アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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宇宙軍の発足と国立天文台の英断

2020年06月16日 | 自衛隊・日米安保

    

 「コロナ禍」での安倍政権の火事場泥棒は、辺野古新基地建設工事再開(12日)だけではありません。あまり注目されていない(メディアが大きく扱っていなし)重大な問題が、自衛隊の宇宙軍(「宇宙作戦隊」)の発足です(5月18日、写真左)。宇宙の専門部隊は日本で初めてです。
 発足時の隊員は20人ですが、河野太郎防衛相は、「小さく生んで大きく育てる」(5月15日の記者会見)と公言しています。

 最大の問題は、日米安保条約によるアメリカとの従属的軍事一体化が宇宙にまで拡大することです。

 自衛隊はすでに2016年から「宇宙監視」に関する米戦略軍主催の多国間机上演習に毎年参加しています。「宇宙作戦隊」の発足により「宇宙情報」を米軍と共有するシステムを2023年度から運用させる方針です。
 米軍は2019年12月、陸・海・空と並ぶ独立軍として宇宙軍を1万6千人規模でスタートさせています。自衛隊の「宇宙作戦隊」がその傘下に入ることは明白です。

 こうした米軍との一体化によって、憲法が禁じている集団的自衛権行使が宇宙にまで拡大することになります。
 河野防衛相は記者会見(5月15日)でその点をきかれ、「特に現在、憲法上云々ということはない」としながら、「日米の詳細な話の内容については差し控える」と答弁を拒否しました(防衛省HPより)。

 もう1つ重要な問題は、「宇宙作戦隊」が「JAXA(宇宙航空開発機構)としっかり連携していく」(河野防衛相、5月15日の会見)としていることです。
 この背景には、政府・防衛省が研究費助成をエサに、大学や研究機関を傘下に置き、科学技術の軍事転用を制度化している問題があります。2016年度から始まった「安全保障技術研究推進制度」です。

 防衛省の外局・防衛装備庁が研究課題を提示し、それに応募した大学や研究機関を審査し、採用されたものには年間1千万円~数億円の研究資金を出す。その研究成果を防衛省が軍事転用する、というしくみです。日本学術会議は2017年に、「政府による介入が著しく問題が多い」と批判する声明を出しています。

 JAXAはいち早くこの制度に応募し防衛省から助成を受けています。ほかに大学では東京理科大や東京農工大、研究機関では理化学研究所、企業では富士通、パナソニックなどがこの制度に参加しています。
 「宇宙作戦隊」がJAXAとの関係を緊密化していくことにより、こうした科学技術の軍事転用がいっそう促進されることになります。危機的状況です。

 そんな中、国立天文台など9つの研究組織でつくる自然科学研究機構が、同制度への「不参加を決めた」との報道がありました(7日付中国新聞=共同)。
 国立天文台(写真右)は防衛省にとって魅力的な組織です。天文台内部から防衛省の助成制度に参加すべきだとの意見が出たこともあります。国の交付金が削られ、研究費や人件費が不足しているからです。政府による兵糧攻めです。

 それでも同研究機関は防衛省に従属することを拒否しました。「多くの科学者が関わる自然科学研究機構が不参加を決めたことの意義は大きい」(小寺隆幸・軍学共同反対連絡会事務局長、7日付中国新聞)と言えます。まさに英断です。

 「コロナ禍」で医療・福祉体制の強化が切実に求められています。国の予算(税金)をどこに振り向けるのか。科学技術を何に使うのか。軍事か平和・医療・福祉か。その選択が「宇宙作戦隊」の発足によって改めて突き付けられています。

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