緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

現代音楽を考える(ギターとの関連において)

2011-12-17 22:07:18 | ギター
こんばんは。
先月開催された第54回東京国際ギターコンクールのプログラムを読んでいたら、
作曲家の吉松隆氏の経歴が紹介されており、その中で吉松氏が「「現代音楽」の
非音楽的な傾向に異を唱え、調性やメロディを復活させた「新(世紀末)抒情主義
」および「現代音楽撲滅運動」を主唱」してきたとの記述がありました。
今は下火となった感がありますが、現代音楽は1960年代~1970年代にかけ
てさかんに作曲されましたね。
日本人の作曲家でクラシック・ギターの現代音楽を作曲したのは以下の方が知られて
います(私が曲を弾いたり聴いたりした方に限る)。

①野呂武男
②平吉毅州(たけくに)
③早川正昭
④原嘉寿子(かずこ)
⑤武満徹
⑥下山一二三
⑦野田暉行(てるゆき)
⑧毛利蔵人(もうりくろうど)
⑨三善晃

現代音楽の特徴は、無調、不協和音の多用、難解なリズム、作曲者の意図や心情を
感じ取り難い、といったところでしょうか。
前々回のブログで紹介した合唱曲「僕が守る」と対極をなすような音楽ですね。
現代音楽は、聴くと不快感を感じることが多いことから、好んで聴く人はあまり
いないと思います。
以前、家で現代音楽を聴いていたら家族から消してくれとクレームをつけられた
ことがあります。猫などの動物も現代音楽が流れると逃げていくとか。
私も以前は現代音楽には全く関心がなく、殆ど聴くことはなく、バリオスやポ
ンセなどのロマン的な音楽が好きだったのですが、その後日本旋法の曲に強い関心
を持つようになり、またその頃から現代曲も聴くようになりました。邦人作曲家
のギター曲を探した影響かもしれません。
今では現代音楽を聴いても殆ど抵抗はありません。むしろ面白い、というか聴いて
色々考えることが出来るところに魅力を感じます。
何でこんな音楽をつくるのかな、と考えてみるのです。
野心、難解さを競う意図、顕示欲、人間心理の負や影の部分、音楽様式や音楽理論
からの逸脱したところに何を作ろうとしているのか、など。
ロマン的な曲は、心の感覚で聴くのに対し、現代音楽は頭で色々考えて聴くという
感じかな。

ギターの現代音楽で比較的分かりやすい曲として、原嘉寿子作曲「ギターのための
プレリュード、アリアとトッカータ」があります。東京国際ギターコンクールの
課題曲にもなりました。
この曲は全体的に不協和音を多用していますが、特にアリアは恐ろしく不気味な
和音が聴けます。





普通の人はこのような和音を聴こうと思わないし、多くの作曲家はあえて不気味
な非音楽的なものは作ろうとしない。
でもこのアリアは最初は抵抗がありましたが、聴き続けていると結構、面白いと
いうか、ユーモアを感じるというか、見たくないもの聴きたくないものを感じて
いくうちに逆に親しみを感じてしまうんですね。面白い現象ですが。
下の楽譜の表現も奇抜ですが、何か人間の負の感情を表したように思えます。心地
よくはないけれど、心に残る。



下は最終楽章「トッカータ」の終末部。激しいラスゲアードの最後にタンボーラ
(ギターのブリッジの近くを右手親指の側面部で叩いて出す奏法)を入れている。



この終わり方は驚きですね。聴き手をびっくりさせる意図があるのか、奇抜な
表現を取り入れて新しい表現を示したいという気持ちが感じられなくもないが、
作者のこの曲に対する一貫した思いの帰結であることは間違いなく、むしろ
自然な表現なのかもしれません。

邦人作曲家による現代音楽は結構数多くありますが、その中でも野呂武男の
「コンポジションⅠ」や「コンポジションⅡ」は今後演奏や音楽解釈に取り組み
たいと考えています。
1960年に作曲され、1964年のパリ放送局国際コンクールで第2位に
入賞したほどの曲ですが、東京国際ギターコンクールの課題曲に取り上げられ
るまでは全くと言っていいほど陽の目を見ることなく、埋もれてしまっていた
曲です。楽譜は現在絶版です。





この曲も東京国際ギターコンクールの課題曲になりましたが、難解な曲ゆえに
コンクールでは楽譜を見ながら演奏する奏者もいました。
コンクール当日聴いた演奏は殆ど記憶に残っていないのですが、何故か「コン
ポジションⅠ」の最後のハーモニックスの部分だけは覚えていました。なんとも
いえない難解な表現です。



冒頭で吉松氏が現代音楽撲滅運動をしたという話がありましたが、現代音楽を
悪い音楽ととらえることには組しえません。
現代音楽は結構面白いし、学ぶものはたくさんあると思います。
作曲家でも三善晃氏のようにものすごく美しい合唱曲を作曲しているかと思えば
不協和音を多用した難解な現代音楽も作曲している。そのギャップに興味を惹かれ
るし、作曲家としての才能に感嘆する。
今後、聴いた現代音楽の中で印象に残るものは随時紹介したいと考えています。


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