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できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

古い文献を読み直そう(その1) 子ども会は「もうひとつの柱」

2009-05-17 21:35:43 | いま・むかし

久しぶりのこちらのブログの更新になる。これまでは最近の解放運動関係の雑誌記事へのコメントだったが、今度は今から30年以上昔の解放教育関係の文献の引用から、記事を書き始めることにしたい。まずは、次の文章を見てほしい。(色の変わった部分が、引用部分である。)

解放教育の態勢は、先にも述べた。就学前の子どもたちを保育所で「皆保育」し、その上に小・中・高・大学という公教育を保障し、これを一本の柱とし、さらに別の柱として「子ども会低学年部」にはじまる校外における自治集団の育成を目指している。

わが国の労働者階級をはじめとする勤労人民の側の子どもたちの大部分は、都市・農村を問わず遊びを奪われ、遊び場を奪われ、学校と家庭をいききして、放課後はほとんどテレビにかじりつくか、塾か習い事に通って、そこでかろうじて友人に会う機会をもつような状態に追い込まれてしまっている。これではたくましい働く人間を育てることはできない。学校は主として体育・知育・美育・徳育・生産技術の基礎教育などの基本的なことがらを系統的に整理して教える場所でなければならない。子どもたちの自治的・創造的活動は、学校外の自治的集団によって育てられ、それらが相互に浸透しながら、子どもを全面的に育て上げていくことが必要なのである。

解放の目的意識が高揚したたたかいの場面では、常に子ども会が組織され、子どもたちは自治的・集団的な規律を創造しながら親集団の指導に従いつつ、しかも独自のたたかいを展開したのである。この経験は、子ども会にすでに十分にたくわえられている。(後略)

※以上は、鈴木祥蔵「解放教育の現状と構想」『講座解放教育1 解放運動と解放教育』第三部第四章、明治図書、1977年、p.217~218。

「こんな文章、知らんわ!」という人や、「何を今頃、古臭い話を持ち出してるねん?」という人も、きっといるだろうと思う。もちろん、この文章が書かれたときは私だって小学生。これを読んだのは、つい最近のことである。

だが、この文章を読んでもらえればわかると思うが、そもそも解放教育のはじまりの頃には、学校教育という一本の柱とは別に、「子どもの学校外の自治的集団形成」という観点から、解放子ども会をもう一本の柱とする構想があったということ。つまり、青少年の学校外活動や社会教育の果たす役割が、その出発点の時点では、解放教育のなかでは重要視されていたということではなかろうか。ちなみに、先に引用した章ではあまり取り上げられていないが、『講座解放教育1』の別の章では、識字教室を含む成人の社会教育も、「解放学級」という名で位置付けられている。

また、解放子ども会の組織化や、そこでの集団活動の展開が、解放運動本体の取り組みとも連動していくべきであるし、実態としてもそうなってきたという認識が、この文章では示されているように思う。実際、『講座解放教育1』の第二部は、4つの章を使って、解放子ども会や高校生の活動、さらにそれらと教育闘争との関係などが論じられている。

むしろ、この『講座解放教育1』では、学校教育における解放教育の内容の話は、「これから創造するべき話」として、第三部の1つの章で触れられている程度である。もちろん、『講座解放教育3』では、一巻全部を使って、学校での教育内容のあり方を論じている。しかし、学校での教育内容を論じたのは、このシリーズ5巻本のなかの1巻でしかない。

もしも今、ほんとうに解放教育の取り組みをふまえた人権教育のあり方を構想するのであれば、実は、子どもの学校外活動、特に解放子ども会の取り組んできたことをきちんと位置付けなければいけないのではないか。また、その子ども会活動と連携するかたちで、青年層や成人層、高齢者層の学習活動も位置付けていく必要があるのではないだろうか。そうして、学校における人権教育という柱とは別に、地域社会における人権教育、つまり、社会教育・生涯学習の領域における人権教育のあり方を、もうひとつの柱として構想しなければ、ほんとうに解放教育の取り組みをふまえたものにはならないような気がするのだが・・・・。

今月からある場で、何人かの方のご協力を得ながら、大阪市の青少年会館条例廃止後の状況把握の取り組みとは別に、大阪府内や大阪市内での解放子ども会の歩んできた道筋をふりかえる研究プロジェクトを開始した。私にとって、解放子ども会の歩みをふりかえる試みというのは、以上のような文脈で、「解放教育のもうひとつの柱」を確認する営みでもあるし、「そこから、これから先の人権教育のもうひとつの柱を見出す」営みでもあると考えている。

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