ブログ 「ごまめの歯軋り」

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ブッシュに靴を投げつけるイラク人記者  恨みを思い知れ

2008年12月15日 | 時事問題
asahi.com 2008年12月15日9時17分
イラク人記者、ブッシュ米大統領に靴投げつける
 【カイロ=井上道夫】ブッシュ米大統領は14日、イラクの首都バグダッドを予告なしに訪問。今年末で期限切れを迎える国連安保理決議に代わり、米軍が来年1月以降もイラクに駐留する根拠となる米軍駐留協定にマリキ首相とともに署名した。 AFP通信などによると、マリキ氏と臨んだ記者会見で、反米感情を抱いているとみられるイラク人記者が突然立ち上がり、アラビア語で「別れのキスだ。犬め」「夫を失った女性、親を失った子どもたちからの贈り物だ」などと叫びながら左右の靴を一つずつブッシュ氏に投げつけた。

イラク傀儡政権の記者会見でこの有様 米国から受けた国民の苦しみは隠しきれない
2003年から始まったイラク戦争の全戦死者の数は、公式発表では9万人というが、ある西欧の機関が独自の推計法(家族のなかで戦死した人の数を無作為にアンケートして、その数を全人口に拡大する)によると160万人という結果がでたと云う。その家族のうらみを思い知れとばかりに、男は靴を2足ともブッシュに投げつけた。

読書ノート 堂目卓生著 「アダム・スミス」 中公新書

2008年12月15日 | 書評
「道徳感情論」、「国富論」への案内 第5回

第一部 「道徳感情論」

2、繁栄を導く人間本性
 私たちは他人といっしょに悲しむ事より、他人といっしょに喜ぶ事を好む。富は人間を喜ばせ、貧困は人間を悲しませる。今の脳科学でいうところの「報酬回路」の刺戟を好むのである。我々は自分の境遇を改善したいと望むのは、同感と好意と明確な是認とをもって注目されることが全目的である。人間が「社会的動物」といわれ食欲、性欲、社会欲という3つの欲望を持つといわれ、3つ目の欲望にあてはまる。社会秩序の基礎と同様、野心と競争の起源は、他人の目を意識するという人間本性にある。人の幸福とは、心の平静と享楽にある。心の平静のためには「健康で、負債がなく、良心にやましいことが無い」ことが必要である。これを「最低水準の富」という。「賢人」にとって最低水準の富さえあればそれ以上の富は自分の幸福に何の影響ももたらさない。一方「弱い人」は最低水準の富を得た後も、富の増加は幸福を増加させると信じている。経済の発展は最低水準以下の生活「貧困」にいる人の数を減らす事である。しかし「弱い人」の心情は自己欺瞞ではあるが、経済を発展させ社会を文明化させ、他人をも豊かにさせるのである。自分の生活必需品以上の富を生産する事で幸福が平等に分配され、社会は繁栄する。富と地位に対する野心は,社会の繁栄を押し進める一方、社会の秩序を乱す危険性がある。下流と中流の人々は「財産への道」を進む事によって、「徳への道」も身につけることができる。これを「衣食足りて、礼節を知る」という。ところが「徳への道」を忘れ「蓄財」にのみ走ると、それを獲得した手段や過去の犯罪をも隠蔽する腐敗の道を歩む。「フェアプレイ」の侵犯である。

読書ノート 辻井喬 上野千鶴子対談 「ポスト消費社会のゆくえ」 文藝新書

2008年12月15日 | 書評
セゾングループの歩みから日本の消費社会を総括し、ポスト消費社会の姿を探る 第11回

1990年代ー2007年  失敗の総括 解体と再生 (1)

 いよいよ本書の懸案である、セゾングループの失敗の検証に入る。第一はグループの体質である。西武百貨店は創業以来借入金でもって資金調達するという方式を一貫してきた。これはセゾングループ独特のやり方ではなく、企業一般のやりかたである。超優良企業とか、資本蓄積の大きい関西企業であれば自己資金でやるという方式もある程度はあるだろうが。それより重要な事は、バブル崩壊以前に「生活総合産業」を目指しディベロッパー業界に手を出していたことである。堤義明氏の西武鉄道や国土開発の西武本体は典型的なディベロッパーであった。むしろ堤清二氏の西武流通グループ(セゾングループ)のほうがディベロッパーの割合は非常に低かった。第二の問題は西洋環境開発グループの「サホロリゾート」、「ホテル西洋 銀座」、「タラサ志摩」の一連の失敗である。セゾンの崩壊に致命的に働いたのがこの二つの企業の失敗であった。他にも「インターコンチネンタルホテル」の失敗、総合ショッピングセンター「つかしん」の失敗もある。西洋環境開発グループの失敗は、中曽根首相のリゾート法に乗っかったリゾート開発において超豪華施設の失敗で、バブルそのものの失敗であった。浮かれ、自信過剰の花見景気の終焉であった。もうひとつの重大な失敗は「東京シティファイナンス」の失敗であった。グループの成長期にカード事業のクレディセゾンの他に金融事業として西友100%出資の「東京シティファイナンス」を設立した。これは法人企業融資に専念して、無茶な貸付を行い破綻した。バブルの銀行業務に準じた失敗であった。負債は「東京シティファイナンス」のほうが大きく、西洋環境開発よりも深刻であった。結局この二つの会社によってセゾングループは解体せざるを得なかった。つまり日本の土地バブルそのものによる破綻であった。セゾングループの経営は「経営共同体」という株の持ち合いに過ぎず、統合性がなくかつ堤氏の指導性も及ばなかった。堤氏は統帥権のない天皇に過ぎなかった。セゾングループとは無責任体制にあったといえる。



文藝散歩 「ギリシャ悲劇」 

2008年12月15日 | 書評
啓蒙・理性の世紀、紀元前5世紀都市国家アテネの繁栄と没落を描くギリシャ悲劇 第16回

丹下和彦編 「ギリシャ悲劇」 中公新書 (15)


5)エウリピデス 「メディア」-情念の奔流

 本編の上演は前431年である。この年はポリスアテネとスパルタの内戦であるペロポネス戦争勃発の年である。この戦争の開始後27年でアテネは敗北し、アテネ50年間の繁栄が衰退へ向うのである。アイスキュロスがギリシャ理性の勝利を高らかに謳いあげたが、エウリピデスの時代には屈折した気持ちが理性より感性・情念の奔流が悲劇を出来させる「メディア」のストーリを見て行こう。コルキス遠征の英雄イソアンはもともとメディアという妻がありながら、コリントスの王女クレウサと結婚する。クレウサの父コリントス王クレオンはメディアの追放を企てる。こうした仕打ちに復讐するため、メディアはクレウサとコリントス王クレオンを殺害した上、イソアンを苦しめるため、イソアンとの間に儲けた子供達を殺害して、アテナイ王アイゲウスの下へ逃亡するするのである。チューモス(激情・怒り)がブーレウマタ(殺害計画)を支配する。初めの計画ではメディアの殺害対象はクレウサ・クレオン・イソアンであったが、自分を裏切ったイソアンをもっと苦しめるため子供を殺害する計画に変更される。劇は復讐と逃亡の二つの相貌を持つのである。賢い女は魔女に変貌した。イソアンにすればコリントス王国との婚姻関係は有利な側面を持った。そのために昔からの妻を追放するという忘恩行為に出たのである。メディアはそれが赦せなかった。メディアにとってまさに万事休すの孤立無援の闘いとなったが、そこに現れたのが逃亡の手助けをしてくれるアテナイ王アイゲネスである。しかしメディアにとって子供を殺すのは母性愛に反することだが、女として妻としての怒りが母性愛に打ち勝った。メディアの行為には倫理的な問題が残る。鬼となることでその全人格を支配した。知が情に破れた悲劇である。

自作漢詩 「拆冬飛葉」

2008年12月15日 | 漢詩・自由詩
紅雲生處白沙     紅雲生ずる處 白沙明なり

浦口釣竿遊子     浦口の釣竿 遊子の情

晩稲蕭蕭飛葉響     晩稲蕭蕭と 飛葉響き
  
凄風切切拆冬     凄風切切と 拆冬鳴る

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(赤い字は韻:八庚 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)