ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

赤字国債発行8兆円増  日銀政策金利0.1%に下げる

2008年12月19日 | 時事問題
asahi.com 2008年12月19日14時10分
日銀、年0.1%に利下げ 企業支援策も
 16日には、米連邦準備制度理事会(FRB)がゼロ金利政策に踏み込んだため、日米の政策金利が15年ぶりに逆転し、日本が米国より高くなった。このため円高ドル安が進み、東京外国為替市場では一時、13年ぶりとなる1ドル=87円台をつけた。輸出関連企業を中心に企業業績への影響は大きく、株安に拍車がかかるとの懸念が広がっていた。

asani.com 2008年12月19日15時0分
国債発行33兆円超へ 09年度、前年より8兆円増
 20日に内示される09年度政府予算の財務省原案で、歳入不足を穴埋めするための新規国債発行額が33兆円余りに膨らむことがわかった。景気悪化に伴う税収減や景気対策のためで、08年度当初予算より約8兆円増え、当初ベースで4年ぶりに30兆円を突破。かつて小泉内閣が財政再建の象徴とした「国債発行30兆円枠」は完全に姿を消す。

古い財政出動はもう効かない
政府に権威があって皆が同じ夢を描いている時こそケインズ主義が成り立つ基本です。「バラマキ政策」、「公共投資」ではこの危機を乗り切る事はできません。まして減税の後に増税をちらつかせるようではだれが政府を信用するでしょう。国民は現金しか信用しません。日本人は貯蓄です。(ユダヤ人は金)政府支出の増大で景気がよくなると思う人は、土建屋を除いてもういません。今は需要が減っているのです。国交省や農水省ではなく、経済産業省にがんばってほしい。

石油を大量に買い付け、アメリカを円建てで買いたたけ(暴論ですが)

2008年12月19日 | 時事問題
asahi.com 2008年12月19日9時22分
NY原油、一時35ドル台に下落 NY株も219ドル安
 【ニューヨーク=都留悦史】18日のニューヨーク商業取引所の原油先物市場は、下落の流れに歯止めがかからず、5営業日続けて下落した。国際指標となる米国産WTI原油の先物価格の終値は前日比3.84ドル安の1バレル=36.22ドルとなった。取引時間中には一時35ドル台まで売り込まれ、04年6月以来約4年半ぶりの安値をつけた。

 石油輸出国機構(OPEC)が前日に大幅減産を決めたが、世界的な景気減速を背景にエネルギー需要の落ち込みは続くとの観測が強まり、機関投資家らの売り注文が膨らんだ。この5日間での値下がり率は24.5%に達した。7月11日につけた史上最高値1バレル=147.27ドルと比べると、5カ月間で4分の1以下の水準に下落した。

今こそアメリカ金融資本に強奪された資産を奪い返すチャンス
紙くずみたいなドルを買ってはいけない 実体経済に資する資材を買い付け、同じドル援助をするならアメリカ国債を円建てで買いつけ、アメリカを買い占めよう


読書ノート 今西錦司著 「生物の世界」 中公クラシックス

2008年12月19日 | 書評
棲み分け理論からダーウインの自然淘汰進化論批判まで 行動の思索人 第1回

序(1)

 今西錦司氏(1902-1992)の略歴を紹介する。日本の生態学者、文化人類学者。京都大学名誉教授、岐阜大学名誉教授。日本の霊長類研究の創始者として知られる。理学博士(京都帝国大学、1939年)。京都の織屋「錦屋」の生まれ。戦前は生態学の「棲み分け理論」を発表し、かつ山岳探検やモンゴルなど野外調査隊を組織して活躍した。第二次大戦後は、京都大学理学部と人文科学研究所でニホンザル、チンパンジーなどの研究を進め、日本の霊長類社会学の礎を築いた。京都文化人の一人で文化勲章受章者でもある。毀誉褒貶の大きい人間的振幅の大きな人であった。

本書の冒頭に、国立民族学博物館名誉教授である松原正毅氏の筆による「遊行する思索者ー今西錦司の軌跡」という今西氏の学問的・人間的足跡を追う文章を寄せられている。松原正毅氏は1942年生まれで、京都大学文学部卒で1975年から30年間国立民族学博物館の研究者であったので、梅棹忠夫氏らと同じく今西錦司氏の弟子筋に当ると思われる。今西錦司氏を、一つは野外研究のパイオニアとして、2つは組織のオーガナイザーとして、3つはダーウインの自然淘汰学説に反対する進化学の提案者として追慕されている。


読書ノート 堂目卓生著 「アダム・スミス」 中公新書

2008年12月19日 | 書評
「道徳感情論」、「国富論」への案内 第9回

第二部 「国富論」

3、繁栄の一般原理(2)資本蓄積

 人類が未開状態から文明社会に向って本格的に進みだすには、分業が始まる前に交換の場が形成されると同時に,ある程度の資本が蓄積されていなければならない。スミスのいう階級社会は、地主、資本家、労働者の三階級からなる。現在では特権階級としての地主の必要は殆ど無い。資本は生産的労働が生み出す剰余の分配において、税金、消費、貯蓄のうち貯蓄分が毎年蓄積されて再生産に廻され、雇用と生産が拡大するのである。資本蓄積を妨げる要因としては個人の消費と政府の浪費がある。人には倹約性向と消費性向があって、どちらも必要であるが、資本蓄積には倹約が必要である。スミスは資本蓄積を推進する担い手は資本家であるが、その利己心によって公共の利益を最も損ないやすい。最期にスミスは投資の自然な順序として、先ず農業、ついで製造業、外国貿易だという。現在では農業というのは解せない話であるが、製造業、貿易での投資順序を間違った場合の弊害は頷ける。ある外国貿易品を優先して保護して他の部門への投資を怠った場合、産業間のバランスの取れた発展が歪になって経済合理性を失う事はよくある。投資は必要とする部門への自然の流れに任せるべきだということも「見えざる手」の導きに相当する。市場の価格調整メカニズムと同様、成長の所得調整メカニズムをも「見えざる手」と呼んでもいいのだろう。

文藝散歩 「ギリシャ悲劇」

2008年12月19日 | 書評
啓蒙・理性の世紀、紀元前5世紀都市国家アテネの繁栄と没落を描く 第20回

丹下和彦編 「ギリシャ悲劇」 中公新書 (19)


9)エウリピデス 「バッコスの信女」

 エウリピデスは前408年に「オレステス」を上演してから北方の地マケドニアに移住し、晩年に「バッコスの信女」が書かれた。物語のストーリを見て行こう。ゼウスとテバイの王女セメレの子であるディオニソスは主宰するバッコス教の信女らを率いてテバイを訪れ布教を図る。そして女性信者を集めては狂乱状態に陥れて山野を跋渉させる。テバイ王ペンテウスはこれを淫乱な邪教と見なして弾圧と排斥を行う。両者の対立は深まり、ディオニソスの姦計にはまったテバイ王ペンテウスの頭が狂い,狂気に乱舞する信女を見に山中にでかけたペンテウスは母親アガウエの手で惨殺される。正気に戻った母親アガウエは自らの行為を嘆いてディオニソスを非難する言葉を投げつける。ディオニソス神はゼウスの後胤であるという神威を認めさせるためにテバイの国に入ったのであるが、カドモス一族はディオニソス神の神性を疑い誹謗した。これに怒ったディオニソス神はテバイ国王ペンテウスに復讐する劇である。ディオニソス教の奥義はわからないが、酒神で生肉を食い山野を走る非条理・反理性なものといわざるを得ない。テバイの預言者テイレシアスはこのディオニソス教の受容を国王ペンテウスに勧め、この世には人間の賢しき理屈の及ばない存在があること、人間はたとえ賢者であってもその知の運用を間違えば誤って国家を害することになる、権力の過信は現に慎むべきであると説いた。国王ペンテウスはあくまで主権者として秩序を守るために、権力機構を持ってこの新宗教を弾圧したことが間違いであるというのだ。国王ペンテウス自身の中にあるディオニソス的な性欲的な根性が(信女の生態を覗く)身の破滅をもたらす。ペンテウスの死とともにテバイは崩壊する。非ギリシャ的なものによる死である。ディオニソスの法は自然に根ざす「自然法」ともいえる。ペンテウスの法はギリシャ文明社会の伝統的価値であった。ギリシャ的知と非ギリシャ的知の問題にもつながる。ギリシャ文明の法は時代とともに柔軟性を失って硬直化した価値概念に対する懐疑的精神を「バッコスの信女」は表現しているのであろう。