角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

新たな「宝物」。

2009年09月24日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡円〕
青基調の桜&鹿プリントをベースに、合わせは紫基調の花柄プリントです。
紫系でまとめたこちらは、深まり行く秋に良く似合うと思います。やはりどちらかと言えば中高年のおばさま向きでしょうか。

「深まり行く秋」と評しましたが、今日の当地は真夏に近い暑さとなりました。車の運転は明らかにエアコンが必要で、国道105号に設置された温度計では午後3時過ぎに29℃を表示していました。今月では一番くらいの暑さじゃないですかね。

公開実演お休みの今日、国道を走っていたのは旧十文字町へ行くためでした。現在は大きな横手市に組み込まれた十文字町、ここにある「道の駅」を一度訪ねたいと思っていたからなんです。そのワケは、「農産物年間売上二億円達成」の記事を新聞で読んでいたからなんですね。

十文字町と限らず旧横手平鹿地区は、果物産地として有名です。ぶどう・りんご・梨といった代表産品のほかに、野菜も実に豊富に陳列されていました。
まず価格が安いんですよ。ナイロン袋にりんごや梨が数個入って、高いもので400円くらいでしょうか。ぶどうは一箱数百円、試食したら買わずにいられない甘さなんですね。
特に試したかったのは小さなトマト、「果物並みの糖度」というポップに誘われすぐさま買い物カゴへ。これは今晩これから食べるつもりです。

往路の車中でカミさんが言うのは、『あの文字の人、今日もいるかなぁ…』。「あの文字の人」では一体何のことなのかさっぱり分かりませんでしたが、どうやら大曲のショッピングセンターでイベント的にお店を開いている青年のようです。
昨日のシルバーウィーク最終日、三人娘を連れてカミさんがショッピングセンターを訪ね、偶然その青年とお店を見たんだそうです。

和紙に墨で文字を書く青年は、『あなたを観て言葉を書きます!!』をキャッチフレーズに、仮設の畳へ作務衣と思しきいでたちで座っていると云います。三女はそのお店と青年を見つけると、『げっ!? とーさんみたい…』。
「とーさんみたいな青年」、私の興味がそそられないはずがありません。そして逢いました、そして短い時間ながらお互いを話して来ました。

「稲葉尊治(いなばたかはる)氏」、みなさんはご存知でしょうか。路上でお客様の好きな言葉を書く青年をかつてテレビで観たことがありましたが、どうもその人物とは異なるようです。でも彼のプロフィールを見てみると、全国を歩くその道のカリスマ的人物と推察できます。
“占いを超える、詩の書き下ろし”と題した彼の「言葉」。草履職人への「詩」はこちらです。



人は、多くを抱え、未来へ、歩いていきます。
自らの、心と足で、歩いていきます。
その、人生を、助けるように、また、創ってください。

この「詩」を作ってもらう前に、お互いのことをいろいろ話し合いました。
私は角館という観光地で、日々不特定多数をお相手に草履を編みながらおしゃべりに明け暮れている。お立ち寄りになる方々は、必ずしも現在が幸せに満ちた人ばかりではない。でも草履職人と過ごすいっときは、その人の人生にほんの僅かな思い出になると信じる。
そんな私の話を聞いたあと、じっと私の眼を見つめて十秒ほども経ったでしょうか、スラスラと筆を走らせ出来上がった「詩」がこちらというわけです。

彼はこうした自身の活動を、『楽しいばかりではない』と言います。それはたとえば生業としての収益であったり、全国を渡り歩く身体的エネルギーであったりと推測するのですが、彼の場合はもっと崇高な位置に目がありました。それは「世界平和」。

『この仕事の目的はナニ?って訊かれたら、最後は世界平和ですよっ』と笑う彼。科学者になれたらまずするのは世界平和と、揺るぎもなく言うんですね。ただ現実には困難であるために、「言葉」いや「言霊」を使って人々に勇気を与えたいということなんでしょう。

大曲ショッピングセンターの会期は27日までとのこと。翌28日は自家用車で居住地の千葉県へ帰ると言います。『時間と気持ちがあったら、帰りに西宮家へ寄ってみねがっ?』の私の誘いに、『必ず行きますよっ!』。

彼が訪ねてくれる28日には、実演席のうしろに似顔絵たちと並んでこの「詩」が飾られているでしょう。草履職人に新たな「宝物」が生まれました。

コメント (4)
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