緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

園田高弘のベートーヴェン・後期ピアノソナタを聴く

2013-12-22 22:24:33 | ピアノ
こんにちは。
三連休も半分を過ぎました。暖かい穏やかな天気に恵まれました。
昨日日本人ピアニストで素晴らしい方の演奏に出会いました。
その方というのは園田高弘氏(1928~2004)のことです。
ベートーヴェンのピアノソナタ30~32番を聴いたのですが、とにかく素晴らしい演奏でした。



これまで日本人のピアニストには全くというほど関心がありませんでした。その理由は日本人のピアニストに優れた人はいないという先入観です。
しかし今年の秋に仲道郁代のコンサートでベートーヴェンのピアノソナタの生演奏を聴いて少し考え方が変わりました。そしてこの園田高弘の60代後半に録音された演奏を聴いて全く見方が変わりました。園田氏の名前もベートーヴェンのピアノソナタを本格的に聴くようになるまで全く知りませんでした。
園田氏の録音にはベートーヴェンのピアノソナタ全曲が3種類あると言われています。
しかしその録音は殆ど全てが廃盤になっておりなかなか聴くことができません。これは非常にもったいないです。確認していないがもしかするとyoutubeに投稿されているかもしれませんが、やはりLPかCDでじっくり聴くべきだ。園田氏の演奏はとてもデリケートで職人的な完成度があるので、きちんとした録音媒体で聴かないと真価は分からないと思います。
園田氏の演奏を初めて聴いた時、ミケランジェリやマリヤ・グリンベルグを聴いたときのような強い衝撃はなかったが、何か強く惹きつけられるものを感じました。また聴いてみたいという感覚です。そして数回聴いてみて、この人の演奏は派手さはなく堅実であるが、静かでありながら深い感動を与えてくれるタイプの奏者であることがわかった。
例えば31番の下記の部分などは、とても瑞々しく生気に溢れています。70近い年齢とは思えない感受性だと思います。



次の32番第1楽章の部分はベートーヴェンの苦しい叫び声がリアルに伝わってくる。



また低音の使い方も独特で、タッチは強くないが下記の部分のように低音の音色が多層的に聴こえてくるのが彼の音の特色だ。

(31番)


(32番)


日本のギーゼキングと言われた時代があったようですが、このピアノソナタを聴く限りでは全く見当違いに思えます。当人もこの言い方に戸惑っていたようだ。
園田氏は作曲者が演奏者に要求することを極力誠実に表現しようとしています。とくに技巧面では淀みやごまかしのない妥協のない職人的な演奏をします。園田氏のこの晩年の録音を聴くとまずその高い技巧に驚くに違いありません。ベートーヴェンのピアノソナタはトリルが多用されているのですが、園田氏の演奏は乱れが殆どありません。32番の最後のトリルなどのミケランジェリと遜色ないと感じるほどだ。このトリルの部分は私が今まで多数聴いた演奏のなかでもトップレベルです。最後のトリルはマリヤ・グリンベルクの1961年の放送用録音(全集ではない)と共通のものを感じた。とても美しいです。
個人的には低音にもう少し強さと、32番第1楽章は強い情熱があるといいと思ったが、園田氏の演奏スタイルは感情的なものを強く前面にだすタイプではないと思います。じわじわと聴く者に感動を与えていき、気づいた時にはまた何度聴いてみたいと感じさせる不思議な魅力を持っている。
園田氏のこの後期ソナタの演奏は私が今まで聴いてきた録音のなかでも上位に入ります。
園田氏は幅広いレパートリーを持ち、亡くなるまで演奏活動を続けたと言われているが、ピアニスト人生を賭けて最も力を入れて研究したのがこのベートーヴェンのピアノソナタに間違いないと思います。彼の晩年のこの録音を聴くと何十年という長い時間をかけて到達した年輪のような積み重ねの厚みを感じます。その演奏にはどっしりと地に根をはやしたような確信のようなものが伝わってきます。

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