ギターの弾きやすさを決める要素としては、弦長、弦の張力、ネックの太さ、弦高などがあるが、最も影響度が大きいのは「弦高」だと思う。
弦高が0.1mm変化しただけで弾きやすさの感じ方が変わってくる。
やっかいなのは、製作された時点での弦高がその後ずっと同じ高さを維持し続けることは稀であり、変動の幅に差異はあるものの、大抵は時の経過に伴い変化してしまうことである。
これは木材という天然の素材が環境変化や使用状態により収縮したり曲がったりする性質を持っているためなのであるが、弦高が変化する原因としてあげられるの次の2つであると思う。
1.湿度や温度の変化による変動
2.弦の張力による変動
1と2の要因が連動して弦高が変動することもある。
私の持つ楽器の経験からすると、上記1による変動としてありうるのは次の3つである。
①高温多湿の環境に置かれた場合で、指板の黒檀とネックのセドロ(マホガニー)の収縮率の違いでネックが反る(順反り)ことで弦高が上がる。
②同じく高温多湿の環境に置かれた場合で、ブリッジが持ち上がる、表面板が脹らむことで弦高が上がる。
③しばらくの間(数か月)高温多湿の環境に置かれた楽器を、冷房や暖房で急激に湿度の低い環境に置いた場合、ネックが反る(順反り)ことで弦高が上がる。
以前、ネックを順反りさせてしまった楽器は、①のように6月、7月の高温多湿期においてたまたま張力の強い弦を張ったときに生じた。
また関東圏の冬場でも室内が結露で多湿(湿度70%くらい)の部屋で数カ月過ごした楽器を帰省先の北海道の実家に持って行ったときに、暖房により極度に乾燥(湿度30%くらいか)する部屋にしばらく置いたときにも順反りさせてしまった。ただしこの場合、元の環境に戻してから順反りは解消したと記憶している。
また最近、フレット浮きを修理した楽器が、梅雨時の多湿期を過ぎ、エアコンをフル稼働するようになってから順反りしてしまった。これも梅雨時の室内の湿度が70%くらいだったのが、エアコン稼働時に40%くらいまで急激に低下したことが原因と思われる。
加湿器を入れて何とか対策しているがそれでもなかなか湿度は上がってくれないものだ。
ネックが順反りしてしまうと弦高が上がるので当然それまでよりも弾きにくくなる。
とくにローポジション付近は弦の張力が強いので、押弦しにくくなるというわけだ。セーハがきつくなって、アレッ変だって感じて順反りに気が付くことが多い。
今回順反りしてしまった楽器の弦高を⑥弦の1F、3F、5F、12F上でそれぞれ測定してみた。
また、他の所有楽器数台とどの程度差異があるかも調べてみた。
測定結果は以下のとおり。
ギターA:1F上1.0mm、3F上2.0mm、5F上2.5mm、7F上3.0mm、12F上4.1mm、ネック:やや順反り
ギターB:1F上0.6mm、3F上1.6mm、5F上2.2mm、7F上2.8mm、12F上4.2mm、ネック:ストレート
ギターC:1F上0.5mm、3F上1.5mm、5F上2.1mm、7F上2.6mm、12F上4.1mm、ネック:やや順反り
ギターD:1F上0.5mm、3F上1.4mm、5F上2.1mm、7F上2.5mm、12F上4.0mm、ネック:やや順反り
ギターE:1F上0.5mm、3F上1.5mm、5F上2.0mm、7F上2.6mm、12F上3.6mm、ネック:やや順反り
ギターAはフレット浮きを修理した楽器であるが、修理後のネックは完全にストレートだった。その時点での12F上の弦高は3.9mmであった。
弦高が0.2mm高くなってもかなり弾きづらく感じるものである。
ギターAのローフレット上の弦高が他の楽器に比べて高い。よく見てみるとナットの高さが他の楽器に比べて高かった。フレット交換時に指板を調整したためであろう。
ただこの楽器は張力が弱いので弦高を低くするとローポジションで弦がびりついてしまう。そのためナットを調整するとしたらわずかしか出来ないだろう。
こうやって測定値を見てみると、1Fが0.5mm、3Fが1.5mm、5Fが2.0mm、7Fが2.5mmというのがある程度の標準的な高さなのかもしれない。
ちなみに弾きやすい楽器はギターCとギターDである。これらの楽器も当初はネックはストレートだったが、時の経過に伴いやや順反りした。
ギターBのネックは殆ど変化が無い。安定しているし、若干反ったとしてもまもなく元に戻る。
ちなみにギターを弾かないときに弦を緩めるかどうかについてであるが、私は必ず緩めている。緩めても楽器に影響は無い(影響があるという製作家もいますが)。
現代ギター社や有名楽器店で出している取扱い説明書には、楽器を弾かないときは必ず弦を緩めるように記載してある。
多くの楽器を扱ってきた楽器店の方も、弦を緩めるように勧める方が多かった。
私の場合、張力の強い弦を張ってネックを反らしてしまった経験があるので必ず緩めている。
湿度、温度の変化が大きい時期に、弦の張力が加わってネックやブリッジ付近が変化することがあるので要注意だ。
蛇足だが、今日ギターCで弾いた曲を録音してみた。
スペイン舞曲第5番アンダルーサ 2024年7月21日 夕方
弦高が0.1mm変化しただけで弾きやすさの感じ方が変わってくる。
やっかいなのは、製作された時点での弦高がその後ずっと同じ高さを維持し続けることは稀であり、変動の幅に差異はあるものの、大抵は時の経過に伴い変化してしまうことである。
これは木材という天然の素材が環境変化や使用状態により収縮したり曲がったりする性質を持っているためなのであるが、弦高が変化する原因としてあげられるの次の2つであると思う。
1.湿度や温度の変化による変動
2.弦の張力による変動
1と2の要因が連動して弦高が変動することもある。
私の持つ楽器の経験からすると、上記1による変動としてありうるのは次の3つである。
①高温多湿の環境に置かれた場合で、指板の黒檀とネックのセドロ(マホガニー)の収縮率の違いでネックが反る(順反り)ことで弦高が上がる。
②同じく高温多湿の環境に置かれた場合で、ブリッジが持ち上がる、表面板が脹らむことで弦高が上がる。
③しばらくの間(数か月)高温多湿の環境に置かれた楽器を、冷房や暖房で急激に湿度の低い環境に置いた場合、ネックが反る(順反り)ことで弦高が上がる。
以前、ネックを順反りさせてしまった楽器は、①のように6月、7月の高温多湿期においてたまたま張力の強い弦を張ったときに生じた。
また関東圏の冬場でも室内が結露で多湿(湿度70%くらい)の部屋で数カ月過ごした楽器を帰省先の北海道の実家に持って行ったときに、暖房により極度に乾燥(湿度30%くらいか)する部屋にしばらく置いたときにも順反りさせてしまった。ただしこの場合、元の環境に戻してから順反りは解消したと記憶している。
また最近、フレット浮きを修理した楽器が、梅雨時の多湿期を過ぎ、エアコンをフル稼働するようになってから順反りしてしまった。これも梅雨時の室内の湿度が70%くらいだったのが、エアコン稼働時に40%くらいまで急激に低下したことが原因と思われる。
加湿器を入れて何とか対策しているがそれでもなかなか湿度は上がってくれないものだ。
ネックが順反りしてしまうと弦高が上がるので当然それまでよりも弾きにくくなる。
とくにローポジション付近は弦の張力が強いので、押弦しにくくなるというわけだ。セーハがきつくなって、アレッ変だって感じて順反りに気が付くことが多い。
今回順反りしてしまった楽器の弦高を⑥弦の1F、3F、5F、12F上でそれぞれ測定してみた。
また、他の所有楽器数台とどの程度差異があるかも調べてみた。
測定結果は以下のとおり。
ギターA:1F上1.0mm、3F上2.0mm、5F上2.5mm、7F上3.0mm、12F上4.1mm、ネック:やや順反り
ギターB:1F上0.6mm、3F上1.6mm、5F上2.2mm、7F上2.8mm、12F上4.2mm、ネック:ストレート
ギターC:1F上0.5mm、3F上1.5mm、5F上2.1mm、7F上2.6mm、12F上4.1mm、ネック:やや順反り
ギターD:1F上0.5mm、3F上1.4mm、5F上2.1mm、7F上2.5mm、12F上4.0mm、ネック:やや順反り
ギターE:1F上0.5mm、3F上1.5mm、5F上2.0mm、7F上2.6mm、12F上3.6mm、ネック:やや順反り
ギターAはフレット浮きを修理した楽器であるが、修理後のネックは完全にストレートだった。その時点での12F上の弦高は3.9mmであった。
弦高が0.2mm高くなってもかなり弾きづらく感じるものである。
ギターAのローフレット上の弦高が他の楽器に比べて高い。よく見てみるとナットの高さが他の楽器に比べて高かった。フレット交換時に指板を調整したためであろう。
ただこの楽器は張力が弱いので弦高を低くするとローポジションで弦がびりついてしまう。そのためナットを調整するとしたらわずかしか出来ないだろう。
こうやって測定値を見てみると、1Fが0.5mm、3Fが1.5mm、5Fが2.0mm、7Fが2.5mmというのがある程度の標準的な高さなのかもしれない。
ちなみに弾きやすい楽器はギターCとギターDである。これらの楽器も当初はネックはストレートだったが、時の経過に伴いやや順反りした。
ギターBのネックは殆ど変化が無い。安定しているし、若干反ったとしてもまもなく元に戻る。
ちなみにギターを弾かないときに弦を緩めるかどうかについてであるが、私は必ず緩めている。緩めても楽器に影響は無い(影響があるという製作家もいますが)。
現代ギター社や有名楽器店で出している取扱い説明書には、楽器を弾かないときは必ず弦を緩めるように記載してある。
多くの楽器を扱ってきた楽器店の方も、弦を緩めるように勧める方が多かった。
私の場合、張力の強い弦を張ってネックを反らしてしまった経験があるので必ず緩めている。
湿度、温度の変化が大きい時期に、弦の張力が加わってネックやブリッジ付近が変化することがあるので要注意だ。
蛇足だが、今日ギターCで弾いた曲を録音してみた。
スペイン舞曲第5番アンダルーサ 2024年7月21日 夕方
この夏、セラック塗装のギターは管理が難しくて、
ほとんどハードケースにしまい込んでいます。
エアコン使うと涼しくはなるが、乾燥が酷くなり、楽器へのダメージが心配になりますし、暑いと汗がダラダラで塗装が溶けてしまう。それで、ウレタン塗装の安い練習用ギターを使い倒している現状です。割れても仕方なしと。エアコンを使用すると常時、湿度30~35%になっていて、かなり危険な状況ですが、ネック反りは無く、まだ割れてはいません。塗膜が分厚いので何とかなっているのかもしれません。まだ、冬場の管理の方が楽に思えます。
確かにおっしゃるように楽器の管理は冬よりも真夏の方が大変だと実感しています。
セラック塗装の楽器であればなおさらですね。
以前、8月初めの最も暑い時期に1週間程留守をしたことがあったのですが、その間たまたま猛暑が続いたこともあり、セラック塗装が溶けてしまったことがありました。部屋の温度は連日40度近くまでになっていたと思われます
表面板なのですが、留守をするまでは光沢があったのに、帰宅後にケースから出して表面板を見たら明らかにつやがなくなり、木目が浮き出ていました。塗料が溶けたのだと思います。
あとセラックの場合はおっしゃるとおり汗や結露に弱いので、塗装が白濁したり、剥げたりしますね。
上がる場合も下がる場合も急激な温度変化と極端な高温(40度近く)や乾燥(湿度40%以下)となる環境に長い間さらされるのが、一番良くないように思います。力木が割れることもあります。
ネックは冬場の方が安定しています。
梅雨時にたっぷり湿気を吸い込んだネックが、夏場の冷房の使用により急激な温度低下と湿度低下で反ってしまうものと考えられます。