アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「渋沢紙幣」韓国市民が撤回要求、日本はお祭り騒ぎ

2024年07月04日 | 日本人の歴史認識
   

 新紙幣が発行された3日、岸田文雄首相は「新紙幣が国民に親しまれ、日本の経済に元気を与えてくれることを期待したい」と述べました。デパートは記念セール、銀行は顧客獲得キャンペーン、東京タワーは渋沢栄一にちなんで藍色にライトアップ、市民は両替に行列…。

 長野県のある町立小中学校は、渋沢ゆかりの「みそポテト」など3人にちなんだ料理を給食に出しました。学校にまで「渋沢」です。

 NHKはじめメディアは数日前から関連の話題を流し続け、朝日新聞は号外まで出しました。まさに官・民・メディア挙げてお祭り騒ぎです。

 しかし、韓国は違います。

 韓国の市民団体は渋沢紙幣に、「強い遺憾を表明し、直ちに撤回するよう」(3日付ハンギョレ新聞日本語電子版)要求しました。以下、抜粋です。

<日帝強占(植民地支配-私)期に日本の銀行を朝鮮に進出させ、植民地政策を主導した渋沢栄一の顔が日本の新紙幣に使われることについて、韓国の独立運動家と子孫・遺族の団体「光復会」は強い遺憾を表明し、直ちに撤回するよう求めた

 光復会は1日の声明で、「日帝の侵奪の張本人を貨幣の人物とする決定は、植民地支配を正当化することを狙った欺瞞的行為」だとしつつ、このように述べた。

「渋沢栄一は我が民族からの経済的収奪の先兵役を果たした第一銀行の所有者で、鉄道を敷設して韓国の資本を収奪し、利権侵奪のために第一銀行の紙幣発行を主導しつつ、貨幣に自身の肖像画を描き入れ、我々に恥辱を抱かせた張本人」

「過去の誤った行為を反省するどころか、帝国主義の蛮行を連想させる人物を使う日本政府の本音はいかなるものか」「本当に韓国との関係改善と友好増進を尊重するのなら、問題の人物の貨幣への使用を直ちに中止するよう願う」

 渋沢が設立した第一銀行は、日本が朝鮮半島に対する影響力を拡大しはじめる1878年に、釜山に支店を設立した。その後、金融・貨幣分野で日本政府の代理人役を果たし、朝鮮内で様々な特権を獲得した。特に1905年に、朝鮮の国庫金の取り扱い▽貨幣整理事業▽第一銀行券公認の「3大特権」を得てからは、事実上朝鮮の中央銀行同然の地位を確保した。渋沢は晩年、早くから朝鮮に進出した理由について「日本が朝鮮を失うことになれば、国力を維持することは困難だと判断したため」だと述べている。>(3日付ハンギョレ新聞)

 韓国市民団体の「遺憾・撤回要求声明」、ハンギョレ新聞の解説と、日本のお祭り騒ぎ。なんという落差でしょう。

 日本市民のどのくらいが、渋沢の「植民地支配の張本人」という実像を知っているでしょうか。知らないからといって政府に乗せられて「植民地支配の正当化」に加担していることが許されるものではありません。知らないことは罪です。

 メディアはどうでしょう。渋沢の実像を知らないとすればあまりにも勉強不足。知って口をつぐんでいるとすれば、メディアとしての責任放棄か政府への迎合にほかなりません。韓国市民団体の遺憾・撤回要求も、日本のメディアは無視しています。

 政府にとって不都合な事実、歴史の真実を市民に伝えることは、メディアにとって死活的に重要な責務であることを肝に銘じなければなりません。



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