緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

2011年スペインギター音楽コンクールを聴いた

2011-10-16 10:59:02 | ギター
こんにちは。
昨日は休日なのに出勤でしたが、今日は休みです。
いつもなら夜遅くに日記を書くのですが、今日は昼から書くことになりました。
さて、先日10月9日に年一度開催されるスペインギター音楽コンクールを
聴きに行きました。
秋はコンクールが多いですね。8日にはNHK合唱コンクールが開催され、今月
末には朝日新聞主催の合唱コンクールも開催されます。
そして来月には東京国際ギターコンクールが開催されます。1年のうちで最も
充実した時期ですね。
このスペインギター音楽コンクールは国内のコンクールとしては最高峰と言われて
おり、出場者のレベルもなかなかのものです。
このコンクールで入賞してプロとなり、活躍している方もたくさんいます。
プロを目指す方にとっては、それだけ重要性の高いコンクールでもあるのです。



前日に夜中の3時に寝たので、眠くてしょうがなかったのですが、第2次予選
の途中からホールに入りました。
第2次予選の課題曲は、F.タレガ作曲のアラールの華麗なる練習曲です。



楽譜の一部しか載せられないですが、アルペジオ(分散和音)が終始連続する
難曲です。左手がちぎれそうに痛くなる曲です。
この練習曲は、19世紀のフランスの作曲家であるアラールというヴァイオリ
ニスト兼作曲家の練習曲を、タレガ(名曲アルハンブラの想い出の作曲者)
がギターに編曲したものだと言われています。
この曲の録音でお勧めは何といってもアンドレス・セゴビアです。
なおセゴビアの演奏では冒頭のハーモニックスは省略されていますが、原曲の
楽譜を見ると確かにハーモニクスの部分の音はなく、すぐにアルペジオから
始まっています。

難曲だけあって上手く弾けている人は殆どいませんでした。
第2次予選を聴いてちょっと気になったのは、演奏前のチューニング(音合わせ
)で、クリップ式の電子チューナーを使っている人が少なからずいたことです。
これはあまり感心しなかった。なぜならば音を耳で聴いて合わせることは、
音の正確さを見分ける能力を鍛えるのに最適な方法であるからです。
確かに目でメーターを見ながら音を合わせるのは便利だし、より正確に調弦
できるかしれないが、音を聞き分ける能力は退化していくのではないか。
これについては別の機会に意見を書きたいと思う。
また次に感じたのは、演奏者の音が軽く、細いうえにカチカチするような音
が目立ったということです。これは奏者の右手の角度とタッチの方法に起因
するのですが、これについても別に機会に述べたいと思う。
いずれにしても私には例年よりもレベルが低かったように感じられた。

次に、本選ですが6名の奏者が選出され、課題曲1曲と10分以内の自由曲
(曲数自由)で審査されます。
課題曲はF.ソル作曲の「マルボローの主題による変奏曲」です。



この曲は技巧的にはそれほど難曲というほどの曲ではないうえに、旋律も明解
で親しみやすい曲なので、音楽表現をどこまで深くできるかが審査のポイント
になったのではないかと思われます。
因みにこの曲は元々フランスの民謡(歌唱曲?)で、「マルボロー将軍が戦場に
行った」という曲をテーマにしてソルが変奏曲付きで作曲したといわれています。
ソルはスペイン人ですが、ある事情をきっかけにフランスに行くことを余儀なく
され、その後は一生スペインに戻ることなくパリに没したと言われています。
恐らくこの曲はソルがフランスに移ってからフランス庶民の歌を聴いて感動し
これを変奏曲にしたのではないかと思います。

次に自由曲ですが、演奏された主な曲は以下のとおりです。

①ファンダンゴ(ロドリーゴ作曲)



②ソナチネ(トローバ作曲)



③コンポステラ組曲(モンポウ作曲)



④内なる想い(アセンシオ作曲)※写真は最終楽章



⑤スケルツオ・ワルツ(リョベート)



⑥祈りと踊り(ロドリーゴ)



楽譜が一部しか掲載できないのですが、⑤を除いてはどの曲も演奏会や録音
で頻繁に取り上げられるスペインの名曲です。

今回の課題曲と自由曲の演奏を聴いて、本選も技巧的には不十分な演奏が
目立ち、レベルが例年よりも落ちているなという感じがしました。
しかし自由曲で④内なる想いと⑤スケルツオ・ワルツを弾いた方の演奏は
素晴らしかった。
特にスケルツオ・ワルツを弾いた方の、課題曲マルボローの演奏は、歌心が
感じられた。聴いていて楽しめた。
内なる想いを弾いた方は繊細な表現の出来る類まれな演奏のできる印象を
もったが、自由曲ではもっと強い表現が欲しかった。テクニックももう少し
という感じがした。
スケルツオ・ワルツを弾いた方の演奏は初めてであったが、将来、国際コン
クールでも十分通用するテクニックや音楽性を感じた。

当日は夜に仕事を控えていたため、審査結果を待たずにホールを出て、後で
コンクール主催者のホームページで審査結果を見たが、3~6位は想定
どおりだったものの、1位と2位は私の想定とは違う結果でした。

1位の方はコンクールの常連ともいうべき方で、最近よく目にする方ですが、
2位は初めて見る方です
私の受けた感じでは、2位の方の演奏の方が、音楽表現も技巧も大きく抜きん
出ていたと感じたのですが、予想に反しました。
コンクールの審査結果を見ていつも思うのは、初出場の方より常連者の方が
有利ではないかということです。審査員も常連者の演奏を聴く機会が多くな
れば、その人の実力や音楽性などが事前にわかるし、プロを目指しているの
であれば優勝させてあげたいという気持ちが働くのであろうか。
若くて初出場であればこれからたくさん機会があるのだからだということ
なのであろうか。今までコンクールの審査結果を見てふとそのような気持ち
になったことがある。
昔2002年のスペインギター音楽コンクールを聴きに行ったときに、本選
自由曲で先の「内なる想い」を素晴らしい演奏で聴かせてくれた女性の方が
いたのですが、私は完全に1位だと思っていたのですが結果は3位でした。
そのときの彼女はみててかわいそうでしたね。しかしその年の東京国際ギター
コンクールで日本人の中では最上位の成績をあげたし、翌年の東京国際で
は本選に出場し、これもまた日本人のなかで最高の成績を残した。
こんなことを言ってもしょうがないと思いつつ、コンクールの審査結果という
のはあまりあてにならないと思うようになっている。
1週間前に行われたNHK合唱コンクールでも同じようなことを感じたが、
人が評価するものなのでしょうがない。
あまり言うとくどくなるので、今後審査については言うことは、もうやめるこ
とにした。

しかしコンクール当日で、いつもコンクールや展示会で出会う知人と久しぶり
に再会し、情報交換を楽しめ充実した1日を感じることができた。
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