ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

野村監督 仕事の流儀 

2008年12月09日 | 時事問題
何とかするという 気骨は環境の産物だ
中学の野球部時代も働かなくてはならず、練習もままならない。しかも、母親は中学を出たら就職して欲しいと言う。そんな時、助けてくれたのは兄でした。男の子ならせめて高校くらいは出ておかないと、大人になったら苦労すると言って母を説得し、自分の大学進学を断念して私を高校へ行かせてくれました。学問の好きな兄が自分の将来と引き換えにして守ってくれたのです。貧しい環境もひとつの力なのだと、プロ野球選手になれた時に気付きました

読書ノート 辻井喬 上野千鶴子対談 「ポスト消費社会のゆくえ」 文藝新書

2008年12月09日 | 書評
セゾングループの歩みから日本の消費社会を総括し、ポスト消費社会の姿を探る 第6回

序(6)
 バブルがはじけると消費文化は冬の時代に突入し、百貨店の統合再編成、価格破壊で躍進したスーパーダイエーの倒産などは格差によって生じた中産階級の分解の結果であるという。バブルを予測できなかった学者は、バブルをちゃっかり拝借して理論の綻びをうまく直している。たくましい学者魂だなと感心するが、それはさて置いて、失われた13年間でセゾングループは崩壊した事は事実である。電鉄系百貨店も土地バブルの尖兵であった事は明白であり、かなりの負債を抱えていた。銀行と建設業とデベロッパーの凋落は凄まじかった。建設業会社の株価の50円割れが長い間続いた。セゾンが崩壊したのは、堤一族の独裁的閉鎖集団であったからで、兄堤義明氏の国土開発や西部鉄道もその一族経営の財閥形態は崩壊したが、核となる会社は今も健在である。堤コンツェルンが崩壊する前に、持株会社ホールディングに改組しておけばよかったのだ。そのような会社組織論を論じるのは本書の目的ではない。本書は「セゾンの失敗」の検証ではなく、日本の戦後消費社会がどのように誕生して、爛熟して、崩壊したのかそれを一企業の歴史、一企業人の生涯を通じて見て行こうとするものである。

経済問題 春山昇華著 「サブプライム後に何が起きているのか」 宝島新書

2008年12月09日 | 書評
格付け信用の失墜とレバレッジ手法の終焉 第11回

5) 世界金融の覇権交代の流れ (1)

 対26カ国の貿易加重ドル指数は2002年より下降の一途である。アメリカドルの通貨価値が下がっているのである。アメリカの双子の赤字は世界が許容しているから続いているのである。商品をアメリカに輸出しなければ世界の経済は破産するからである。アメリカの体力回復を願っているのだ。アメリカの景気回復はあるのだろうか。日本の経験からアメリカはデフレを警戒しつつゼロ金利まで下げる必要がある。そして通貨価値を上昇させてはならない。アメリカへの輸出国はドル安を我慢しなければならない。98年の危機はアジア・ロシアで発生した。現在の危機は欧米である。外貨準備高の優等生は日本と中国であったが、2006年より中国の外貨準備高は日本を抜いて世界一である。中国は小平の「黒猫白猫」、「先富論」、「一国二制度」という柔軟な経済路線で躍進した。アメリカが欲しがる商品の製造基地としてのし上がってきた。また外圧にいわれるがままに金融自由化を実施した「日本の失われた13年」を中国はしっかり学んでいた。人民元レートも開放しないのである。



文藝散歩 「ギリシャ悲劇」

2008年12月09日 | 書評
啓蒙・理性の世紀、紀元前5世紀都市国家アテネの繁栄と没落を描くギリシャ悲劇 第11回
丹下和彦編 「ギリシャ悲劇」 中公新書 (10)

2) アイスキュロス 「オレステイア三部作」ー法の正義 (3)

(2) 「供養する女達」ー復讐のドラマ
 クリュタイメストラとアイギストトスはアルゴスに君臨している。娘エレクトラは二人に虐待されて耐えている。そこへ復讐者オレステスの帰還への願望が合唱団によって告げられた。姉エレクトラと復讐者オレステスの再会は墓参りで果たされた。合唱は報復が正義であるとことを歌う。復讐者オレステスはこう言い放つ。「敵意と敵意が、正義と正義がぶつかるのだ。」部族社会の覇権争いは力の正義である。復讐の論理は正義なのだ。クリュタイメストラとアイギストトスを殺害したオレステスは罪の意識におののく。母と子が復讐の連鎖に繰り込まれる。肉親の罪を追及する復讐の神エリニュスが幻想となってオレステスの心の中を乱舞する。