できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

2127冊目:野上暁『子ども文化の現代史』

2015-07-11 12:52:37 | 本と雑誌

2127冊目はこの本。

野上暁『子ども文化の現代史』大月書店、2015年。

ご自身の生活体験や雑誌編集者としてのご経験をもとに綴っている部分もあるので、事実確認が必要な部分もあるかと思うが・・・。でも、敗戦後日本社会における子ども文化の変遷がどのようなものであったのか。特に遊びやメディアとのかかわり、いわゆるサブカルチャーやオタク文化みたいなものの発展と子ども文化とがどのような関係にあるのか。おおよその見取り図的なものはここで示されているように思う。

子ども文化の現代史: 遊び・メディア・サブカルチャーの奔流


2126冊目:鈴木庸裕編著『「ふくしま」の子どもたちとともに歩むスクールソーシャルワーカー』

2015-07-11 12:37:57 | 本と雑誌

2126冊目はこの本。

鈴木庸裕編著『「ふくしま」の子どもたちとともに歩むスクールソーシャルワーカー』ミネルヴァ書房、2012年

先ほどの冨永良喜さんの本の紹介(2125冊目)のところで書いたとおり、大災害で被災した子どもたちへの支援に必要なソーシャルワーカーのかかわりについて、「学校・家庭・地域をつなぐ」という視点からまとめた本。

この本は東日本大震災発生後、福島県内各地で活動を開始したスクールソーシャルワーカーの取組みを軸に、広域避難をした子どもへの支援の課題なども含めて書かれている。

その一方で、阪神淡路大震災発生後の兵庫県内、特に阪神間の小中学校に配置された「教育復興担当教員」が、被災した子どもたちの学校や家庭での生活状況を見守りつつ、臨床心理や児童精神医学などの専門家によるケアと連携しながら、学校のなかで個別の学習支援等々に動いたことも、この本では紹介されている。実はこの「教育復興担当教員」の節を書いたのが、私である。

このようなことから、学校の教職員と心理・医学・福祉の専門職との連携のあり方を考える上でも、もっといえば昨今話題の「チーム学校」構想の行方を考える上でも、おそらく参考になるであろう1冊だと思う。

「ふくしま」の子どもたちとともに歩むスクールソーシャルワーカー―学校・家庭・地域をつなぐ


2125冊目:冨永良喜『大災害と子どもの心』

2015-07-11 12:31:23 | 本と雑誌

2125冊目はこの本。

冨永良喜『大災害と子どもの心』岩波ブックレット、2012年。

からだの安全・つながりの安全の確保⇒ストレスマネジメント⇒心理教育⇒生活体験の表現⇒被災体験の表現⇒避けていることへのチャレンジ。

この段階っておそらく、災害発生時の子どもへの対応だけでなく、いじめ被害などを受けた子どもへの対応にも言えることではないか、と思う。

と同時に、からだの安全やつながりの安全の確保の段階というのはまさに、被災直後に当面の生活を成り立たせるようにする段階と重なっていて、こういう部分では心理的ケア以前に生活保障のための諸支援、特にソーシャルワーク的なものが有効なのではないか・・・と思ったりもする。

大災害と子どもの心――どう向き合い支えるか (岩波ブックレット)


2124冊目:まげねっちゃプロジェクト編『まげねっちゃ』

2015-07-11 12:17:04 | 本と雑誌

2124冊目はこの本。

まげねっちゃプロジェクト編『まげねっちゃ』青志社、2012年。

2123冊目で紹介した宮城県女川町の小中学生と学校の教職員らの、東日本大震災発生後の1年の様子を綴った本。内容はさておき、この「まげねっちゃプロジェクト」がどういうプロジェクトなのか、本のなかで紹介してほしかった。

まげねっちゃ つなみの被災地宮城県女川町の子どもたちが見つめたふるさとの1年


2123冊目:小野智美編『女川一中生の句 あの日から』

2015-07-11 12:06:55 | 本と雑誌

2123冊目はこの本。

小野智美編『女川一中生の句 あの日から』はとり文庫、2012年。

東日本大震災の津波で大きな被害を受けた宮城県女川町の中学校で、被災した生徒たちがつくった「俳句」。

この「俳句」のひとつひとつと、その「俳句」である生徒とその家族、そしてこの「俳句」の授業を行った国語の教員・佐藤敏郎さんのことを、新聞記者の方が取材してつくった本。

「被災体験」というつらい体験に向き合う時期を選び、それをサポートする教職員らの環境的諸条件をうまく整えれば、子どもたちが俳句や文章を綴ることを通じて、自らの体験をふりかえり、整理することができることがわかる。

個々の子どものつらかったことにはそっとしておいて何も触れない、何も言わないという対応ばかりがいいことではない、ということがよくわかる一冊。

女川一中生の句 あの日から (はとり文庫)


2122冊目:NHKスペシャル取材班『釜石の奇跡』

2015-07-11 12:01:37 | 本と雑誌

2122冊目はこの本。

NHKスペシャル取材班『釜石の奇跡』イースト・プレス、2015年。

釜石市で2004年頃から地道に取り組まれてきた小中学校での防災教育が、東日本大震災発生時の津波に際しての子どもの避難行動を積極的に促し、多くの子どもの命を救ったというストーリー。

この釜石の防災教育のような、自分の暮らす地元のことをよく知ったうえで、危険に際しては自分で考えて行動できる子どもの育成。これはゼロトレランス型の教育とは対極に位置するもののように思う。ある意味、本当に文科省が防災教育に取り組みたければ、「今の教育改革を全面的にストップしろ」というくらいの英断が必要なのではないか。

釜石の奇跡 どんな防災教育が子どもの“いのち"を救えるのか?