アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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コロナ禍「自衛隊派遣」の誇大報道と新型イージス艦導入

2020年12月10日 | 自衛隊・日米安保

    

 9日正午のNHKニュースは、トップで「自衛隊医療チームが旭川に到着」を、そして次に、「防衛省、新型イージス艦2隻建造の案」を報じました(写真左、中)。コロナ禍での自衛隊派遣の直後に新たな軍備増強。見え透いた図式にあきれ返ります。新型イージス艦2隻建造の費用は「4800億~5千億円以上かかる」(11月25日付中国新聞=共同)と試算されています。

 旭川へ派遣された自衛隊の医療チームは、看護官ら5人のチームを2チーム計10人、期間は21日までの11日間。医療スタッフ不足の深刻な現状では焼け石に水です。しかもやることは「診察時の補助や食事の配膳など」(9日の報道)。旭川の現場スタッフは、「(自衛官には)ゴミ捨てだけでも…」(8日の報道ステーション)と言っています。それなら別に自衛官でなくてもできるでしょう。

 もちろん、たとえ少人数・短期間で「配膳」や「ゴミ捨て」でも、支援の手はないよりあった方がいいのは当然です。しかし、この間繰り返されているNHKはじめメディアの「自衛隊派遣」報道は明らかに過大評価・誇大報道です。

 しかも、自衛隊は自らがクラスターになっているのです。
 「北海道は2日、道南西部の離島・奥尻島の奥尻町にある航空自衛隊奥尻島分屯基地で新型コロナウイルスのクラスターが発生したと発表した。感染者は20~40代の自衛官計17人」(12月3日付産経新聞)。軍隊である自衛隊は感染の温床です。「支援」の前にまず自らの感染対策に万全を期すべきでしょう。

 「自衛隊派遣」の誇大報道がもたらすものは何か。それは「自衛隊は医療現場を助ける正義の味方」という幻想と、政府のコロナ対策の無為無策・失政の隠ぺいです。

 第1に、現在の医療従事者不足は、歴代自民党政権が新自由主義の下で医療・福祉体制を大幅に削減してきた結果にほかなりません。
 「行財政改革の影響を受け、保健所の設置数は20年度までの約30年間でほぼ半減。常勤職員も1995年度の約3万4千人から6千人減った」(6月28日付中国新聞=共同)
 「自衛隊派遣」はその政府の根本的責任を覆い隠します。

 第2に、コロナ禍が発生して以降も、政府は現場の実態を無視し、関係者の切実な声に耳を貸そうとしてきませんでした。
 日本看護協会常務理事の鎌田久美子さんは8月の時点でこう警鐘を鳴らしていました。
 「業務逼迫はコロナ流行以前にも既に指摘されていたが、人員の問題は放置されていたと言って過言ではない。…今は何とか持ちこたえているが、このままでは第2波、第3波に到底耐えられない。都道府県の看護協会と連携して自治体に人員確保を要望したい」(8月15日付中国新聞=共同)
 今日の医療現場の窮状は、こうした当事者の声を無視してきた安倍・菅政権が招いたものです。

 第3に、これほど深刻な状況になっているにも関わらず、菅政権はいまだに「GOTOキャンペーン」を止めようとしていません。医療崩壊寸前で自衛隊派遣を要請せざるをえなかった旭川への「GOTOトラベル」も中止していません。
 「GOTO」を続けながら自衛隊を派遣するのは矛盾も甚だしいと言わねばなりません。「GOTO」は自衛隊の出番をつくるためのものでしょうか。

 第4に、これが最大の問題ですが、「正義の味方・自衛隊」キャンペーンは、軍隊である自衛隊の本質を覆い隠し、6年連続5兆円を超える軍拡への批判・軍事費削減を求める声を抑え、日米軍事同盟のいっそうの強化へ道を開きます。その重大性はいくら強調してもしすぎることはありません。

 今回、コロナ禍での自衛隊派遣の陰で新型イージス艦2隻、さらに敵地攻撃能力をもつ「スタンド・オフ・ミサイル」(来年度予算335億円)導入が決定・表明され、それがセットで大きく報道されたことは、政権とメディアが一体となって繰り広げる自衛隊賛美報道がいかに危険であるかを絵に描いたように示したものです。

 

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