アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「自衛隊増強阻止」を沖縄県知事選の争点に

2018年07月05日 | 自衛隊・日米安保

     

 「県内に陸自補給拠点 防衛省検討 勝連分屯地が有力」。7月2日付の沖縄タイムスが1面で報じました。

  その内容は前日(7月1日)の産経新聞が1面トップで大きく報じたものでした(写真左)。

 「防衛省が、中国による南西方面の離島への侵攻に備え、弾薬や燃料などの物資を集積しておく陸上自衛隊の補給処を初めて沖縄県内に設置することが30日、分かった。
 前線補給拠点と位置づけ、離島奪還作戦を担う水陸起動団や、中国海軍艦艇を警戒する地対艦ミサイル部隊が実効的に対処するには不可欠と判断した。沖縄本島中部の陸自勝連分屯地(うるま市)に置く案が有力となっている」(1日付産経新聞)

 安倍政権になって、さらに「集団的自衛権」を容認した戦争法(安保法制)が強行されて以降、沖縄への自衛隊配備増強が顕著です。主なものを挙げてみます(沖縄タイムス参照)。

 <離島>
 ●与那国島…航空機や艦船をレーダーで監視する「沿岸監視部隊」を配置
 ●宮古島…警備部隊、地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊の配備に向け工事開始(来年3月までの配備目論む)
 ●石垣島…宮古島と同様の配備を計画

<沖縄本島>
 ●陸自・日本版海兵隊「水陸起動団」(写真中)2個連隊(長崎県)の補給を想定
 ●陸自・「水陸起動団」3個連隊目を米軍キャンプ・ハンセン(本島中部)に配備計画
 ●陸自・地対艦誘導弾(SSM)の新たなミサイル部隊配備計画
 ●陸自・第1混成団を第15旅団に”格上げ“
 ●空自・那覇基地F15戦闘機部隊を2個飛行隊に倍増、約40機態勢で第9航空団を編成

 日米安保条約と戦争法によって自衛隊と米軍の一体化(自衛隊の従属化)はますます強まっています。こうした自衛隊増強が沖縄をふたたび戦場にする危険を強め、東アジアの平和と安定に逆行することは言うまでもありません。

  しかし、「本土」の「世論」は対米軍以上に自衛隊に対する警戒・批判が鈍いのが実態。それは沖縄もけっして例外ではありません。

  例えば、冒頭の記事を掲載した沖縄タイムスは、4日付で「軍事要塞化を危惧する」と題した社説を掲げましたが、「自衛隊の増強計画について政府は『抑止力を高める』と強調するが、緊張を高める可能性もある」として、配備増強およびその根底にある「抑止力」論を明確には批判していません。

  また同社説は、「防衛省が説明責任を尽くさず進めるのは、とうてい納得ができない。きちんとした説明を求めたい」といいます。しかし、防衛省(軍隊)が兵器配備に関して住民(国民)に明確な説明をしないのはこの問題だけではありません。それは軍隊の属性です。

  例えば、いま「本土」の秋田市と萩市(山口県)に設置を強行しようとしているイージス・アショア(地上配備型迎撃システム)についても、防衛省は度重なる「住民説明会」で住民の疑問・不安にはなんらまともに答えていません。

  4日夜のNHK「クローズアップ現代プラス」は米軍がイージス・アショアの設置を強行したポーランド(レジコボ基地)の例を報じました。そこでも住民は同基の設置に伴って様々な生活上の「規制」をかけられ、たいへんな犠牲を被るようになりましたが(例えば風力発電の高さ制限など)、その内容が住民に明らかにされたのは、設置が決まってからでした。設置が決まるまでは内容を明らかにしないのが、米軍が文書で明記していた基本方針です(写真右)。

  住民への「説明」はもちろん必要ですが、「説明」すればいいというものではありません。どのように「説明」しようと、戦争のための武器・兵器の設置・増強は絶対に許されません。

  沖縄で自衛隊増強に対する反対・阻止の声・行動が弱いのは、県政トップの翁長雄志知事がそれを容認していることとけっして無関係ではありません。翁長氏はこれほど問題になっている離島・本島の自衛隊増強に反対していません(翁長氏も「説明責任」は口にします)。

  沖縄は4カ月後に最大の政治戦である県知事選を迎えます。知事選では、「辺野古新基地絶対阻止」とともに、「自衛隊増強断固阻止」を大きな争点とすべきです。
 そして、「民主・革新」陣営は、自衛隊増強に明確に反対する候補者を擁立すべきです。


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「ミサイル防衛」は「拉致問題言及」とのディールか

2018年06月28日 | 自衛隊・日米安保

     

 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)とアメリカの会談(6月12日)によって、朝鮮半島情勢は大きく変わろうとしている時、それに逆らう言動をしているのが日本の安倍晋三首相です。

 韓国のハンギョレ新聞(電子版・6月25日付)は、「朝鮮半島和解ムードにも『ひとりMD強化する安倍』」のタイトルで、「歴史的な朝米首脳会談で北朝鮮の安保脅威が顕著に減ったにもかかわらず、日本政府は『ひとりで』ミサイル防衛(MD)網の強化に出ている。日本国内でも膨大な金をかけてむだな事業を展開する必要があるのかという指摘が出ている」と報じました。

 安倍首相は6月18日の参院決算委員会で「イージス・アショア」(地上配備型迎撃システム)について、「真に必要な防衛力は今後も強化を図っていく必要がある」(19日付中国新聞=共同)と、あくまでも導入を強行する考えを強調しました。

 安倍政権は「イージス・アショア」を2023年までに山口県萩市(陸上自衛隊むつみ演習場)と秋田県秋田市(陸自新屋演習場)の2カ所に1基ずつ設置する計画。費用は1基約1000億円。それに伴う迎撃ミサイル(SM-3ブロック2A)の購入を加えると約1200億円。2基で計2400億円というとてつもない軍事費の出費です。

 小野寺防衛相は22日に山口、秋田両県に行き、導入計画を説明しましたが、村岡嗣政・山口県知事、佐竹敬久・秋田県知事の両知事から、「北朝鮮情勢は変わった。納得できる説明をしてほしい」(村岡氏)などと不満が表明されました。

 防衛省はこれまでも現地で住民説明会を行ってきましたが、必要性への疑問のほか、「電磁波の影響は」「農作物の風評被害が心配だ」(20日付中国新聞)など、生活上の不安から設置に反対する声が噴出しています。

 にもかかわらず、安倍政権があくまでも「イージス・アショア」の導入を強行しようとしているのはなぜか。

 もちろん、朝鮮半島・東アジアの平和・安定を忌避する安倍氏の特異な政治観・歴史観が根底にありますが、それだけではないでしょう。

 ここで、朝米会談の直前に安倍氏が急きょワシントンへ飛んで行ったトランプ大統領との会談(日本時間6月8日)を想起する必要があります。

 会談後の共同記者会見(写真右)で、安倍氏はトランプ氏が朝鮮の金正恩委員長との会談で「拉致問題」を取り上げると約束したと誇示しました。一方、トランプ氏は会見のかなりの時間を「日米貿易摩擦問題」にあて、こう言いました。

 「ボーイング社などの数十億㌦の製品を日本に購入してもらうことになる。…安倍首相はやると言った」(NHK同時通訳のメモ)

 日本のメディアはこのトランプ発言をほとんど無視しました。しかし、これこそ朝米会談を前にした日米会談の主要な内容ではなかったでしょうか。

 「ボーイング社などの数十億㌦の製品」とは、日本円で数千億円にのぼる武器・兵器装備品の購入にほかなりません。それを安倍首相は約束した。
 2基で2400億円にのぼる「イージス・アショア」の導入(アメリカからの購入)を計画通り実行することはもちろん、さらにアメリカ製の兵器を数千億円購入すること。それが安倍氏が政権維持のためにトランプ氏に懇願した「拉致問題への言及」(実際に言及したかどうかは疑わしいですが)に対するトランプ氏のディール(取り引き)ではなかったでしょうか。

  安倍氏が「ひとりで」強行しようとしているように見える「MD強化」の背景には、アメリカの兵器売り込み戦略、対米従属の日米安保体制=軍事同盟があることを見落とすことはできません。


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「日報隠ぺい」と「陸上総隊」発足ー違憲の自衛隊は解散を

2018年04月05日 | 自衛隊・日米安保

     

 陸上自衛隊のウソにウソを重ねた「日報」(イラク派遣)隠ぺいが発覚した4日、陸自創設以来の大組織改編であり「新軍部」創設ともいわれる「陸上総隊」の発足式典(写真左)が行われました。なんという皮肉・巡り合わせでしょうか。

  陸上総隊の初代司令官となった小林茂陸将は4日の会見で、「シビリアンコントロール」を強調しました(写真右)が、その直後、小野寺防衛相は、陸自制服組が昨年3月に「日報」を確認しておきながら稲田防衛相(当時)に報告していなかったことを明らかにしました(写真中)。「シビリアンコントロール(文民統制)」など絵空事であることが誰の目にも明白です。

  これはたんに「シビリアンコントロールが赤信号」(辻元清美立民党国対委員長)だという話ではありません。自衛隊という軍隊そのものの根本にかかわる問題です。
 なぜなら、「軍事機密」の隠ぺいは軍隊の属性であり、そもそも「シビリアンコントロール」とは憲法違反の自衛隊を保持するための方便にすぎないからです。

 自衛隊は「戦力不保持」を明記した憲法9条に明白に違反する違憲の軍隊です。憲法と自衛隊は共存できません。それは自衛隊の側からも認めていました。

 「警察予備隊(1951年8月発足の自衛隊の前身―引用者)時代の(入隊時の―同)宣誓書には、『私は、日本国憲法及び法律を忠実に擁護』するとあり、保安隊(1952年10月発足―同)にも、『私は、日本国憲法を擁護し、法律を遵守』するといった文面があった。しかし、自衛隊創設(1954年7月―同)の折に、『憲法擁護』の文字が削除された経緯がある」(纐纈厚山口大名誉教授、『侵略戦争―歴史事実と歴史認識』1999年ちくま新書)

 なぜ自衛隊の「宣誓書」から「憲法擁護」が削除されたのか。

 「戦後の再軍備は憲法の改悪を先取りする形で強行された。それで自衛隊創設当時、軍事や軍隊の存在を全く想定していない現行憲法に忠誠を誓うことは非合理的であるとの判断が自衛隊周辺に存在し、その結果が『憲法擁護』の削除になったと思われる自衛隊側からすれば、軍隊組織の保有を認めた新憲法の登場を待って憲法への忠誠をなそうと判断したに相違ない」(纐纈氏、同前)

 「宣誓書」問題は国会でも追及され(1973年9月19日の参院内閣委員会)、形式的には「日本国憲法」の文字は戻りました。しかし、纐纈氏は「自衛官には憲法遵守の精神や思想が隊内教育として徹底されているとは言い難い」と言います。

 纐纈氏のこの指摘は19年前のものですが、安倍首相が9条に「自衛隊」(軍隊組織の保有)を明記する改憲に躍起になっている今の状況を予見していたものと言えるでしょう。

 憲法が禁止している自衛隊が「憲法擁護」するのは矛盾、だから憲法を変えて自衛隊を「合憲」にしてくれ。それが制服組(軍人)の自衛隊発足以来の願望です。安倍首相はその声に応えて憲法を変えようとしているのです。

 方向がまるで逆です。「立憲主義」に立てば、違憲の自衛隊に合わせて憲法を変えるのではなく、憲法に合わせて違憲の自衛隊を解散させるべきであることは言うまでもありません。 

 違憲の軍隊、しかもアメリカがつくった警察予備隊の当時から対米従属の軍隊である自衛隊は解散しなければなりません。それは東アジアの平和にとっても急務です。災害対策には救助に特化した組織(レスキュー隊)を新設すべきです。
 それが今回の「日報隠ぺい」事件からくむべき最大の教訓ではないでしょうか。

 少なくとも、「陸上総隊」は直ちに解散すべきです。今まで、海自には「自衛艦隊」、空自には「航空総隊」がありながら陸自には5つの方面隊を統括する総隊がなかったのは、戦前の教訓から、「権限の集中を懸念していた」(中村龍平元統幕議長の発言、4日のNHKニュース)から、すなわち”陸軍の暴走“の恐れがあったからなのですから。  




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被災地に迷彩服は似合わない

2017年07月11日 | 自衛隊・日米安保

        

 九州豪雨災害の救出・救援活動に、警察、消防とともに、自衛隊が大きな役割を果たしています。災害のたびに見る光景で、現地で活動している自衛隊員の奮闘は称賛に値します。

 しかし、そのことと自衛隊が組織として災害出動を行うことの是非は別問題です。

 被災地での活動に迷彩服は似合いません。ふさわしくありません。なぜなら、「迷彩服」とは、「敵の目をだますために、いろいろの色を塗って区別がつかないようにした服。カムフラージュ」(「岩波国語辞典」)だからです。迷彩服は「敵」をあざむく軍服です。被災地にふさわしくないのは当然です。

 なぜ自衛隊は迷彩服で災害活動を行うのでしょうか。それは自衛隊の基本性格にかかわる問題です。
 自衛隊法は第3条第1項でその任務をこう規定しています。「我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」。自衛隊の「主たる任務」は「防衛」の名による武力・軍事行動です。
 では災害出動は自衛隊にとって何でしょうか。同じく自衛隊法第3条の第2項にこうあります。「前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障の生じない限度において…行うこととする任務」。

 つまり、自衛隊の「主たる任務」はあくまでも軍事行動であり、災害出動はそれに「支障の生じない限度」で行われる”従たる任務”にすぎません。それが自衛隊が迷彩服で被災地に立つ理由です。

 根本的問題は、自衛隊に代わる災害救助の専門組織がないことです。なぜ歴代自民党政権は災害の専門組織をつくらないのでしょうか。自衛隊を災害出動させることによって軍隊としての本質を隠ぺいし、国民に感謝され好印象を与えるのが狙いだとしか考えられません。

 軍隊は住民を守りません。それは沖縄戦の大きな教訓です。自衛隊も、「防衛」という名の軍事行動と災害出動の二者択一を迫られる事態になったら、「主たる任務」である軍事行動を優先するというのが自衛隊法の趣旨です。

 「3・11」や相次ぐ災害を経験・見聞し、災害救助・復旧にやり甲斐・生き甲斐を感じて自衛隊に入る人は少なくないでしょう。しかし軍隊である自衛隊はそういう人が入るところではありません。

 自衛隊は憲法違反で対米従属の軍隊です。防衛省に代わる災害対策省を設置し、国内だけでなく国外の災害支援にも迅速に向かうことができる(自衛隊は原則国外の災害には出動できません)災害救援の専門組織を早急につくるべきです。
 被災地の迷彩服を見るたびに、そう痛感します。


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