ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

石油価格の下落は、経済縮小の先取り

2008年12月11日 | 時事問題
asahi.com 2008年12月10日9時58分
NYダウ、3営業日ぶりに反落 原油は2日ぶり下落

9日のニューヨーク株式市場は、大企業で構成するダウ工業株平均の終値が前日比242.85ドル安の8691.33ドルと3営業日ぶりに下落した。 一方、ニューヨーク商業取引所の原油市場は、国際指標となる米国産WTI原油の先物価格の終値が同1.64ドル安の1バレル=42.07ドルと2日ぶりに下落した。

asahi.com 2008年12月10日1時27分
ソニー、人員削減は1万6000人以上 09年度末まで
 大手電機メーカーのソニーは9日、業績が悪化している液晶テレビやデジタルカメラなどのエレクトロニクス事業で、国内外の合計1万6千人以上の従業員を、09年度末までに削減すると発表した。現在57ある工場など製造拠点を約1割減らすほか、増産投資を凍結する。国内企業では最大規模の人員削減となる

経済は冬の時代に入ります 下手な投資は危険です 金を確保することが一番です

読書ノート 堂目卓生著 「アダム・スミス」 中公新書

2008年12月11日 | 書評
「道徳感情論」、「国富論」への案内 第1回

序(1)

 アダム・スミス「国富論」とカール・マルクス「資本論」は欠かせぬ古典的名著だと思いながらも、いつも挫折してきた。何回かトライしてみたり、読書会で読み出すのだが、途中で放棄してしまう。そして「これは面白くないからだ」と納得するのである。確かに経済学の本は、古い時代の生産や貿易、財政などを丹念に検証することで一定の結論に導こうとするのだが、時代背景が分らないため理解できない。現代とあまりに様相が異なるため、ピンとこないのである。という言い訳ばかりで理科系の私は最後まで読み通した経験が無いのである。今回の堂目卓生著 「アダム・スミス」を見て、「ああ難しそう」と思ってしばらく本棚に寝かしておいた。改めて本書をぱらぱらとめくってみると、なんと倫理学で始まっているではないか。そういえばドイツの社会学者マックス・ウエーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」という著作も、資本の蓄積過程において宗教的倫理思想が重要な役目を果たしことに注目した書物だったなと思いだして、心を強くして本書を読み出した。自由放任主義の「見えざる神の手」で有名な国富論とアホの一つ覚えのように理解していたアダム・スミスについて、ネオ自由主義者の規制緩和策と格差拡大問題の是非や金融資本の社会破壊力が世間を騒がせている昨今、一つ考えてみようという気になった。

読書ノート 辻井喬 上野千鶴子対談 「ポスト消費社会のゆくえ」 文藝新書

2008年12月11日 | 書評
セゾングループの歩みから日本の消費社会を総括し、ポスト消費社会の姿を探る 第8回

1950年代ー1960年代  激動の成長期 (1)

 辻井喬(堤清二)氏の父親は云うまでもなく西武鉄道の創始者堤康次郎氏でで多くの異母兄弟を残した。多くの妾を持ち、まるで戦国大名のように遺伝子を残す事に勤めたようだ。堤康次郎氏は戦後の自由党と改進党の保守合同に努めた政治家で衆議院議長を務めた。辻井喬氏は一時期父親の政治秘書をしたことがあるが、西武百貨店の経営を任された。当時にしては珍しい労働組合を会社側が主導的に結成し、入社試験制度を設けた。西武百貨店の前身は武蔵野百貨店(1940-1948)で「下駄履き百貨店」といわれる最下層の庶民を相手にした。三越などの名門とは明らかに出自が異なる。最下層の庶民が中産階級に成長する経済成長とともに西武百貨店も成長した。人材も少ないところに成長期を迎えたので、会社組織も抜擢人事やスカウト人事が多く、環境が人を育てる経営体質を持つに至った。辻井喬氏の個人的思い込みもあるだろうが、正しいと思うことを貫くことを是とする精神構造の人で成り立っていたようだ。「消費者本位」ということが社是であった。いまでいえば「カストマー・サティスフィケーション」ということになろうか。64年に東京オリンピックが開催される事になり、新宿や池袋周辺では顧客争奪戦(流通戦国時代)となり、高島屋、伊勢丹、西武、東部、松屋などが出店ラッシュでしのぎを削った。国内では順調に拡大してきた路線が1962年ロス出店で一頓挫をきたす。アメリカの消費社会は膨大な需要があるように見えたが、全国仕入れシステムには大きな日米差があって、とても太刀打ちできず1964年には早々撤退となった。当時の金で50億円の損失を出した。この莫大な損失も当時の拡大傾向のなかで、解消してゆけたのである。バブル崩壊後の市場縮小ではひとたまりもなく倒産においこまれたであろう。


文藝散歩 「ギリシャ悲劇」

2008年12月11日 | 書評
啓蒙・理性の世紀、紀元前5世紀都市国家アテネの繁栄と没落を描くギリシャ悲劇 第13回

丹下和彦編 「ギリシャ悲劇」 中公新書 (12)


3) ソポクレス   「アンティゴネ」ー人間賛歌  (1)
ソポクレスの「アンティゴネ」は前442年の上演とされる。時はペリクレス治下、アテナイの繁栄には翳りは見えない。人間のあるべき姿(理想像)を正面から見据えたソポクレスの作品が登場した。一つの信念(神の法に殉じきることによってその行為を崇高の位置まで高めた一人の強い女性のありようを描いた作品である。劇のストーリを見ておこう。オイディプスの死後、テバイの王位をめぐって二人の息子エテオクレスとポリュネイケスが争い、争いに敗れたポリュネイケスはアルゴスに逃れ、アルゴスの軍勢を率いて祖国テバイを攻めた。一騎打ちで二人とも討ち死にをする。叔父のクレオンが王位について、エテオクレスは国葬を持って葬るが、外国勢の加勢で祖国を攻めたポリュネイケスは逆賊であるとして埋葬を許可せず、埋葬したものは死刑とすると布告した。二人の兄弟の姉アンティゴネは禁制を犯して弟ポリュネイケスを埋葬しようとして捕縛され投獄される。アンティゴネは最期は獄中で死を選ぶ。アンティゴネの許婚でクレオン王の息子ハイモンは助命を誓願したが赦されず自分も自殺する。これを知った母親エウリュディケも後を追って自殺する。残ったのはクレオン王ひとりである。


自作漢詩 「江堤寒景」

2008年12月11日 | 漢詩・自由詩
飢烏唖唖末忍     飢烏唖唖と 聴くに忍びず

沙鳥求魚落遠     沙鳥魚を求め 遠汀に落つ

寒景長堤霜下草     寒景長堤に 霜下の草 
 
夕陽没入水中     夕陽没入す 水中の青

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(赤い字は韻:九青 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)