ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

麻生おそまつ内閣 鍍金はがれ 

2008年12月08日 | 時事問題
asahi.com 2008年12月7日23時32分
麻生内閣支持22%、「首相適任」小沢氏逆転 朝日世論調査
 朝日新聞社が6、7の両日実施した全国世論調査(電話)によると、麻生内閣の支持率は22%で、前回調査(11月8、9日)の37%から急落した。麻生首相と民主党の小沢代表のどちらが首相にふさわしいかの質問でも、麻生氏を挙げる人は30%(前回49%)に大きく下がり、小沢氏の35%(同23%)が初めて上回った。「選挙の顔」としての首相の優位性は完全に失われ、発足2カ月余りですでに政権末期の様相だ。

asahi.com 2008年12月6日20時35分
麻生批判「けしからん。出て行け」 町村前官房長官
 町村信孝前官房長官は6日、札幌市内で講演し、渡辺喜美元行革担当相ら自民党の中堅・若手から麻生首相への批判が噴出していることについて「目立ちたい人が我先に批判している。最もけしからんやつらだ。こういう人たちはどんどん(党から)出て行ってもらいたい」と不快感を示した。

自民党内ばらばら もはら死に態
新聞の世論調査は「希望」をあらわす世論誘導に過ぎないとしても、もはや麻生ひょっとこ内閣の命運は尽きたとしか言いようのない、党内支持もなくしている。名門二世政治家のお粗末は3度も繰り返された。

読書ノート 辻井喬 上野千鶴子対談 「ポスト消費社会のゆくえ」 文藝新書

2008年12月08日 | 書評
セゾングループの歩みから日本の消費社会を総括し、ポスト消費社会の姿を探る 第5回

序(5)
 本書の対談者の一人上野千鶴子氏は多彩な面をもつ論客であるが、本書では消費社会論の研究者の側面で参加している。そもそも女史は1991年セゾングループ社史編纂事業に参加し、シリーズの第四巻「セゾンの発想」を著した。バブルがはじける寸前のことであった。この高名な社会学者でさえバブル崩壊は予想だにしていなかったそうである。経済アナリストも崩壊を予言する人はいなかった。経済は一寸先は闇である。誰も経済の動きは読めないらしい。セゾンの社史編纂というと上野氏も提灯持ち学者かと思ってしまうが、そうではない。この事業は最初から面白い企画であった。取材は自由、情報は隠さない、原稿の検閲はしないという条件であった。そこで上野氏は、戦後日本資本主義の歴史、しかも日本の大衆消費社会を牽引してきた百貨店という大型小売業資本の典型的な事例研究と考えたから参加したそうである。氏以外にも錚々たる学者がこのセゾングループ史の研究に参加した。日本近代江戸時代から消費文化の担い手であった呉服屋系百貨店は、大正昭和期の電鉄系百貨店は郊外住宅地と都心部をむすぶ中産階級の消費文化の中心であった。百貨店の誕生が中産階級の誕生と軌を一つにすというのが上野氏の持論である。

経済問題 春山昇華著 「サブプライム後に何が起きているのか」 宝島新書

2008年12月08日 | 書評
格付け信用の失墜とレバレッジ手法の終焉 第10回

4)モノラインと証券化の行方 (2)

 証券化の歴史は、実は不良債権処理を進めるために大変苦労したから発展した技法である。証券に魅力を持たせるため、標準化、均質化、格付け付与による高品質化これらのすべては「臆病な投資家の資金を呼び込むための打ち出の小槌」の役割を果たした。証券化の長所は広く万人に分割されて保有され、転売によって流通するので市場での監視が強い事で、反対に欠点は証券の保有者が借り手の事情をよく理解していない事である。そのため思惑で売買され、証券価格が行き過ぎた値動きになりやすいことである。今回サブプライムローンのように実情以上に値下がりして壊滅することである。その下落の大ききな要因に一つが「レバレッジ」である。3) レバレッジバブルの正体に書いたように、すべてがうまく回転していれば、薄い金利差でも巨大な利益を生むことであった。しかし損失も増幅されるのである。もし10%損失が出れば、自己資金だけの場合は10%の損失ですみ90%の資金は回収可能である。しかし10倍のレバレッジを掛けていれば、10%の見込み違いで損失額は自己資金全額となる。レバレッジの破壊力は凄まじい。

 サブプライムローン証券化に使われた「トランシェ」という技法は、リスクを多層化して証券受け取り利率を上げるという手法が用いられた。安全な証券の受け取り利率は低く、リスクの高い証券の受け取り利率を高くするのである。これをシニア、メザニン、エクイティとよぶ階層別「優先劣後構造」といい、低品質のサブプライムローンの集合体であっても、優先的に利払いが受け取れる「トランシェ」を恣意的に作り出しそれをトリプルAとして販売したのである。破産するサブプライムローンの比率は1/3と云う予測がある。するとリスクの高いエクイティは本来利益は受け取れないはずなのに、これを再度トリプルAとして販売したのである。これはもう詐欺である。証券化は悪ではないのである。「リスクを適当に再配分する」という機能はあるのだが、再証券化商品というまがい物を作ったため全体が詐欺になったのである。


文藝散歩 「ギリシャ悲劇」

2008年12月08日 | 書評
啓蒙・理性の世紀、紀元前5世紀都市国家アテネの繁栄と没落を描くギリシャ悲劇 第10回

丹下和彦編 「ギリシャ悲劇」 中公新書 (9)


2)アイスキュロス 「オレステイア三部作」ー法の正義 (2)
1) 「アガメムノン」-暗殺のドラマ
妻クリュタイメストラによるアガメムノン暗殺の原因としておよそ三つの理由が考えられる。アガメムノンはギリシャ軍の総大将としてトロイアへ出征する。アウリス出港に際して順風を得るために神の命じるままに娘イピゲネイアを生贄にした。これが妻クリュタイメストラを怒らせ娘の復讐を誓わせることになった。第二の理由は妻クリュタイメストラの不義密通を隠すためである。実はその愛人アイギストトスとはアガメムノンの政敵で迫害されたテュエステスの息子であるという氏族社会の政治権力争奪の裏があった。第三の理由はトロイアの王女カッサンドラを戦利品として連れて帰ったことである。妻クリュタイメストラの嫉妬と憎悪の対象となった。妻クリュタイメストラはこの劇では強い意志と謀略性を持った「憎憎しい牝犬」と形容される。このトロイア戦争が実は大義名分のない弟の浮気な女房を取り返すための戦いに過ぎず、娘イピゲネイアを生贄にすること自体が許されないと妻クリュタイメストラは主張する。妻クリュタイメストラは夫殺害の策略として、神のものである緋色の絨毯を夫に踏ます冒涜の罠を用意した。こうしてアガメムノン暗殺が行われた。時間が大分過ぎてから、捨てられたアガメムノンの第三王子であるオレステスが成人して帰還するのである。