今回は「2回目」の添削です。例の青少年会館の今後のあり方に対して、大阪市の「監理委員会」が出した結論について、私なりにコメントします。
ただし、今回は本来、赤字にすべきところを黒で書き、黒でいい部分を赤で、特に子どもたちに読んでほしい部分を青で書いています。なぜなら「はっきりいって、こんな文章書くなよな」というほど、赤字部分が膨れ上がるので、真っ赤になりそうだったからです。また、青字の部分は、特に今、青少年会館に集まる子どもたちに読んでほしいところです。
まぁ、少し、今回は読みやすいように工夫をしたのと、少し「授業」をしているような感覚で書いてみましたが。
<青少年会館の今後のあり方=監理委員会の出した結論>
青少年会館は地区青少年の健全育成を図る施設として整備されてきたが、今日的には条例改正し事業も一般施策化して実施され、広く青少年の健全育成を図る施設として位置づけられている。
住友コメント:だとしたら、たとえ過去の歴史的経過があるにせよ、青少年会館は法令上すでに「一般施策」であり、今回の監理委員会の検討対象にあげること自体、議論の余地があったはずである。「なんでもかんでも放り込んで、この際、やめられるものはやめてしまえ」という、監理委員会の議論の乱暴さが伺える。
しかしながら、青少年会館は特定の地域に偏在し、一般利用者にとって利便性が高いとはいえないので、
住友コメント:たしかにかつての地区に拠点施設として立地した以上、「偏在」といえば偏在である。しかし、ここでは、青少年会館の実績に学んで、同様の施設をほかの地域に設置してこなかったという、大阪市の青少年施策の貧困さはここでは棚上げされている。
また、確かに地域的に不便なところに立地している青少年会館もあるが、そのなかには、例えば駅前立地や大学隣接という好条件にめぐまれた館もある。例えば、「一般利用者にとっての利便性」などという論理でいえば、大阪湾の埋立地にあるオリンピック招致目的で作ったスポーツ施設(あとで書く「スポーツアイランド」)などのほうが、よっぽど交通のアクセスがしづらい。
さらに、「地域社会に密着した住民サービスの提供」という観点から言えば、青少年会館の現状のほうが、他の施設よりも優れている面が多々あるのではないか。また、あまり人の来ないような青少年施設は、おそらく、青少年会館以上に探せばいくつかでてくるのではないか。
そして、青少年会館の地域的偏在を問題にして、それで「なくす」というのであれば、なぜ市内各区に設置されていた「勤労青少年ホーム(トモノス)」は残さなかったのか。こちらは地域的に偏在しているのではなく、各区に均等に配置されていたはずだが。こんな感じで、各区に均等に配置していた青少年施設はなくすしたり、特にニーズを抱えた青少年の多い地域に拠点施設として作った青少年会館も「なくす」という方針を出したりするなど、「いったい、大阪市は青少年施策をどう考えているのか?」と首を傾げざるをえない。
このような一連の大阪市の青少年施策のあわただしい「改革」からうかがい知ることができるのは、「とにかく、赤字再建団体転落を防ぐために、市の財政の持ち出しになるような事業を展開している施設はなくしたい」という論理だけである。そして、この論理は「施策の見直し」というかげにかくれて巧妙に隠蔽されているが、スケスケに見える。だからこそ、今回の監理委員会のメンバー、特に外部委員が、経営企画室がすすめている行財政改革のプランをつくったりする会議もかかわっているのだろう。
今後は青少年会館において実施してきた○不登校など課題を抱える青少年に対する相談や居場所づくり、○青少年体験学習、○若年者職業観育成・社会参加支援、などの事業は同館に拠点を限定することなく、本市の青少年施策等として、全市的に展開すべき事業として位置づけることが効果的である。
住友コメント:ここに書いてあることのうち、「課題を抱える青少年」支援の取り組みを全市的に展開する必要があることは、少なくとも私は、青少年会館関連の各種会議などの場で、市教委側に主張してきた。たぶん、その必要性を認めたり、言ってくれたりしたほかの研究者もいたはずである。そして、この数年間、まだまだ取り組みは不十分といわれるかもしれないが、「一般施策化」のなかで、「人権尊重」の理念にたった総合的な青少年の支援拠点に青少年会館を変えようと、市教委も各館も動き始めたところである。
また、少なくとも私の場合、今後「課題を抱える青少年」支援のとりくみを全市展開するにあたっては、青少年会館は存続させるだけでなく、教育・福祉その他の大阪市の行政の総力をあげての「総合的な青少年施策づくり」を提案していた。なぜなら、大阪市の「課題を抱える青少年」に対する相談・居場所づくりに取り組んでいる市の機関・施設は、その人口規模や都市青少年の課題を考えた場合、今の青少年会館を加えても、あまりにも貧弱すぎるからである。
したがって、私などは監理委員会がいう、青少年会館事業の多くを「全市的に展開すべき」ということ自体は賛成であるが、「それだけで青少年会館を廃止するとまではいえないし、これを理由に青少年会館廃止を主張することは、大阪市として全市的に展開すべきという監理委員会の方針自体と矛盾する」と考える。本当に市の施策として全市的に青少年会館が担ってきた事業を展開するのであれば、その本家本元の青少年会館を廃止するという論理は、矛盾するのではないか。
それにしても、そんな論理矛盾に気づくゆとりすらないほど、「とにかく廃止方針をだして、やりにげしたい」と、監理委員会の面々はびくびくしていたのだろうか。だいたい、一方でネット上でPDFファイルで当日の会議で配布した資料を配りながら、「会議録自体は非公開」という、監理委員会の情報公開のあり方自体問われてしかるべきだろう。あの人たちが何を言っていたのか、詳しく知りたいのだが。逆にこれを「矛盾」と当初から感じていないのであれば、「大丈夫か、あなたたち?」とその意識を疑ってしまう。
一方、青少年会館が今まで行ってきた「課題を抱える青少年の相談・居場所づくり」も、「青少年の体験学習」も、「若年者の職業観育成・社会参加支援」も、これらはいずれも、政府レベルでの社会教育(生涯学習)施策や青少年施策の路線に沿ったものであるし、「若年者就労支援」ということでいえば、厚生労働省管轄の施策などともリンクしている。あるいは、「格差社会是正」という昨今の政策論議の動向にも沿った施策であるともいえるのである。そして、他の地方自治体、特に青少年施策で先進的な事例を持つ地方自治体のなかには、大阪市の青少年会館での取り組みに類似したものも多々ある。
これはある意味、「あたり前」である。例えば青少年会館での「課題を抱えた青少年の居場所づくり」について、その原案を市教委の人たちと、研究者など(私も含む)がいっしょに話し合ってつくるときに、政府レベルでの動きや他自治体の動向などをあれこれ参考にしたはずだから。だから、青少年会館での諸事業は、「施策」にルーツをもちながらも、今日きわめて「一般性の高い事業」になって当然なのである。
そういう目で見たら、ここの監理委員会の結論部分は、実は青少年施策的に見れば、「思いつきで書いた」としか思えないほど、なんにも中身のないことである。それこそ、「青少年会館なくしたあと、どうするねん?」と、監理委員会には聞きたくなる。だからこそ、先ほども書いたように、「とにかく、市の財源もちだしでこんな事業をやってくれるな~」という論理しか、ここには見えないのである。
まぁ、そもそも、市教委からの説明を8月上旬にたった1回だけ聞いて、「8月末に結論を出す」とマスコミに発表して、30・31日に付け焼刃のように結論を出したのが、この監理委員会である。しかも、その監理委員会には外部から弁護士やジャーナリストはいても、青少年問題や社会教育の研究者・実践家はひとりも入っていない。こんな無責任な議論の進め方、「やりにげ」に近いような方針の出し方は、私としてはとても容認できない。
そして、たった1回の説明、2日間の議論だけでこんな方針を立てられたら、青少年会館に通っている子どもたちはたまったものではない。それこそ、「子どもの人権を著しく侵害するもの」といわざるをえない。だからどんどん、青少年会館にいま通う子どもたちは、大阪市役所に対して「怒っていい」と思う。それこそ、「意見表明権の行使」である(もちろん、誰に対して「怒る」のか、「怒る中身」と、「どういう風に怒るのか」という手段は考えてほしいが)。そして、その「怒り」を共有する保護者、地元住民、市職員が、どんどん、監理委員会の出した結論に対して、あらゆる方法を駆使して「異議申し立て」をしていいと思う。それは、「子どもの人権を守る」という面から見ても、いま必要なことのように思う。
一方、現在の青少年会館施設のうちグランドや体育館については、一般スポーツ施設と異なる位置づけを行う必要性に乏しいので、一般利用がさらに推進されるよう、公募による指定管理を導入し、本市派遣職員の派遣を引き上げるべきである。
住友コメント:この結論も、「論理の飛躍」「付け焼刃な結論」でしかない。
まず、青少年育成のなかでの「スポーツ活動」の位置づけを考えると、青少年会館の各事業の展開と、会館が持つスポーツ施設とを分けて考えることはできない。例えば、「課題を抱える青少年」が相談活動のなかで「仲間づくり」の必要性に気づき、「スポーツ活動」に参加することを通じての「社会参加」を果たしていく、そんな道筋だってあるからである。ある意味、青少年会館はスポーツ施設を併設しているからこそ、「居場所づくり」や「社会参加支援」といった各種事業に対応できるわけである。したがって、そのような重要な拠点施設を「廃止」するという方針を出すのは、まさに、青少年会館が現在展開している諸事業の中身が「わからない」からいえることである。
それから、青少年会館にいる市職員は、そこに集う子どものケースによっては、児童相談所や市教委の学校教育部門、さらには就労支援等の多様な市の機関との「連携」という仕事を担ってきた。こういう市職員のはたしてきた役割をふまえて、私などは逆に、「公募」かどうか以前に、「指定管理者制度の適用」そのものや「市職員の引き上げ」といった施策を見直す必要があると考えるのであるが。
さらに、「一般利用」が推進されるかどうかは、「公募による指定管理」の導入や「市派遣職員の引き上げ」がどうこうに全く関係ない。
それこそ、「青少年会館が特定の地域に偏在し、一般利用者にとって利便性が高いとはいえない」といったのと、同じ監理委員会である。現在も指定管理者制度が適用されているが、地域的な偏在ゆえに「利便性」ということで課題を抱えている青少年会館に、「一般利用がさらに推進されるよう、公募による指定管理を」というのは、どういう論理的整合性があるのだろうか。例えば、交通アクセス面なのか、それとも、人々の意識面なのか。いずれにせよ、なぜ青少年会館が「利便性」に課題を抱えているのか、そこの分析が必要ではないのだろうか。
ちなみに、大阪港の舞洲の体育館や野球場などのスポーツ施設には、「大阪港スポーツアイランド施設条例」というのがあって、指定管理者制度が導入されているが、こちらには市職員は派遣されていないのか。また、施設の利用度はどうなのか。それこそ「利便性」や「利用度」はいかがなものだろうか。
このスポーツアイランドは、青少年会館のようなかつての「」施策の流れを持たない、あくまでも「一般スポーツ施設」である。したがって、監理委員会での議論において、こういうほかの指定管理者制度を適用した「一般スポーツ施設」の状況などは、どれだけ参照されたのであろうか。青少年会館のもつスポーツ施設を「一般スポーツ施設」と同列におきたいのであれば、その「一般スポーツ施設」の運営状況をまず把握して、それと比較する必要があったと思うのだが。
こういった点から見ても、私などは、青少年会館に対する監理委員会の結論は「思いつきの域」を出ず、「とにかく、ここは施策がかつて行われた場所だから、消したい」「市の財政持ち出しになる事業の継続はやめたい」という、ただそれだけの論理展開しか見えないのである。
したがって、青少年会館は、青少年施策にかかる事業目的をもった条例施設と位置付ける必要は無く、一般スポーツ施設として位置づけるとともに、その他の施設については、多目的に各種事業の実施場所として幅広く活用を図ることが一層効果的である。
住友コメント:じゃあ、舞洲のスポーツアイランドは一般スポーツ施設だが、「施設条例を持つ」のはなぜか? 指定管理者制度を適用するためには、たとえ一般スポーツ施設であっても、その前提として、「これが大阪市の公共施設である」という位置づけがいるはずである。
また、「その他の施設は多目的に各種事業の実施場所として幅広く活用を図ることが一層効果的」というが、何を根拠にそういうのか。例えば、既存の青少年会館の各種事業の現状分析と、それをふまえた「多目的事業の実施施設」のモデルプランとをつくった上で、その両者を比較した上でこういうならわかるが、これだけだと「単なる思いつき」でそういったようにしか、私には具体性が乏しいので、理解できない。
また、「多目的事業の実施施設」ということでいえば、すでに青少年会館そのものが、社会教育(生涯学習)と地域コミュニティ形成、児童福祉、就労支援、ボランティア育成、人権啓発・擁護など、多面的な領域にわたる事業を展開している。青少年会館といっても、字面だけ見て、子どもや若者だけが集っている施設と思っていたら、大間違いである。そこには、地元の人々や地元外の人々など、多様なおとなも出入りしているのである。
こんな感じで、「監理委員会」の結論は、大変、問題が多いのです。
次回は、「監理委員会」の結論中、公立保育所の問題をもう一度取り上げてコメントをするので、それをまたよく読んでください。それでは、今回の「授業」はこれにて終了します(笑)。
<追記> アクセス解析によると、あるサイトからここへリンクを経由して出てこられた方がいるようですが、そのサイトを運営されている方と私とでは、ずいぶん、立場がちがいます。その点、お断りしておきます。ちなみに、そのサイトの運営者の方は、今年5月ごろ「これこそ公平・中立の立場」と私のことを持ち上げておりました。このことも、あわせてお伝えしておきます。ところで、そのサイト運営者の方、あのとき「公正・中立」と私を持ち上げた、あのコメントについて、今、どう考えているんでしょうね?(笑)