角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

サプライズ・プレゼント。

2009年09月18日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
紺基調のふくろうプリントをベースに、合わせは紺の松葉プリントです。
日増しに秋めいてくると、こうした色の濃い配色がなんとなく似合う感じがします。この組み合わせはずいぶん前から考えていたのですが、出来上がってみると想像通りお洒落な草履となりました。

米蔵スタッフへ、『この草履、素敵じゃねぇ?』と訊いてみると、『プっ』と吹き出されてしまいました。草履そのものではなく、草履職人の口から出た「素敵」という言葉が似合わなかったようです。

今月上旬一通のメールをいただいたのは、岩手県にお住まいの女性。一度試し履きをされたご経験のある女性は、敬老の日のプレゼントにおばあちゃんへ贈りたいとのご相談でした。当人にはナイショの「サプライズ・プレゼント」なんですね。

普段の発送にはクロネコヤマトのメール便を利用しているのですが、送料が格安の反面到着日時の指定ができません。そこで女性へメールを送り、だいたい敬老の日到着を睨んで昨日発送することにしました。うまいこと届いてくれれば嬉しいんですけどね。

もう一ヶ月近くも前のことです。東京からお越しのご夫婦が、実演席の丸太椅子でしばらくおしゃべりして行かれました。展示してある草履も気に入ってくださったのですが、どうしても気になるのが完売した「樺草履」だったんです。言葉だけのご説明にもかかわらず、ご主人が『どうせならそういう草履が欲しいよねぇ』。

そこで私がご提案したのは、『樺染めの布地をかき集めてみて、一足編めるようならお届けしますよ。代金も後払いで構いません。ただ期待は禁物です、その代わりもし編めたらいろんな色の組み合わせになりますから、それこそ世界に一足ですよっ』。
この言葉だけで満足してお帰りになりました。

それから何日かして、樺染めの布地をかき集めたらどうにか一足編めそうでした。しかも予想通りの4色使い、これは私も思わず『面白いっ』と言ってしまった配色です。
納品伝票に、『どうにか一足編めました。早速履いてくださいね』とメッセージを加えお届けしたものです。

それから一週間ほど経ったでしょうか、お祭りが終わった翌日の10日です。午前11時頃から眠りだして、起きたのが午後3時くらい。一階の草履作業場に降りてみると、大きな荷物が届けられています。すぐにカミさんが寄ってきて、『これ、なんの荷物?』。差出人のお名前を見て、すぐにどなたか分かりました。樺草履をお送りした東京のご夫婦なんです。

中を開けてビックリ、そこには綺麗なリボンをつけられた鉢植えのお花が入っていたんです。そしてメッセージカード、『先日は良い思い出になりました。素敵な草履を送っていただきありがとうございます。心暖まる丁寧な編みを見て感激!!色のトーンも素敵です。大切に履きたいと思います』。

こんなことを言うのもナンですが、これまでも何度かお客様から贈り物をいただいたことがありました。しかし鉢植えのお花というのは初めての経験です。私を知る人たちには、どうしても「草履職人=花」という印象はないでしょう。
そう何度もない草履職人への「サプライズ・プレゼント」、これってかなり感激するもんですね。

私の口から出る「素敵」は似合わなくても、私の手から編み出される草履はきっと「素敵」なんですよっ、エッヘン!!
コメント
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