私はこの夏休みの間に、どのくらいまわれるかわからないのですが、条例廃止・事業解体から2年目を迎えた大阪市内の旧青少年会館(以後「旧青館」と略)を訪問して、今、そこで活動中の子どもや若者、地元の人たちの様子を見てこようと思っています。また、すでに2ヶ所まわってきて、今後、予定ではあと3ヶ所くらいまわってこようと考えています。
すでに見てきたところのうち、ある地区では、旧青館の部屋をきちんと確保して、毎日、地元の小中学生などを集めて子ども会活動をやっていました。そこには夏休み開始時から、平日の昼間、15~20名くらいの子どもが通ってきて、午前中は夏休みの宿題などに取り組み、午後はいっしょに映画を見たり、近所のプールに出かけたり、外で遊んだりしています。また、夏休み中には2泊3日でキャンプに行こうと計画を立てたり、あるいは、地域の祭りで模擬店を出そうと考えたりと、夏休みらしい楽しい企画もあるようです。
この子ども会では、地元の高校生たちがリーダーになって小中学生の面倒を見る一方で、地元のおとなたちが交代で有給休暇をとったり、仕事の合間を見て子どもたちとつきあっています。そして、学期中の平日午後も、高校生ボランティアや地元のおとなたちがかかわる形で、旧青館になんらかの形で部屋を確保して、子どもたちの活動が毎日、続いているとのことでした。また、この子ども会の運営にあたって、地元の学校ともいい形で協力関係ができているという話も聴きました。
このような取り組みは、かつて旧青館が事業として行ってきた「子どもの広場」活動を、地元の人たちが中心になって取り戻したかのように見えます。また、運営にかかわる財源や常時活動できる場所、活動の手伝いをするスタッフの確保などにメドがたてば、この地区では、たとえば学童保育的な活動を行うNPO団体などを立ち上げ、そこが中心になって子ども会を運営するという道もあるのではないか、と感じました。
あるいは、別の地区では、旧青館の部屋を3日間借りて、地元の中学生たちの勉強会が行われていました。集まっている人数はそれほど多くなかったのですが、高校生や大学生のボランティアに、中学生たちが、夏休みの宿題のわからない点などを聞きながら、熱心に勉強をしていました。
この中学生たちの学習会も、ただ単に学校の授業についてけるように勉強をするというだけでなく、たとえば地域の祭りで模擬店を出すとか、体験活動や社会見学的なものを企画するとか、いろんなことを考えているようです。また、学期中も平日夜に週2回程度、学習会を行っていますし、今後は人権学習の場としてもいろんな活動ができないか、検討中だということでした。大阪では府知事の提案などもあって今、「夜スペ」が話題になっていますが、こういう自主的な地元レベルでの取り組みもいいんじゃないでしょうか?
このように、大阪市内の旧青館を活用して、地元のおとなたちの動ける人々が中心になって、子どもや若者の活動がはじまっています。こういう「動き始めた人々への支援」というのが、これから、とても重要になってくるのでないかと思います。
たとえば、直接子どもたちとかかわる際のスキル・ノウハウの向上という観点から、高校生や大学生ボランティアの研修会や、中学生の学習活動のサポートにあたるスタッフ自身の学習会を開くとか。あるいは、保護者が運営の中心になっているのであれば、その保護者たちの意見交換の会を行うとか。他にも、日々の活動状況をインターネット上で配信するためのブログ作成や、活動記録をとるためのデジカメ写真の講座とか、毎月の活動案内チラシをつくるスキル向上の講座も考えられます。また、子どもたちがみんなで取り組めそうなあそびや工作、演劇、音楽その他の諸活動について、「具体的にこんなプランがあるよ」ということを学べる機会も必要でしょう。そして、毎年の活動状況について、地区間・団体間でお互いに情報交換をするような場も必要でしょうし、子ども会や保護者会を母体にNPO団体を立ち上げたいとかいう人には、その団体の立ち上げ方や運営の方法などを学べる機会も必要でしょう。
このように、実際に動き始めたおとなたちや、そこで活動中の子ども・若者たちを見ていると、「あっ、これこそ、社会教育・生涯学習の施策とか、青少年施策が引き受けるべき課題だ!」とか、「こういうのは、『人権文化のまちづくり』の施策に位置付けて、人権文化センターが取り組んだり、区民センターなどの講座でやってみたらいいんではないか?」と思うような、そんな課題を見つけることができます。
大阪市の行政当局の方にはぜひ、旧青館で活動中の子どもや若者、地元のおとなたちの様子を見ていただきたいし、そこで熱心に活動しているおとなたちの声や要望を受け止め、必要な施策の実現に向けて、努力していただきたいと思います。また、地元運動体関係者の人たちも、旧青館で活動中の人たちとかかわるなかで見えてきた課題をできるだけ引き取り、運動での取り組みに活かしていただければ、という風に思います。
でも、行政当局の人たちや運動体関係者以上に、私は、旧青館で活動中の子どもや若者、地元のおとなたちの様子を、まずは地元の学校関係者と、大阪近辺で「人権教育」や「人権施策」なるものに関心を持つ研究者たちに見ていただきたい。また、こうした人たちに、ぜひとも旧青館で活動中の人たちの話を聴いていただきたい。このところ、そういう思いが強くなっています。
大阪近辺で「人権教育」や「人権施策」なるものに関心を持ち、ほんとうに困難な状況にある人びとに対して連帯の意志を示し、「共にこの状況を乗り越えて、何か、新しい花を咲かせよう」と願うのであれば、「研究者や現場の教員にできることも、いろいろあるんじゃない? それを旧青館の現場を見るところから、地元の人たちといっしょに考えたらいいんじゃない?」という風に、少なくとも私は思います。また、そう思うからこそ、この夏休み中に、まわれる機会は限られていても、旧青館で活動中の人たちとの交流をやってみよう、と思うわけです。
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