格付け信用の失墜とレバレッジ手法の終焉 第5回
2) 救世主の国富ファンド
これまでの金融の歴史では誰かが窮地に陥ったら、奉加帳をまわして救済資金が集められた。しかし今回この奉加帳方式は機能しなかった。90年代より金融危機関は自己資本規制(バーゼルⅠ&Ⅱ)によって、野放図な拡大路線は取れなくなっている。商売の規模に応じた資本金規模が求められるのであるが、経営者は株価の下がる増資や自社株ストックオプションは避けるものである。銀行には余裕のお金は何処にもなかった。銀行はリスク上許される限りのレバレッジを掛けた嵩上げ商品開発(証券化)に努めてきた。つまりオフバランス(簿外)を大々的に進展させた「レバレッジ経営」をしていたのである。すると資金に余裕のある者は,先進国金融機関以外に求めざるを得ない。そこで登場したのが、アジア・中東の国冨ファンドである。
国冨ファンドとは国家機関(ソブリン)が主体となって運用するファンドである。IMFの推定によると、268兆円の資産規模で、ヘッジファンドの2倍の資産規模を誇る。その資金源は石油・ガスなど天然資源の輸出による貿易黒字か、商品の輸出による貿易黒字である。貿易黒字によって外貨の蓄積、外貨準備高をたくさん持っている。天然資源の輸出による貿易黒字国にはアラブ首長国連邦、サウジアラビア、クエート、カタール、オーストラリア、リビア、アラスカ、ブルネイ、マレーシアなどがあり、商品の貿易黒字国にはシンガポール、中国、香港、韓国などがいる。世界で唯一、貿易時の支払いに使用される米ドルを持つアメリカだけが巨額の貿易赤字に耐えられる。アメリカの貿易赤字の累積額がすなわち国富ファンドの資金源である。政府系ファンドといえば年金、郵貯などもファンドではあるが、資金に余裕は無いし、長期の貸付にはリスクが大きいので出来ない。短期的な時価評価に煩わされない巨額の投資が可能な余裕のある資金が中東の石油系ファンドである。秘密のベールに包まれ、国民の監視から免れた資金とは中東の王政国家や社会主義国家資金である。すなわち民主主義議会(民意)が存在しない独裁国家が便利である。
中東イスラム圏でな「利息のある貸付業務を行っている企業への出資・投資は禁止」されている。イスラム金融とアメリカ金融が共存共栄できるかどうかは不透明である。しかし近年の中東諸国や中国が資金の再配分の権力を持ちつつある。覇権が移動しているのだろうか。覇権とは権利と義務が表裏一体の関係にある。義務とは貿易決済で必要とする流動性のある通貨を潤沢に供給する事である。アメリカは膨大な貿易赤字を海外からの資金流入で埋め合わせるという自転車操業が出来る経済大国である。日本や中東や中国がアメリカへの商品輸出に依存している限り、覇権国家とはいえない。ましてドルに代わる事は未だ想像もつかない。
2) 救世主の国富ファンド
これまでの金融の歴史では誰かが窮地に陥ったら、奉加帳をまわして救済資金が集められた。しかし今回この奉加帳方式は機能しなかった。90年代より金融危機関は自己資本規制(バーゼルⅠ&Ⅱ)によって、野放図な拡大路線は取れなくなっている。商売の規模に応じた資本金規模が求められるのであるが、経営者は株価の下がる増資や自社株ストックオプションは避けるものである。銀行には余裕のお金は何処にもなかった。銀行はリスク上許される限りのレバレッジを掛けた嵩上げ商品開発(証券化)に努めてきた。つまりオフバランス(簿外)を大々的に進展させた「レバレッジ経営」をしていたのである。すると資金に余裕のある者は,先進国金融機関以外に求めざるを得ない。そこで登場したのが、アジア・中東の国冨ファンドである。
国冨ファンドとは国家機関(ソブリン)が主体となって運用するファンドである。IMFの推定によると、268兆円の資産規模で、ヘッジファンドの2倍の資産規模を誇る。その資金源は石油・ガスなど天然資源の輸出による貿易黒字か、商品の輸出による貿易黒字である。貿易黒字によって外貨の蓄積、外貨準備高をたくさん持っている。天然資源の輸出による貿易黒字国にはアラブ首長国連邦、サウジアラビア、クエート、カタール、オーストラリア、リビア、アラスカ、ブルネイ、マレーシアなどがあり、商品の貿易黒字国にはシンガポール、中国、香港、韓国などがいる。世界で唯一、貿易時の支払いに使用される米ドルを持つアメリカだけが巨額の貿易赤字に耐えられる。アメリカの貿易赤字の累積額がすなわち国富ファンドの資金源である。政府系ファンドといえば年金、郵貯などもファンドではあるが、資金に余裕は無いし、長期の貸付にはリスクが大きいので出来ない。短期的な時価評価に煩わされない巨額の投資が可能な余裕のある資金が中東の石油系ファンドである。秘密のベールに包まれ、国民の監視から免れた資金とは中東の王政国家や社会主義国家資金である。すなわち民主主義議会(民意)が存在しない独裁国家が便利である。
中東イスラム圏でな「利息のある貸付業務を行っている企業への出資・投資は禁止」されている。イスラム金融とアメリカ金融が共存共栄できるかどうかは不透明である。しかし近年の中東諸国や中国が資金の再配分の権力を持ちつつある。覇権が移動しているのだろうか。覇権とは権利と義務が表裏一体の関係にある。義務とは貿易決済で必要とする流動性のある通貨を潤沢に供給する事である。アメリカは膨大な貿易赤字を海外からの資金流入で埋め合わせるという自転車操業が出来る経済大国である。日本や中東や中国がアメリカへの商品輸出に依存している限り、覇権国家とはいえない。ましてドルに代わる事は未だ想像もつかない。