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できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

「新しさ」ってなんだろう?

2010-04-23 20:47:51 | いま・むかし

しばらく更新が途切れました。久々にこちらのブログにも記事を書きます。

さて、このところ、「新党」が次々に発足していますね。具体的な流れとしては、たとえば参議院選挙を前にして自民党から出ていく人が「新党」をつくる、あるいは、保守系の小さな会派に自民党から合流する人が出る形で「新党」ができる、というところでしょうか。これに、現職・元職の自治体首長がつくる「新党」もありますね。そして、「大阪維新の会」ですか。大阪府及び大阪市・堺市の地方議員が橋下知事と連携する形でできた「地域新党」というところでしょうか。

しかし、この「新党」、訴えている政策や政治の基本理念、「どこが新しいねん?」って思いませんか?

たとえば「公務員制度改革」。これって、もう何年も前から言われてきたことでは? それこそ自公政権時代の行財政改革のひとつですよね。「地域主権」や「地方分権」の推進もどうですか? これまでの議論と何が、どうちがうのでしょうか? さらに、大阪府と大阪市の「二重行政の解消」により「大阪都」をつくる・・・・、それって、橋下知事の前の知事さんのころにだってあった話では? そして「自主憲法制定」・・・・、それって、自民党結党時から保守系政治家の間では「悲願」のようにあったテーマですよね。

何か、今まである政党間の政策論争のなかではでてこなかったような論点が出てきたとか、あるいは新しいタイプの社会の形成を目指す政治理念が出てきたとか、そういうことで「新党」が結成されるのであれば、それはそれで、筋が通ると思うんです。たとえ私や私の仲間とは考え方が合わなくても、「それはそれで、一理あるなぁ」という受け止め方もできると思うんですよね。

しかし、どうも「新党」が次々に出てきているわりには、どれも言っていることが「これまで、どこかの政党や個々の政治家が主張してきたことと、どこがどう違うのか?」がよくわからない。要するに「今までいた政党や所属団体のなかで、その話への支持が得られなくなってきたから、仲間とともに外に出ただけ」って感じがするわけです。とすれば、これは「新党」づくりというよりも、「仲間割れ」というほうが、しっくりとくる。また、「それって、脇で見ていても、うんざりする」「まだ同じグループのなかで、しっかりと路線対立を表に出して、きちんと論争してくれているほうが、ましなように見える」感じがします。

ついでにいうと、自分が「新しい、オリジナルなこと」を主張するためには、「過去はどうだったか?」とか「先行研究がどういってきたか?」ということを検討しておく必要がある・・・・と、私などは学生や大学院生の論文指導でよく言います。それをきちんと検討して、自分で「新しいことを言っている」気になっていても、過去の研究成果をふりかえってみると、「意外と変わってないなぁ」ということに気づかされ、がっくりくることだって多々あります。

いま、「新党」をつくろうとしている人たちは、いったい、これまでの政治・行政の成果と課題や、これに関する思想・理論などと、どういう「対決」をしようとしているのでしょうか? そこがあまり論じられていない気がしますし、そこで何か見えてこない限り、先ほども書いたように「仲間割れの見苦しい政治ショー」を見ているだけのようで、「新党」には何も期待できないような気がします。

もっとも、このことは保守系の「新党」の側に言えるだけでなく、従来の革新の側にも言えること。また、人権教育や解放教育、子どもの人権論など、私たちのかかわっている社会的な運動の側、これと関係の深い研究のあり方にも言えること。

「新しさ」を追い求めている自分たちの動きや、自分たちの主張している「新しさ」の根拠。そこをきちんと過去と照らし合わせて検証し、何が、どうちがっているのかを整理して位置づけておかないといけないのでは・・・・、と思います。また、「古い考え方や方法であっても、いいものはいい」というのであれば、「それがなぜ、今の状況のなかで『いい』と言えるのか?」という理由をきちんと作っておく必要もあるでしょう。

そして、そのような建設的な議論を積み上げていくことこそ、それぞれの団体のなかで大事な作業なのでは? 今の人権教育や解放教育、あるいは子どもの人権論に関する運動体や研究者のなかで、はたしてそのような建設的な議論ができているのだろうか・・・・。そう問い始めると、私自身「このままではいけない。なんとかしなくちゃ」と、ほかの人に向けた刃が自分に帰ってくることを感じます。私たちもまた、「変わらなければいけない」と、あらためて強く感じました。

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