ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

2008年 神戸ルミナリエ開幕 ボランティアの灯を絶やすな!

2008年12月05日 | 時事問題
asahi.com 2008年12月05日
思い新たに ルミナリエ開幕
 師走の神戸の夜空に、色鮮やかな光が浮かび上がった。神戸市中央区の旧外国人居留地周辺で4日に始まった14回目の「神戸ルミナリエ」。鎮魂と希望の光に包まれた人々は阪神大震災の記憶をたどり、復興への思いを新たにした。

2008年12月5日6時5分
募金箱も輝く「神戸ルミナリエ」 企業協賛金は減りそう
 4日から始まった「神戸ルミナリエ」の組織委員会が、約5億5千万円の開催費をまかなうための募金を呼びかけている。企業協賛金が世界金融不安の影響などでさらに減る見込みで、組織委は「頼みの綱は個人募金。市民に支えられる催しとして定着させるため、ぜひ協力してほしい」と話している。

派遣労働者は商品のように捨てられる これで仏国のように暴動にならない日本?

2008年12月05日 | 時事問題
asahi.com 2008年12月4日23時6分
 「派遣社員はモノじゃない」。「派遣切るな」2千人 怒りと不安、東京・日比谷
 世界不況のあおりを受けて、非正社員らを減らす勢いが加速している。相次ぐ「派遣切り」に、不安を抱える労働者からは、対策を求める大合唱が起きている。 「どうかホームレスにしないで」 壇上にのぼった派遣社員の叫びが、会場に響き渡る。「厳冬のなか、数十万人が放り出されようとしている」。日本労働弁護団の棗(なつめ)一郎弁護士も訴えた。

asahi.com 2008年12月5日6時6分
「非正規切り」の失業手当、正社員と同等に 厚労省方針
 厚生労働省は4日、雇い止めされた非正規労働者に対して、失業手当を受け取るのに必要な雇用保険の加入期間を、現行の1年から6カ月に短縮する方針を固めた。給付日数も暫定的に延長し、正社員の解雇と同じように手厚くする。景気後退で「非正規切り」が相次いでいることを受け、セーフティーネット機能を強化するのがねらいだ。
5日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会で厚労省案を示す。年明けの通常国会で雇用保険法を改正し、09年度から実施したい考えだ。

何もない日本こそ「人こそ資源」 労働は商品ではない
1944年ILO(国際労働機関)は有名な「フィラデルフィア宣言」を採択した。この宣言において「労働は商品ではない」というILOの大原則が確認された。日本では新保守主義の中曽根首相の時代に労働規制緩和が検討され1986年「労働派遣法」が成立した(特殊16業種)。そしてバブル崩壊後企業は苦しい経営立て直しのなかで、この派遣労働法を利用して「多様な労働形態」と謳う一方で安価な賃金でコスト削減を図った。そして1999年には派遣法は業種を問わず原則自由となったのである。日本の企業経済にとって派遣社員の必要性が高まるのと逆行するように派遣社員の処遇は時間を追って悪化していく傾向にある。派遣社員は2005年度で255万人、平均日給は1万円(日雇いスポット派遣は7000円)、女性の比率は60%である。
「派遣」労働者255万人の悲鳴が聞こえる。
企業の短期的利潤追求によって労働の商品化に陥り低賃金化が推進された。
長期的には労働の質の低下、働く人の生活設計と労働再生産の破壊となる。



読書ノート 辻井喬 上野千鶴子対談 「ポスト消費社会のゆくえ」  文藝新書

2008年12月05日 | 書評
セゾングループの歩みから日本の消費社会を総括し、ポスト消費社会の姿を探る 第2回

序(2)  辻井喬(堤清冶)とはどんな人物か

 堤清冶はスーパーマーケットである西友を急展開し、業績を拡大。また西武百貨店を渋谷に進出させた。1969年、池袋西武の隣にあった百貨店「東京丸物」(まるぶつ)を、買収したばかりの小佐野賢治からさらに買収する形で経営を引き受け、府立十中の同級生であった増田通二を使いパルコを展開。デベロッパーである西洋環境開発を通じ、ホテル経営、リゾート開発へも乗り出すなどセゾングループを形成した。マスコミも彼に注目し、財界の若きプリンスともてはやすようになる。
一方で、脱大衆文化と称して、DCブランドの展開や、無印良品などの事業も始める。田中一光、山本耀司らとの交流の中から、無印良品のヒントを得たといわれる。さらに、セゾン美術館など、メセナのさきがけといわれる活動も始める。
バブル崩壊後、急拡大の末にセゾングループの経営は破綻を迎え、1991年には、グループ代表を辞任。2000年には西洋環境開発(同年清算)を含むグループの清算のため、保有株の処分益等100億円を出捐した。
1980年代までは、「実業家・堤清二」の活動が主となり、「詩人/小説家・辻井喬」は寡作であったが、セゾングループ代表辞任後は精力的に作家活動を展開。代表作や文学賞受賞作のほとんどは、1990年代以降の発表作である。先述した「父との確執と、父への理解」に加え、自身の特異なプロフィールに由来する、大企業の経営者というモデルを通じた「人間の複雑な内面」の描写が小説の特徴であり、『父の肖像』(2004年)はその集大成と言えよう。
1996年に堤清二名義で岩波書店から出版した「消費社会批判」を学位請求論文として、中央大学より博士 (経済学)の学位を受ける。
堤義明が一連の不祥事で逮捕され、西武鉄道グループの再編・再建活動が活発化すると、義明への批判を展開。異母弟の猶二と共に西武鉄道へ買収提案を行うなど、実業家、西武の創業者一族としての活動も活発に展開している。
2006年3月近作をはじめとする小説群の旺盛な創作活動により日本芸術院賞恩賜賞を受賞した。2007年日本芸術院会員となる。

経済問題  春山昇華著 「サブプライム後に何が起きているのか」 宝島新書

2008年12月05日 | 書評
格付け信用の失墜とレバレッジ手法の終焉 第7回

3) レバレッジバブルの正体 (2)

薄い金利差を大きく見せる手法がSIV、ABCPを使った「レバレッジ」という「鞘抜き」ビジネスである。これもすべてがうまくいった場合に限るのである。どこかでつまずけば損失も梃子の原理で拡大する。特別目的会社SPCがトリプルA 証券化商品を保有し、借金なしで自己資金50億円を3年の金利3.5%で投資したとすれば1億7500円の儲けである。ところが950億円を金利3.3%で借金して1000億円を金利3.5%の商品に投資すれば、得られる利益は35億円で、払う借金の利子は31.35億円である。差し引き3.65億円の儲けとなり、なんと利益率は自己資金が50億円だからみかけは7.3%になる。投資と借金の金利差0.2%でもこのようなレバレッジ効果がでる。借金の期間が短ければ金利はもっと下がるのである。普通は6ヶ月の借金期間を繰り返して3年間の投資にやりくりする。是が借金を利用して利益を膨らませる「レバレッジ戦略」という。是が成り立つためには、自分の格付けがトリプルAを維持しなければならない。もうひとつは投資期間と借金期間のギャップである。証券化商品が担保となって資金を調達するので、商品が格下げされると金を貸してくれるところが無くなる。そうするとこのビジネスモデルは終焉を迎える。それが2007年度夏以降の事であった。「信用創造メカニズム」が逆回転をした。金融界ではこれを「信用収縮」といいデフレとなる。サブプライムローン問題の本質はこの「レバレッジバブル」であった。日本の失われた13年の歴史が教えるところは、不動産バブル崩壊後の修復過程では、金融機関がまず復活し、その後に不動産市況が底を打つと云う順番である。

文藝散歩 「ギリシャ悲劇」 中公新書・岩波文庫 

2008年12月05日 | 書評
啓蒙・理性の世紀、紀元前5世紀都市国家アテネの繁栄と没落を描くギリシャ悲劇 第7回

丹下和彦編 「ギリシャ悲劇」 中公新書 (6)

1) アイスキュロス 「ペルシャ人」ー自由こそ (2)

 アイスキュロス 「ペルシャ人」は前472年に上演された。この時4作品が上演されたが、残っているのはこの「ペルシャ人」だけである。アイスキュロス 「ペルシャ人」では、サラミスの海戦でのペルシャ軍の敗戦の報告が、ペルシャの都スサに届くところから始まる。ペルシャ王クセルクセスのギリシャ遠征中の留守居役である長老達の合唱隊が長い登場歌をうたう。「王は何時戻ってくるのか、悪い予感が胸のうちを騒がす」 登場したペルシャの大后アトッサがクセルクセスとペルシャの運命を暗示する悪い夢の話をする。ペルシャは世襲制の王が支配する独裁国家で、ギリシャ軍を指揮するのは奴隷でも家来でもない民主国家である事が語られる。先生と自由との二つの政治体制の衝突である。そこへ遠征軍から報告が入る。敗戦の理由を使者はギリシャ人の策略と神々の妬みだという。ギリシャ軍が会戦で歌った戦勝祈願の歌パイアン「祖国に自由を、子や妻に自由を、今こそ闘うのだ」という自由の国アテナイを謳う。豊かな黄金の国ペルシャを貧しい国ギリシャが打ち破ったのだ。(大国ロシアを新生日本が打ち破ったように)ペルシャの独裁者クセルクセス王の思い上がりが迷想を呼び、神の妬みを受けて破滅に向うという思想は、以降のアイスキュロスの作品に一貫して流れるテーマである。非ギリシャ的要素とギリシャ的要素との確執を、専制と自由という対立の図式で持って始めて位置づけた作品である。