にあるという見解である。北海道の近代化のみが異質であった。第4に文明の生態学的進化は「遷移」で説明されるという。自発的に遷移するか外因的に遷移するかで文明は分類される。大陸の両端にある日本・西欧州は自発遷移で進化しきた第1地域といい、中間の地域は他発遷移で変化する第2地域という。このあたりの発想は「文明の生態史観」で詳しくみるとして、梅棹氏の作品の特徴は以上の4つに集約される。「文明の生態史観」の特徴は東西文明と云う言い方は当を得ていないとして、第1地域と第2地域に分類したことである。第1地域とは封建体制のあとブルジョワの成長から高度資本主義体制の確立している地域である。第2地域とは資本主義的発展が未成熟で専制君主制か植民地であったか、植民地から開放された後も独裁体制にある地域である。第1地域は自発的発展で近代化し、第2地域では外因にかく乱されて変化しきた国である。巨大な乾燥地帯である。梅棹氏はこの第2地域(東欧州、北アフリカ、ロシア,中近東アラブ、ペルシャインド、中国、東南アジア)を「悪魔の巣、暴力的略奪の支配する国」という。おそらくモンゴル帝国とイスラム教国をイメージして言っているのだろうが、インド・東南アジアは非暴力だし、中国は文治主義(儒教)だし、東欧はいつも略奪されていただけであった。いまだと怒り出す国も居るような梅棹氏の表現は乱暴である。乱暴な切り口が新鮮に見えるだけであろうか。納得の行きかねる分類である。むしろ今で云う「発展途上国」といったほうが無難。地球温暖化防止条約の第2国群である。先進国と後進国と分けてもいい。

本書は「文明の生態史観」に関係した、1956年から1966年の10年間にわたる幾つかの論文をまとめたもので1966年10月に刊行された。本質は「比較文明論」を展開する事であると著者はいう。本書は11の論文からなり、長短あって、旅行記のようなメモもあれば、方法論のラフスケッチ的提案もある。色々なフェイズの小論文集である。


読書ノート 今西錦司著 「生物の世界」 中公クラシックス

2008年12月25日 | 書評
棲み分け理論からダーウインの自然淘汰進化論批判まで  第7回

第1章 「相似と相異」

 我々の世界は色々のものからなる寄り合い世帯である。この寄り合い世帯を構成し、それを維持し発展させる上には、それぞれがチャンとした位置を占め、それぞれが任務を果たしているというのが今西氏の世界観である。それらはお互の間をなんらかの関係で結ばれている。その関係とは、無生物といい生物と云うのも、或いは植物といい動物というのも元をただせば皆同じものに由来すると云う根本関係である。この似たもの同士が、お互いに全く無関係に発生した偶然の産物とはどうしても考えられないのである。すると相似と相異と云うことは、元は一つのものから分かれたものの間にもともとから備わった一つの関係である。それを見分けるのは我々の認識そのものに備わった1種の先験的性質である。相似と相異は一応類縁という、ものの生成をめぐる歴史的な親疎、遠近関係である。そこに系統分類学が存在する。それはすなわち類縁関係のより正確な把握を意味し、それによってわれわれの類推をより合理的にすることである。我々は人間的立場から生物の世界を伺う唯一の方法は生物の生活や世界を人間的に翻訳(類推)するより道は無い。

文藝散歩 「ギリシャ悲劇」

2008年12月25日 | 書評
啓蒙・理性の世紀、都市国家アテネの繁栄と没落を描く 第26回

ソポクレス 「アンティゴネ」 呉 茂一訳 岩波文庫

 アイスキュロス 「テーバイ攻めの七将」の最期、オイディプスの二人の王子ポリニュケスとエテオクレスの相打ちで劇は終了したが、ソポクレス 「アンティゴネ」は妹アンティゴネの悲劇の開始で始まる。ソポクレス 「アンティゴネ」の物語の筋書きは丹下和彦編 「ギリシャ悲劇」に書いた。ギリシャ三大悲劇詩人の第2番目におかれるソポクレスがその現存する七作品の三篇でテーバイ王オイディプス王家にまつわる悲惨な運命を扱った。年代順では「アンティゴネ」、「オイディプス王」、「コローノスのオイディプス」であるが、話の筋からは初めに「オイディプス王」が来て、放浪のオイディプスの死を扱う「コローノスのオイディプス」、最期が二人の兄の葬送を行って処刑される「アンティゴネ」となるはずである。オイディプス王の運命については自作の「オイディプス王」に委しいのでここには述べないが、母と知らずに結婚した「オイディプス王」の四人の兄弟姉妹のうち、二人の兄弟ポリニュケスとエテオクレスの相打ちはアイスキュロス 「テーバイ攻めの七将」に述べた通りである。後を継いだ叔父クレオンは、テーバイを守って闘ったエテオクレスは手厚く葬ったが、アルゴスの援軍で祖国を攻めたポリニュケスの葬儀は禁じて、死体は鳥や野犬の食い散らすの任せた。妹アンティゴネはこれを哀れに思い国禁を犯して兄ポリニュケを埋葬する。妹イスメネは国王の命が恐ろしくて参加しないが、賢い女性で意志の強い妹アンティゴネは一人で死をものともせずに兄ポリニュケの死体に砂を掛けて清めの水をまいた。国王クレオンに捕らわれた確信犯の妹アンティゴネは、婚約者国王クレオンの息子ハイモンの必死の助命嘆願も空しく、首をつって自殺した。後を追って息子ハイモンも自殺し、その母親(クレオンの妻)も自殺した。国王クレオンも哀れであるが、この劇の主題はアンティゴネの意志の強い、不幸に鍛えられた魂と優しい心を賛美することである。国王クレオンが情けを掛けてアンティゴネを赦して、息子ハイモンと結婚させれば悲劇にならない。ハッピーエンドでは涙は出ないのである。