アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

加速する軍民一体化・自衛隊の民間施設使用

2022年11月08日 | 自衛隊・日米安保
   

 10日からかつてない規模の自衛隊と米軍の共同統合演習「キーン・ソード23」が沖縄はじめ全国各地で行われます(写真右は昨年の日米共同演習)。これを契機に一気に加速しようとしているのが、自衛隊・米軍による民間施設使用による軍民一体化です。主な動きを見てみましょう。

戦闘車が公道走行…「キーン・ソード」で、陸上自衛隊の最新鋭「16式機動戦闘車」(写真左=琉球新報より)を与那国空港から陸自与那国駐屯地まで公道を走行させる訓練を計画(10月29日付琉球新報)。

民間の湾港・空港使用…「キーン・ソード」で、自衛隊が中城湾港や与那国空港を使用する計画。8日には防衛省がチャーターした民間船「はくおう」が中城湾港に接岸(7日付沖縄タイムス)(写真中は中城湾港に民間輸送船で輸送された陸自・2021年9月=琉球新報より)。

使用民間船3倍化…「有事」の際、南西諸島に自衛隊部隊・装備を輸送するため、最優先使用契約を結んでいる民間船舶を現在の2隻から6隻程度に3倍化する計画(10月28日付琉球新報)

自治体の「意識改革…政府の「有識者会議」(10月20日)で、自衛隊による港・空港使用に慎重な自治体に対し、「自治体の意識改革は、防衛力強化の重要な課題」と指摘。浜田靖一防衛相は会見で、自衛隊による民間インフラ利用を平時から広げていく必要があると主張(5日付琉球新報)。

公共インフラ会議体新設…政府は港湾や空港など公共インフラを巡る関係省庁の会議体を新たに創設する計画。防衛省や国土交通省がメンバー。自衛隊機が離発着可能な滑走路の整備など図る(6日付共同配信)

先端技術軍事転用促進の新機関…民間が持つ最先端技術の軍事転用を促進するため、2024年度にも防衛整備庁に新たな研究機関を創設する方針(5日付共同配信)。さらに、国家安全保障局(NSS)や総合科学技術・イノベーション会議、関係省庁が連携する新たな会議体を設置する方針(6日付共同配信)。

 こうした民間施設・インフラの使用拡大、軍民一体化は、軍事費膨張、敵基地攻撃、南西諸島ミサイル基地化など、自衛隊自体の増強と車の両輪です。

 とりわけ、これまで民間インフラの軍事利用に難色を示してきた自治体を巻き込もうとしていることは看過できません。

 その点でも最前線に置かれているのが沖縄です。沖縄県民には「民間空港や港湾の「軍事利用」に対する不安が根強い」(7日付沖縄タイムス)のですが、「県は「配慮」を求める一方、中止要請までは踏み込んでおらず、じわじわと自衛隊側の地ならしが進む」(同)事態になっています。

 国会でも自衛隊の違憲性を主張して増強に歯止めをかける政党がなくなり、ウクライナ情勢にも乗じた“自衛隊タブー”が深まっています。

 憲法の「戦争放棄」(第2章)に反する自衛隊が、同じく憲法の「地方自治」(第8章)を蹂躙して戦争態勢を強めようとしていることに対し、憲法の平和・民主原則を守る闘いがますます切迫した課題になっています。


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険悪化する日中関係の陰に策動強める自衛隊

2022年08月09日 | 自衛隊・日米安保
   

 日中外相会談が急きょ中止になった(4日)ことについて、日本の政府やメディアは一方的に中国を非難していますが、これは道理に合いません。
 中国側が中止を宣言した直接の主な理由は、中国の軍事演習を批判した日本を含むG7の「外相声明」(日本時間4日)ですが、もとをただせば中国の強い反対を押し切ったペロシ米下院議長の訪台(2~3日)にあります。

 言うまでもなく、アメリカも日本も、「1つの中国」を承認しています。台湾は中華人民共和国に含まれることを認めているのです。その中国政府がペロシ氏の訪台に強く反対し、バイデン米大統領にも直接要望しました。ペロシ氏はそれを承知であえて訪台し、バイデン氏はそれを容認しました。

 どちらが挑発しているかは明白です。

 さらに、ほとんど報じられていませんが、今回の日中外相会談中止をはじめ、険悪化する日中関係の陰に、日米安保条約の下で米軍との一体化を強める自衛隊の策動があることを見落とすことはできません。

 ペロシ氏が訪台した3日、「南シナ海」で米軍とインドネシア軍の大規模な合同演習(「ガルーダ・シールド」)が行われました。これにはイギリス、カナダ、オーストラリアなどアメリカの友好国計14カ国、約4300人が参加しました。中国は6月、インドネシアに直接懸念を伝えていました。

 中国が懸念するその過去最大規模の軍事演習に、陸上自衛隊が初めて参加したのです(4日の朝日新聞デジタル)。

 インドネシアの防衛専門家コニ・バクリー氏は、「この訓練は南シナ海での有事に備えた訓練だ」とし、陸自の初参加についてこう指摘しています。
「日本は今、地域の安全保障を発展させるための友人としてインドネシアに注目している。経済分野だけでなく、軍事や防衛面の協力を拡大する方法を模索していると感じる」(同朝日新聞デジタル)(写真中は連携強化を誓う米軍と海自の司令官)

 4日、自民党本部では中国の軍事演習に対する岸田政権の「申し入れ」は「表現が弱い」と批判の声が上がりました。批判の急先鋒は佐藤正久党外交部会長でした。佐藤氏の突き上げで岸田政権は、「申し入れ」の「懸念」を「重大な懸念」に変更しました(5日付沖縄タイムス=共同)。

 佐藤正久参院議員は元自衛官(最終官職は陸上自衛隊幹部学校主任教官)。安倍晋三政権で防衛政務官、外務副大臣などを歴任。その言動は常に自衛隊の利益を代弁しています。
 自衛隊の政権への影響力はこうした面でも強まっています。

 今回の中国の軍事演習で、日本の最西端・沖縄与那国島の住民が不安を募らせているとNHKなどは繰り返し報じています。しかし、「与那国島の不安」をいうなら、ここに自衛隊基地がおかれていること、さらに「日本版海兵隊」といわれる陸自の「水陸機動団」が初めて創設された(2018年3月)ことを見落とすことはできません。強行したのは安倍政権です(写真右は与那国島の自衛隊基地)。

 防衛省防衛研究所の門間理良・地域研究部長は、「もし、中国が日本と交戦するという政治的な決断を下すことがあったとすれば、与那国島に駐屯する陸上自衛隊の監視部隊をはじめ、南西諸島に展開する自衛隊は攻撃対象になります」と認めています(7日の朝日新聞デジタル)。

 日中関係を険悪化させているのは、日米安保条約=軍事同盟でアメリカに追随している自民党政権であり、その陰には軍事力が強化されている自衛隊の策動があります。その軍隊の危険性をメディアはほとんど報じません。

 外交の意思も能力もない内閣、跋扈する軍隊、体制順応を深めるメディア。日本はすでに危険な戦時国家体制に入っていると言わねばなりません。

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「戦争報道」と一体化して暴走する自衛隊

2022年06月18日 | 自衛隊・日米安保

   

 ウクライナ戦争とその報道と一体化した自衛隊(日本軍)の暴走が目立っています。今月に入ってからの主な動きを挙げただけでも次の通りです。

5日 海上自衛隊の護衛艦「あしがら」などが参加する「日米共同弾道ミサイル対処訓練」を日本周辺の海域で実施。

6日 海上自衛隊とNATO(北大西洋条約機構)の艦艇が地中海で共同訓練を実施。

11日 岸防衛相が米韓国の防衛相とシンガポールで会談し、日米韓共同訓練の再開(5年ぶり)を合意(写真左)。

11日 岸防衛相が米豪の防衛相とシンガポールで会談し、インド太平洋地域で自衛隊が米軍・豪州軍と一緒に活動する際、自衛隊が米豪の艦船などを守る「武器等防護」を行うことで合意。

16日 太平洋と接する地域を中心とした16カ国の軍の指揮官が、自衛隊の基地や駐屯地を訪れ、「離島防衛」で重視される「水陸両用作戦」(写真中)に関する訓練や装備品を視察。日米が初めて共催した国際会議の一環。

 在沖米軍トップのジェームズ・ビアマン沖縄地域調整官は、共同通信のインタビューで、「自衛隊と緊密に連携している」「自衛隊も進化の時期を迎えている。互いに学び合うため、数多くの機会がある」(16日付琉球新報)とのべ、自衛隊との一体化を誇示するとともに、そのさらなる「進化」を要求しています。

 16日の各国指揮官視察(写真右)では、陸自トップの吉田圭秀陸上幕僚長が記者会見で「多国間協力を進め、望ましい安全保障環境を醸成する」とし、ラダー米太平洋海兵隊司令官は、「抑止がうまくいかなければ戦って守る」(16日の朝日新聞デジタル)と公言。「戦って」とは戦争をして、ということです。

 一方、自民党の国防議員連盟(会長=衛藤征士郎・元防衛庁長官)は16日、国内の兵器産業テコ入れ策を盛り込んだ「提言」を岸田首相に提出。「研究開発費」を今年度の約3千億円から来年度以降「少なくとも5千億円以上、5年以内に1兆円程度」に増やすことなどを要求しました。
 「提言」の正式名称は「産官学自一体となった防衛生産力・技術力の抜本的強化について」です。

 政府が大学などを取り込んで大企業のための施策を進めることをこれまでは「産官学」共同と言ってきましたが、自民党防衛族の「提言」は、これに自衛隊を加えて「産官学自」という新たな枠組み・概念を提唱したものです。

 こうした一連の動きは、自衛隊が日米軍事同盟の枠を超え、アメリカを介してNATOや太平洋諸国との軍事一体化を強めていること(集団的自衛権を禁じる憲法のあからさまな蹂躙)、さらにすでに戦争を想定した臨戦態勢になっているという、きわめて危険な状況を示しています。

 この自衛隊の加速度的暴走が、ゼレンスキー大統領の連日の映像や米欧諸国からの武器供与を督促する「戦争報道」によって、ナショナリズムが鼓舞され、戦争への感覚がマヒされる戦時体制づくりと一体で進行しているところに、重大な特徴があります。


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「黎明之塔」参拝「報告文書」の存在が示す自衛隊の危険な実態

2022年06月10日 | 自衛隊・日米安保

   

 琉球新報は9日付の1面トップで、沖縄の陸上自衛隊(第15旅団)トップらが毎年「慰霊の日」(6月23日)未明に「黎明之塔」(糸満市摩文仁、写真中)を制服着用で「参拝」(写真左は2020年)していることについて、陸幕が「報告文書」を作成し陸幕長らに回覧していた事実を報道、「私的な行動」としてきた陸自・防衛省の「主張が揺らぐ」と断じました。

 「黎明之塔」は沖縄戦で15万人を超える住民を巻き添えにした帝国日本第32軍の牛島満司令官と長勇参謀長(いずれも南京大虐殺の当事者)をまつったものです。

 「報告文書」の有無にかかわらず、「黎明之塔」への旅団長らの「参拝」が自衛隊の組織的行動であり、帝国日本軍を美化する行為であることは明白です。その点では新たな驚きはありませんが、注目したのは今回の件に関する小西誠氏(軍事評論家・元自衛官)のコメントです。

 小西氏は、「「参拝」について情報共有していたということは、陸幕が、組織として隊員の行動を監督していたことになる」としたうえで、こう指摘しています。

「「黎明之塔」への「参拝」が、空自、海自では行われず、陸自の第15旅団だけが毎年実施しているということは、部隊の「伝統」になっているのだろう。陸幕が、こうした慣例化した部隊の行動を組織として是認しているということにもなる。…近年、いわゆる制服組の「現場」の権限の肥大化が顕著で、今回の件もその典型的なケースだ」(9日付琉球新)

 「制服組の「現場」の権限の肥大化」が具体的にどのようなものかは分かりませんが、小西氏はそれが「顕著」に進行している情報を入手しているのでしょう。これは「文民統制」という建前が公然となし崩しにされ、「現場」部隊の「権限」が肥大化していることで、きわめて重大です。

 こうした自衛隊(軍隊)の権限強化が、日米軍事同盟(安保条約)による米軍との従属的一体化の深化、軍事費の大幅拡大(「今後5年で2倍化」)、さらに「ウクライナ戦争」に乗じたNATO(北大西洋条約機構)との「連携強化」など、一連の戦争国家化政策と一体となって進行しているところに、かつてない危険な実態があると言わねばなりません。

 なお、琉球新報の記事は「「参拝」は2004年から実施」としていますが、これは正確ではありません。沖縄タイムス(2021年5月30日付)によれば、最初に行われたのは1976年です。しかし批判を受けていったん頓挫。それが復活したのが2004年です。

 復活させたのは、君塚栄治・第1混成団団長(当時)。君塚氏は強烈な天皇信奉者です(2021年6月22日のブログ参照https://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20210622)。

 そして、君塚氏が「参拝」を復活させた2004年とは、陸上自衛隊が初めてイラクに派遣され(1月9日)、「有事関連7法」が成立し(6月14日)、沖縄国際大に普天間基地の米軍ヘリが墜落した(8月13日)年です。

 それらはすべて連関しており、自衛隊の「黎明之塔」参拝の意味を考える上で見落とすことはできません

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国政の最大問題は軍事費の異常膨張

2021年12月09日 | 自衛隊・日米安保

     
 人々が「新型コロナウイルス」の不安に駆られ、メディアがコロナ報道に集中している中、重大問題が無風状態で通過しようとしています。軍事費の異常な膨張です。
 臨時国会で議論されるべき国政の最大問題は、「10万円給付」ではなく、まして「文書交通費問題」などではなく、軍事費膨張問題です。

 岸田政権が提出した補正予算案で、軍事費は7738億円にのぼっています。補正予算としては過去最大。その主な内容は、ミサイルなど新規主要兵器を前倒しで取得するもので、補正予算としてはきわめて異例・異常です。

「最も多いのは装備品の複数年にわたる「分割払い」を前倒しで支払う経費で、4287億円を占めた。今回の特徴は、新規主要装備品の取得費用だ。海上自衛隊の哨戒機「P1」3機(658億円)地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」改良型(441憶円)、航空自衛隊の輸送機「C 2 」1機(243億円)など、(いずれも契約ベース)。いずれも22年度予算で取得を目指していたが、前倒しで計上した」(11月26日の朝日新聞デジタル)

 防衛省はすでに来年度予算の概算要求で5兆4000億円を計上しています。補正で「前倒し」したからといって概算要求を減額するわけはなく、軍事費は5兆4000億円に7738憶円が上乗せされることになります。

 この異常な軍事費膨張の根源は、岸田首相が所信表明で強調した「日米同盟の一層の強化」であり、米バイデン政権の圧力です。バイデン大統領は岸田氏承認直後から軍備拡張を要求しました。
「首相就任直後の電話会談で…バイデン氏は…防衛力見直しの着実な進展に期待を示した」(11月28日付共同配信)

 コロナ禍で暮らしや営業が大打撃をうけ、貧困が深刻化している中、平和に逆行する最大の無駄遣いである軍事費の膨張は絶対に座視できません。

しかし、国会ではこの問題がまともに議論・追及されることはありません。

 岸田首相の所信表明に対する代表質問(8日)で、立憲民主の新代表・泉健太氏は、約30分質問しましたが、軍事費問題にはひとことも触れませんでした。「敵地攻撃能力」問題にも触れませんでした。

 立憲民主はもともと「日米安保支持」が基本方針ですが、軍事費の異常な膨張に歯止めをかけることさえもしない、できないのです。これが「野党第1党」の実態です。

 自民党の茂木敏充幹事長が代表質問で、「日米同盟の強化」を何度も口にし、「防衛力の強化」「敵地攻撃能力保持」を強調したことときわめて対照的です。

 ところで、岸田首相の所信表明の全文を新聞で読んで、目を疑いました。岸田氏は演説をこう締めくくっていました。

「国の礎は「人」です。…医療、観光、農業、保育、被災地、自衛隊。…果敢に挑戦をし続ける。このことにより、日本は、大きく変わることができる」

 医療や保育などと並べて「自衛隊」=軍隊を「日本を大きく変える」「国の礎」として挙げたのです。敗戦後の国会演説で、自衛隊=軍隊をこのような文脈で称賛した首相がかつていたでしょうか。

 岸田氏の異常な「自衛隊」賛美と、日米軍事同盟の強化、軍事費の膨張は、決して無関係ではありません。


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強まる沖縄の米軍・自衛隊一体化、そして土地規制法

2021年11月16日 | 自衛隊・日米安保

     
 沖縄で急速に進行している自衛隊の民間施設使用。それと同時並行的に強まっているのが米軍と自衛隊の一体化です(写真中は自衛隊と米軍の合同演習=防衛省サイトより)。

 「航空幕僚監部(空自)は11日、宮古島と石垣島の北方空海域で、米空軍と9日に共同訓練を実施したと発表した。…訓練域に設定されていない空海域での初めての実施尖閣諸島に近い空海域での初めての訓練」(12日付琉球新報。写真左は防衛省がプレスリリースした写真で、与那国島で東シナ海を眺める自衛隊と米軍のトップ=12日付琉球新報)

 在沖米軍トップの四軍調整官ジェームズ・ビアマン中将は就任式典後の記者会見で、「沖縄は自衛隊と演習や潜在的な作戦を遂行する上で理想的な位置にある」(10日付琉球新報)と、沖縄での米軍と自衛隊の一体化の狙いをあけすけに述べています。

 こうした中、全国で行われる自衛隊統合演習(19日~30日)に、「米軍も初めて参加」(12日付琉球新報)します。沖縄県内での米軍参加はないとされていますが、逆に、「自衛隊は米軍基地や訓練施設の一部も使用する方向で調整を進めているという。…訓練目的で自衛隊による米軍基地の使用が進むと、沖縄全域が日米の訓練場と化していく懸念も一層高まる」(11日付琉球新報)のは必至です。

 こうした沖縄における米軍・自衛隊一体化の加速は、日米軍事同盟(安保条約体制)全体が新たに危険な段階に入ろうとしていることと切り離せません。(写真右は「日米同盟の強化」を宣言した4月の日米首脳会談)

< 政府、安保戦略を来年に初改定 「敵基地攻撃」の明記検討 >
 こんな大見出しの記事が9付の日経新聞に載りました。「政府は外交・防衛の基本方針「国家安全保障戦略」の改定に向け、与党との協議を月内に始める。…日米同盟の強化を見据えた安全保障の議論に乗り出す」。

 2013年に制定された同「戦略」が改定されるのは初めて。「想定される議論のポイント」は、「敵基地攻撃能力の保有明記」「防衛費増額の方向性」「宇宙、サイバーなど新領域の防衛」などだと報じられています。

 こうした一連の自衛隊の行動拡大、米軍との一体化に対して、基地周辺地域はじめ市民の批判・反対運動が強まることが当然予想されます。現に沖縄では宮古島、石垣島などでそうした状況が続いています。この市民運動を弾圧するための手段が「土地規制法」です。

「この法律は、戦争施設などの周辺や国境離島から基地監視活動や基地反対運動をする住民を排除して基地の中を国民の目から覆い隠し、これらの活動をする者を「安全保障に反する者」として規制することで、戦争する国づくりを進める」(仲松正人弁護士、10月21日付沖縄タイムス)

 戦争法(安保法制)と「土地規制法」は一体であり、その廃止は急務です。この2つの悪法の廃止を日米安保条約廃棄の世論拡大につなげ「戦争する国づくり」に歯止めをかけていくとは、日本の喫緊の課題です。

 


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コロナ禍「自衛隊派遣」の誇大報道と新型イージス艦導入

2020年12月10日 | 自衛隊・日米安保

    

 9日正午のNHKニュースは、トップで「自衛隊医療チームが旭川に到着」を、そして次に、「防衛省、新型イージス艦2隻建造の案」を報じました(写真左、中)。コロナ禍での自衛隊派遣の直後に新たな軍備増強。見え透いた図式にあきれ返ります。新型イージス艦2隻建造の費用は「4800億~5千億円以上かかる」(11月25日付中国新聞=共同)と試算されています。

 旭川へ派遣された自衛隊の医療チームは、看護官ら5人のチームを2チーム計10人、期間は21日までの11日間。医療スタッフ不足の深刻な現状では焼け石に水です。しかもやることは「診察時の補助や食事の配膳など」(9日の報道)。旭川の現場スタッフは、「(自衛官には)ゴミ捨てだけでも…」(8日の報道ステーション)と言っています。それなら別に自衛官でなくてもできるでしょう。

 もちろん、たとえ少人数・短期間で「配膳」や「ゴミ捨て」でも、支援の手はないよりあった方がいいのは当然です。しかし、この間繰り返されているNHKはじめメディアの「自衛隊派遣」報道は明らかに過大評価・誇大報道です。

 しかも、自衛隊は自らがクラスターになっているのです。
 「北海道は2日、道南西部の離島・奥尻島の奥尻町にある航空自衛隊奥尻島分屯基地で新型コロナウイルスのクラスターが発生したと発表した。感染者は20~40代の自衛官計17人」(12月3日付産経新聞)。軍隊である自衛隊は感染の温床です。「支援」の前にまず自らの感染対策に万全を期すべきでしょう。

 「自衛隊派遣」の誇大報道がもたらすものは何か。それは「自衛隊は医療現場を助ける正義の味方」という幻想と、政府のコロナ対策の無為無策・失政の隠ぺいです。

 第1に、現在の医療従事者不足は、歴代自民党政権が新自由主義の下で医療・福祉体制を大幅に削減してきた結果にほかなりません。
 「行財政改革の影響を受け、保健所の設置数は20年度までの約30年間でほぼ半減。常勤職員も1995年度の約3万4千人から6千人減った」(6月28日付中国新聞=共同)
 「自衛隊派遣」はその政府の根本的責任を覆い隠します。

 第2に、コロナ禍が発生して以降も、政府は現場の実態を無視し、関係者の切実な声に耳を貸そうとしてきませんでした。
 日本看護協会常務理事の鎌田久美子さんは8月の時点でこう警鐘を鳴らしていました。
 「業務逼迫はコロナ流行以前にも既に指摘されていたが、人員の問題は放置されていたと言って過言ではない。…今は何とか持ちこたえているが、このままでは第2波、第3波に到底耐えられない。都道府県の看護協会と連携して自治体に人員確保を要望したい」(8月15日付中国新聞=共同)
 今日の医療現場の窮状は、こうした当事者の声を無視してきた安倍・菅政権が招いたものです。

 第3に、これほど深刻な状況になっているにも関わらず、菅政権はいまだに「GOTOキャンペーン」を止めようとしていません。医療崩壊寸前で自衛隊派遣を要請せざるをえなかった旭川への「GOTOトラベル」も中止していません。
 「GOTO」を続けながら自衛隊を派遣するのは矛盾も甚だしいと言わねばなりません。「GOTO」は自衛隊の出番をつくるためのものでしょうか。

 第4に、これが最大の問題ですが、「正義の味方・自衛隊」キャンペーンは、軍隊である自衛隊の本質を覆い隠し、6年連続5兆円を超える軍拡への批判・軍事費削減を求める声を抑え、日米軍事同盟のいっそうの強化へ道を開きます。その重大性はいくら強調してもしすぎることはありません。

 今回、コロナ禍での自衛隊派遣の陰で新型イージス艦2隻、さらに敵地攻撃能力をもつ「スタンド・オフ・ミサイル」(来年度予算335億円)導入が決定・表明され、それがセットで大きく報道されたことは、政権とメディアが一体となって繰り広げる自衛隊賛美報道がいかに危険であるかを絵に描いたように示したものです。

 


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コロナ禍で市民社会に浸透図る自衛隊

2020年11月07日 | 自衛隊・日米安保

    

 アメリカの恥部を露呈している大統領選。その勝敗を興味本位で眺める前に、「日本経済」にどう影響するかというメディアが煽る関心の前に、私たち日本人には、アメリカとの関係で考えねばならない重大な問題があるのではないでしょうか。

 「土のうや命綱 自衛官に学ぶ 尾道の〇〇中で講座」。先日の中国新聞(1日付)にこんな見出しの記事が地方版に載りました(写真中)。「自衛官による防災出前講座」です。この日(10月31日)は「陸上自衛隊第13施設隊と自衛隊広島地方協力本部の計15人が講師」。15人の迷彩服(戦闘服)を着た自衛官(軍人)が中学校で「講座」を行ったのです。

 「自衛官の出前講座」は広島市内の学校でも行われたと以前ローカルニュースで見ました。広島県内の各地で行われているようです。「校外学習」として児童・生徒の方から自衛隊基地へ出向くケースも少なくないようです。

 自衛隊の学校への進出、子どもたちとの接近は、もちろん、広島県だけの問題ではありません(写真左は水害に遭った学校を掃除する自衛隊)。

 住民の反対を押し切って自衛隊ミサイル基地の建設が進められている沖縄・宮古島では9月はじめ、市内の3つの小学校で修学旅行に陸上自衛隊基地を訪れる計画がありました(9月5日付沖縄タイムス)。「市内の旅行社と学校が協議して決めた」(同)ものですが、幸い「保護者らの苦情などから予定を変更し、旅程から外した」(同)といいます。

 自衛隊が浸透を図っているのは学校だけではありません。

 コロナ禍における島根原発の防災訓練が10月28日、島根県と鳥取県の合同で行われましたが、ここに自衛隊幹部が参加しました(10月29日付中国新聞)。

 10月にクラスターが発生した北海道では、県のコロナ対策会議に自衛隊幹部が参加しているもようが映像で流れました(写真右)。

 これらは最近新聞やテレビで目にしたものだけですから、氷山の一角にすぎないことは明らかです。自衛隊の学校・子どもたちへの接近、さらに自治体へのコミットが全国的に広がっていることは間違いないでしょう。

 こうした状況はもちろん「コロナ」以前からありましたが、コロナとの関係でとりわけ見逃せない問題があります。

 1つは、コロナ禍で非常事態宣言も発せられるなど社会不安が広がっている中、自衛隊がそれに乗じて存在を浸透させていることの意味です。社会不安と軍隊の結合です。

 もう1つは、コロナ禍は私たちにこれまでの政治・社会のあり方を抜本的に見直すことを求めており、その最大の課題は軍事費の削減・撤廃、軍事同盟・軍事ブロックの解消です。自衛隊の社会への浸透策動は、これに真っ向から逆行するものと言わねばなりません。

 自衛隊は憲法違反の軍隊です。いまでは年間軍事費が5兆円を超える世界有数の軍事組織に膨張しました。それが日米安保条約(日米軍事同盟)によるアメリカ追従の軍隊としての膨張であることは言うまでもありません。アメリカからの要求・圧力は、だれが米大統領になろうと、今後ますます強められることは明白です。

 コロナ禍での米大統領選を目の当たりにして、私たちがやらねばならないことは、日米安保・軍事同盟の解消であり、それに向かって政治・社会の舵を大きく切り直すことではないでしょうか。


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宇宙軍の発足と国立天文台の英断

2020年06月16日 | 自衛隊・日米安保

    

 「コロナ禍」での安倍政権の火事場泥棒は、辺野古新基地建設工事再開(12日)だけではありません。あまり注目されていない(メディアが大きく扱っていなし)重大な問題が、自衛隊の宇宙軍(「宇宙作戦隊」)の発足です(5月18日、写真左)。宇宙の専門部隊は日本で初めてです。
 発足時の隊員は20人ですが、河野太郎防衛相は、「小さく生んで大きく育てる」(5月15日の記者会見)と公言しています。

 最大の問題は、日米安保条約によるアメリカとの従属的軍事一体化が宇宙にまで拡大することです。

 自衛隊はすでに2016年から「宇宙監視」に関する米戦略軍主催の多国間机上演習に毎年参加しています。「宇宙作戦隊」の発足により「宇宙情報」を米軍と共有するシステムを2023年度から運用させる方針です。
 米軍は2019年12月、陸・海・空と並ぶ独立軍として宇宙軍を1万6千人規模でスタートさせています。自衛隊の「宇宙作戦隊」がその傘下に入ることは明白です。

 こうした米軍との一体化によって、憲法が禁じている集団的自衛権行使が宇宙にまで拡大することになります。
 河野防衛相は記者会見(5月15日)でその点をきかれ、「特に現在、憲法上云々ということはない」としながら、「日米の詳細な話の内容については差し控える」と答弁を拒否しました(防衛省HPより)。

 もう1つ重要な問題は、「宇宙作戦隊」が「JAXA(宇宙航空開発機構)としっかり連携していく」(河野防衛相、5月15日の会見)としていることです。
 この背景には、政府・防衛省が研究費助成をエサに、大学や研究機関を傘下に置き、科学技術の軍事転用を制度化している問題があります。2016年度から始まった「安全保障技術研究推進制度」です。

 防衛省の外局・防衛装備庁が研究課題を提示し、それに応募した大学や研究機関を審査し、採用されたものには年間1千万円~数億円の研究資金を出す。その研究成果を防衛省が軍事転用する、というしくみです。日本学術会議は2017年に、「政府による介入が著しく問題が多い」と批判する声明を出しています。

 JAXAはいち早くこの制度に応募し防衛省から助成を受けています。ほかに大学では東京理科大や東京農工大、研究機関では理化学研究所、企業では富士通、パナソニックなどがこの制度に参加しています。
 「宇宙作戦隊」がJAXAとの関係を緊密化していくことにより、こうした科学技術の軍事転用がいっそう促進されることになります。危機的状況です。

 そんな中、国立天文台など9つの研究組織でつくる自然科学研究機構が、同制度への「不参加を決めた」との報道がありました(7日付中国新聞=共同)。
 国立天文台(写真右)は防衛省にとって魅力的な組織です。天文台内部から防衛省の助成制度に参加すべきだとの意見が出たこともあります。国の交付金が削られ、研究費や人件費が不足しているからです。政府による兵糧攻めです。

 それでも同研究機関は防衛省に従属することを拒否しました。「多くの科学者が関わる自然科学研究機構が不参加を決めたことの意義は大きい」(小寺隆幸・軍学共同反対連絡会事務局長、7日付中国新聞)と言えます。まさに英断です。

 「コロナ禍」で医療・福祉体制の強化が切実に求められています。国の予算(税金)をどこに振り向けるのか。科学技術を何に使うのか。軍事か平和・医療・福祉か。その選択が「宇宙作戦隊」の発足によって改めて突き付けられています。


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暴走する自衛隊と消費税増税

2018年10月20日 | 自衛隊・日米安保

     

 安倍首相は14日の自衛隊観閲式で、「すべての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えるのは、今を生きる政治家の責任だ。私はその責任を果たしていく」と軍服姿の自衛隊員たちを前に大見得を切りました。

  産経新聞(15日付)はその自衛隊観閲式のニュースと並べて、”これが安倍首相のいう「環境」だ“というように、驚くべき記事を載せました。「自衛隊ジブチ拠点恒久化 防衛省方針 海賊対処終了後も活用」(写真右)
 防衛省が、「海賊対処」を名目に「自衛隊唯一の海外拠点地」としてアフリカ東部のジブチに置いている拠点(自衛隊基地)を、一時的なものでなく恒久的なものにする、というのです。自衛隊(日本軍)の恒久基地がアフリカ東部にできるというわけです。

 その目的は、「『一帯一路』を推進し、ジブチに初の海外軍事基地を設けた中国に対抗する狙いもある」「安倍晋三首相が提唱し、一帯一路に対抗する意味合いも強い『自由で開かれたインド太平洋戦略』でジブチを西の門柱にできるか試金石となる」(同産経新聞)。米軍との従属的一体化をすすめている自衛隊が、アメリカの対中国戦略の一翼をになう軍事基地をジブチに置くというわけです。

 しかも、「恒久化にジブチ政府の同意を得るために、自衛隊装備品の無償譲渡と整備支援に着手することに向け年内に調整に入る」(同)。ジブチ政府の許可を得るために自衛隊装備品つまり兵器を譲渡するというのです。これは政府の手による武器輸出にほかなりません。

 「専守防衛」「極東条項」「武器輸出禁止」など死語だといわんばかりのやりたい放題。ついに自衛隊はアフリカに恒久的基地を持つ軍隊になろうとしています。

 安倍首相は観閲式でさらに、ことし12月改定する「防衛計画の大綱」についてこう述べました。

これまでの延長線上ではない、数十年先の未来の礎となる防衛力のあるべき姿を示す。…(宇宙、サイバー、電磁波などをあげ)新たな分野で競争優位を確立できなければ、この国を守り抜くことはできない」
 かつてない大軍拡の宣言です。

 観閲式の翌15日、安倍政権は臨時閣議で、消費税を2019年10月から10%に引き上げることを正式に確認しました。14日と15日のこの連係はけっして偶然ではないでしょう。

 安倍政権は消費税増税の名目に「全世代型社会保障」など聞こえのいいことを言っていますが、本音は大軍拡の財源確保です。軍備に予算を回せば社会保障に穴が開くのは当然で、その穴を増税で埋めようとするにすぎません。 

 地元(秋田、萩)住民の反対を押し切って配備を強行しようとしているイージスアショア(地上配備型迎撃ミサイル)は「2基で6000臆円」(7月23日付産経新聞)。「ジブチ基地恒久化」が現実になればその費用も膨大です。これに安倍首相が宣言した「防衛計画の大綱」見直しによる、宇宙・サイバー・電磁波など「新たな分野」への資金投入。アメリカ製兵器の売り込みに懸命のトランプ大統領との同盟関係で、この先どれだけ軍事費が膨らむか分かりません。

 日本の軍事費はすでに5兆円を超え、史上最大になっていますが、岩屋毅防衛相は就任早々、「従来より充実した防衛費をいただかなければいけない」(5日付中国新聞=共同)と公言しています。

 繰り返しますが、消費税率の引き上げは大軍拡のためです。憲法違反の軍隊である自衛隊が、アメリカ製の兵器を大量購入し、米軍と一体となって海外で戦争をするための大増税です。

 しかし、消費税と軍拡(自衛隊増強)のこの関係に警鐘を鳴らすメディアは(「しんぶん赤旗」も含め)皆無です。
 沖縄を含め、日本全体を覆っている“自衛隊タブー”を打破しなければなりません。それは日本だけでなく東アジアの平和と民主主義にとって死活的に重要な問題です。


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