ブログ 「ごまめの歯軋り」

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政府の景気調整機能は失われている  時代遅れのバラマキ政策

2008年12月21日 | 時事問題
asahi.com 2008年12月21日1時21分
「生活経済防衛予算」「景気の麻生」迫力欠く 財務省原案
 麻生首相は09年度政府予算の財務省原案で、景気対策重視にかじを切った。一般会計総額は当初予算で過去最大。国債発行も膨らみ、概算要求基準(シーリング)は事実上崩壊した。ただ、小泉政権以来の財政再建路線からの転換に説明もないため、首相が打ち出した景気対策はメッセージ性が乏しく、迫力を欠いたものになった。
 元々、財政出動に積極的な首相は当初、財政再建路線の明確な転換を模索。社会保障費の2200億円抑制や公共事業費の3%削減を定めた「骨太の方針06」について、「撤回宣言」は封印。3日に閣議決定した予算編成方針では「状況に応じて果断な対応を機動的かつ弾力的に行う」と明記する一方、党内の亀裂と世論の批判に対する懸念もあり、「シーリング維持」と言い張るという、わかりにくい「二正面作戦」をとらざるを得なかった。

100年に一度の大恐慌時代に日本が取るべき政策

減税(給付金)、緊急財政出動(補正予算第1次、第2次)とあわただしく政府与党は「対策」をしているが、派遣労働者の首切り、採用取り消し、自動車・電機など輸出型産業の赤字転落と日本は激震に見舞われている。
 政府による中小企業融資などという姑息な手段よりも経済構造を変える取り組みが必要である。つまりグローバル化に繋がる産業育成が大事です。まず円高対策のために輸出産業への減税が一番緊急政策となろう。「バラマキ政策」、「公共投資」という財政出動はもう効かないことを認識すべきです。
日本産業は2002年度からの景気拡大過程で二極化が進行した。電機・IT産業・鉄鋼・自動車産業の「グローバル経済圏企業」では年率9.7%の成長をあげ、一方中小企業や非製造業の「ドメスティック経済圏企業」は年率1.7%のマイナス成長であった。これから日本が本当に成熟した形で輸出立国を目指すなら、新興国の中産階級をターゲットにする必要がある。そうした実質経済成長の地域と一体化することが、本当のグローバル化でしょう。資金面では日本は欧米に一歩遅れている。だから高い技術力で勝負することである。

読書ノート 今西錦司著 「生物の世界」 中公クラシックス

2008年12月21日 | 書評
棲み分け理論からダーウインの自然淘汰進化論批判まで 第3回

序(3) 自由な科学者 今西錦司

 これらの遠征計画は学術調査であったが、行く先はすべて日本軍の進出先(侵略先)であった。軍の支援なしでは実施は難しい。かっての大英帝国の植民地進出に歩をあわせた博物学の研究に似たところがあるのは、時代のしからしむところである。今西氏の経歴で面白いのは、長い無給講師時代である。農学部を卒業し、理学部大学院を卒業して1932年理学部講師になったが無給であった。1939年(37歳)に興亜民族生活科学研究所員になって4年間は給料を貰ったが、1948年ようやく有給の理学部講師になった。49歳まで無給であった。どうして生活していたのか。よほど親に財産があったのだろうかと余計な心配をしてしまう。もうひとつの今西氏の面白いところは教授になった歳が遅すぎることである。1959年京大人文科学研究所教授になったのが57歳であった。1965年に京大教授を退官するまで6年しか残っていなかった。全く世間体を意にしない、漂泊の研究者であったようだ。恐らく野外研究が中心だったので、大学には居なかったのであろう。人事は何処吹く風のように無頓着であった。今の世知辛い、肝っ玉の小さな研究者では測り知れないスケールを持った研究者であった。すべては束縛からの自由には替え難い心意気があったのだろう。

読書ノート 堂目卓生著 「アダム・スミス」 中公新書

2008年12月21日 | 書評
「道徳感情論」、「国富論」への案内  第11回

第二部 「国富論」
5、今なすべき事


 「今なすべき事」とは、18世紀のイギリスがアメリカ植民地の独立問題においてなすべき、スミスの政策提案である。欧州ではさまざまな優遇政策によって特定の貿易と輸出向け製造業に資本が集中し、その他の部門が本来の水準から見て立ち遅れていた。優先や抑制自体を廃止して、本来の発展経路に自然に復帰する政策をスミスは「自然的自由の体系」と呼んだ。それは保護された産業部門を徐々に縮小させ、他の産業部門を徐々に拡張させることにより、すべての産業部門を完全に自由で適正な均衡に向って、しだいに復帰させる事が出来る唯一の方策だと考えた。ところが「体系の人」といわれる統治者は、しばしば拙速に計画図にそって実行しようとする。社会改革で肝要な事はゆっくり行う事である。改革に対応する人々の摩擦と混乱を時間をかけて解消する事である。そして最期にスミスはアメリカ植民地の独立問題で、税負担と代表選出をセットで認めてアメリカをイギリスに州として統合するか、アメリカの独立を認め分離するかを提案した。経済的には前者の統合案で十分イギリスの目的は達せられるが、政治的には結局後者の分離案となった。スミスは「国富論」をアメリカ独立の前1776年に書き上げ、イギリスは1783年パリ条約でアメリカ独立を承認した。これによってイギリスがアメリカ植民地維持のための民事軍事的負担から自らを解放し、将来の計画を身の丈にあったものにするよう務める事ができた。

文藝散歩 「ギリシャ悲劇」

2008年12月21日 | 書評
啓蒙・理性の紀元前5世紀、都市国家アテネの繁栄と没落を描く 第22回

アイスキュロス 「縛られたプロメテウス」 呉 茂一訳 岩波文庫 (2)


 「縛られたプロメーテウス」の劇の登場人物は新支配神ゼウスの部下権力のクラトス、暴力のピアー(セリフなし)、ゼウスの息子で火と鍛冶の神へ-パイトス、旧支配者クロノス神の自然神ティターン一族の巨人神であるプロメーテウス(主人公)、オーケアノスの娘たちで舞唱団のコロス、ティターン一族で大洋神のオ-ケアノス、アルゴス王イーコナスの娘イーオー、ゼウスの息子で伝令の若者ヘルメースである。「縛られたプロメーテウス」の劇は前8世紀の詩人ヘーシオドスの「神統記」にあるプロメーテウスの伝説を基にしている。新しく全能の神の支配者となったゼウスは自然神ティターン一族を圧迫して地下に埋め込んだ。自然神ティターン一族の巨人で策略にとんだプロメーテウスはあわれな人間族に火を与えてさまざまな智恵をつけた。人間を憎んでいたゼウスは女という害悪を泥から作り出して人間に配した。火を天界から盗んで人間に文明の元をあたえたプロメーテウスに罰を与えるため、ゼウスはプロメーテウスを岩に鉄鎖で縛るつけるところから、この劇は始まる。プロロゴスにおいて、クラトス(権力)はゼウスから命じられ、ゼウスの息子で火と鍛冶の神へ-パイトスがプロメーテウスを巌の上に鉄鎖で縛り付ける作業を監視する。頑固で厳しいクラトスの前でぶつぶつ言いながらへ-パイトスは作業を終了して退場する。プロメーテウスは独白において、ゼウスの責めを負ったのはあらゆる技術を人間に教えたせいであることを語る。パロドスでオーケアノスの娘たちで舞唱団のコロスが登場してプロメーテウスを憐れんで慰める。エピイソディオンにおいてプロメーテウスは自分は暴力ではなく計略で敵を制する者であり、人類を滅亡から救ったという。次に大洋神オーケアノスが登場してプロメーテウスの無謀を諌めいたわりの言葉をかけるがプロメーテウスは強気で受け答える。この合間に何回もスタシモンのコロスの合唱隊歌が入る。エピイソディオン第3から主題が変わってアルゴス王イーコナスの娘イーオーが登場し、ゼウスの子供生んで后へ-ラーの嫉みをかって牛に変えられ放浪の旅に出ていたのがプロメーテウスにであって、自身の運命の予言を聞きだすのである。イーオーは中央アジアへの長い放浪の旅を続け、イーオーの子供の13代目にプロメーテウスを救い出すものが出ることを予言する。ここではプロメーテウスは予言の神となる。そして人類の高祖になるのである。劇の前半部はプロメーテウスが人間に智恵を授けてゼウスの罰をうける話で、劇の後半部はイーオーの放浪の旅と子孫の運命に関することである。

自作漢詩 「歳晩愧青銅」

2008年12月21日 | 漢詩・自由詩
清貧計拙任西     清貧計拙く 西東に任し

畢竟無為歳已     畢竟無為 歳已に窮る

老懶一身終白首     老懶一身 白首に終わり 
 
蕭然万事愧青     蕭然と万事 青銅に愧ず

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(赤い字は韻:一東 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)