緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

三木稔の音楽とギター・合唱曲

2011-12-10 23:48:22 | ギター
こんばんは。
昨日の夜から今日にかけてすごく寒い日でした。
金曜日の朝刊に作曲家の三木稔氏の訃報が載っていました。
三木稔氏は日本史をテーマにしたオペラを手がけるなど世界的に有名な
作曲家と言われていますが、裁判となった映画「愛のコリーダ」(大島渚監督)
の音楽を担当したことでも知られています。
また日本音楽集団という邦楽の楽団を創立し、多くの海外公演を行い、また野坂
恵子を始めとして多くのすぐれた演奏家を輩出しました。



私が三木氏の音楽に出会ったのは、10年ほど前、日本旋法の曲の魅力に惹かれて
日本旋法特に陰旋法のギター曲を探していた頃です。
当時邦人作曲家による日本旋法によるギター曲が弾きたくなり、いろいろ楽譜を
探しました。
古くからあるのは伊福部昭氏の曲ですが、ある時ギターオリジナル曲ではないの
ですが、「芽生え」という二十弦箏のための曲のギター編曲版が出ていることが
分かり、早速楽譜を買いに行きました。
この楽譜を見て初めてこの曲が三木氏の曲であり、また映画「愛のコリーダ」の
主題曲であることもわかりました。
ギターへの編曲はキューバ出身の世界的作曲家レオ・ブローウェルによるもので
す。
下の写真はブローウェル自身が演奏した「芽生え」が録音されたCDとギター
編曲譜です。






ブローウェルはこの映画を観て、日本的な美しいこの箏の曲に感動してギターに
編曲したと言われています。
この「芽生え」という曲は「箏 譚詩集 第二集」の中の1曲目であり、1976
年に作曲され、箏の第一人者であり世界的な奏者である野坂恵子氏により初演され
ています。
楽譜を買ったときには一度も聴いたことがなかったので、譜面を元にどう表現した
らよいか分からないことが多かったのですが、「愛のコリーダ」のビデオで流
れる箏の演奏を聴いて感じをつかむことができました。

野坂氏(数年前まえから野坂操壽と名乗っています)の演奏については伊福部昭
氏の曲の演奏で既に知っていたのですが、すごい演奏家です。ギターとも縁が深く
伊福部昭のギター三部作を箏で演奏しています。特に「箜篌歌」は感動的な演奏
です。

下の写真は野坂氏が三木稔の曲を4枚組のレコードに録音したもので、昭和54
年度文化庁芸術祭優秀賞を受賞した力作です。







野坂氏の若い頃の録音ですが、三木氏の曲をエネルギーに満ちた、情熱を込めて
演奏していることが分かります。

野坂氏はギターに対しても理解が深く、東京国際ギターコンクールの審査員を
務めたり、ギタリストとの共演もしています。

下の写真は鈴木一郎氏と共演したもの。



また野坂氏以外にも「芽生え」の優れた演奏として、日本音楽集団に所属する
木村玲子氏も聴き応えがあります。



ところで、三木稔氏は合唱曲も手がけており、私が聴いた中では「邦楽器と男声
合唱による「喜怒哀楽」」という曲が良かったです。



尺八や箏との共演なのですが、人間らしさをテーマにしたユニークな曲で、「喜」
と「怒」は楽しさも感じられます。「哀」と「楽」は尺八や箏の音色が非常に
日本的で美しいです。

改めて日本の伝統楽器のもつ美しい響きに感動させられます。
西洋から流れてきた音楽が氾濫する中で、このような日本古来から伝わる伝統
楽器による日本特有の旋法による曲というのは大変貴重だと感じます。
西洋の音楽が入ってくるまで、日本は1千年以上もこの日本旋法、特に陰旋法
による音楽を生み出してきたわけであり、我々日本人にとって根深いものであり
どんなに西洋の音楽に凌駕されても我々の心から切り離しがたいものを持っている
と感じます。

日本の伝統楽器による音楽を手がける作曲家が世を去り、日本旋法の曲も生み出さ
れることが少なくなってくると思いますが、三木氏が残してくれたような貴重な
曲をときに聴いてみてはどうでしょうか。
日本人が古来から積み重ねてきた心情が、自分の心のどこかにあることに気付く
かもしれません。
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