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共同通信は1日付で東京都知事選の終盤情勢を配信しました。56人の立候補者の中から取り上げたのは4人。小池百合子知事、蓮舫前参院議員、石丸伸二前安芸高田市長、そして田母神俊雄元自衛隊航空幕僚長です(1日付京都新聞)。なぜこの4人なのでしょうか。
メディアがこの4人に焦点を当てているのは告示前日に行われた日本記者クラブ主催の共同記者会見(6月19日)からです(写真左・中)。有象無象の立候補者から何人かを抽出して報じることはやむを得ませんが、なぜこの4人なのか、メディア・記者クラブの見解は説明されていません。
とりわけ違和感があるのは、田母神氏をこうして取り上げることです。なぜなら、同氏はいわくつきのウルトラ右翼だからです。その主な経歴、思想は次の通りです。
▶経歴…防衛大卒業後、自衛隊に入隊、最終階級は航空幕僚長(空将)。日本の侵略戦争を否定する「論文」を発表して更迭(2008年)。チャンネル桜の水島総らと政治団体を結成し会長に。2014年の都知事選に出馬した際の公選法違反で逮捕、18年に有罪が確定し、5年間公民権停止。
▶発言・思想…侵略戦争・東京裁判・南京虐殺を否定、「専守防衛」否定・「交戦権」の明記主張、「核武装」提唱、国会で「集団的自衛権」認める改憲主張(安倍政権の安保法より早い2008年)(以上、ウィキペディア参照)
こうした経歴・思想を持つ同氏を抽出する4人の1人に加えるのはなぜなのか。仮にメディア特有の「知名度」が理由だとしても、同氏を知っているのは極めて限定された有権者であり、「知られている」という点ではタレントの清水国明氏の方が知名度はあるでしょう。
メディアがどういう基準で田母神氏をピックアップしてきたのかは分かりませんが、それによって何がもたらされたかは明らかです。
第1に、同氏の特異な右翼思想が、「泡沫候補」のそれではなく、「有力候補の1人」の主張(政策)として報道されたことです。
終盤情勢の共同通信の記事は、「元航空幕僚長の田母神俊雄氏も精力的に街頭演説を続けている。…国防や憲法改正にまつわる持論を披露し、保守層を中心に支持を訴える」(1日付京都新聞)と報じています(写真右は5日夕のテレビ朝日ニュース)。
第2に、同氏は元航空幕僚長の経歴を前面に出し、自衛隊の広告塔の役割を果たしていることです。これが最大の問題です。
今回の都知事選の最大の特徴は、日米安保条約(軍事同盟)を深化させた「戦争(安保)3文書」(22年12月閣議決定)の下で、自衛隊と米軍の一体化、沖縄のミサイル基地化が進行している状況下における首都の知事選だということです(6月20日のブログ参照)。
その知事選において、田母神氏が自衛隊の広告塔を演じ、それをメディアが大きく報じる。それはまさに自衛隊の強化・市民社会への浸透を図っている岸田・自民党政権の戦略と軌を一にするものです。
それはメディアの無自覚な報道による結果というよりむしろ、メディア(上層部)の意図的な報道の狙いではないでしょうか。