緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

宍戸睦郎作曲「ギターのためのプレリュードとトッカータ」より「プレリュード」を弾く

2023-12-17 21:08:48 | ギター
ギター独奏曲の最も好きな曲の1つに、宍戸睦郎(1929-2007、北海道旭川市出身)作曲の「ギターのためのプレリュードとトッカータ」という曲がある。
この曲を初めて聴いたのが1992年頃だった。ある日本人ギタリストが演奏した録音だった。
この時はこの曲を聴き続けることはなく、1、2度聴いただけで終わってしまったが、2000年頃、東京国際ギターコンクールの本選課題曲としてこの曲が選出されたときに、上野の東京文化会館小ホールで本選出場者(5名だったかな)の生演奏を聴いて、一気に惹きこまれてしまった。
その当時、私は日本人作曲家の手による、日本的情緒に満ちたギター曲を探し求めていた頃であり、この曲がこの強い欲求を満たす内容を持つ曲だったのである。
この時のコンクールは非常にレベルが高く、手に汗を握るほどの展開だったと覚えている。
アレクサンダー・レンガチという30代半ばくらいの奏者が優勝し、その後、この課題曲を収録したCDもリリースされた。

この曲にすっかり魅了された私はギタルラ社から出ていた楽譜を早速買い求め、練習を始めた。30代半ば過ぎの頃であろうか。
楽譜が破れ、度重なる譜めくりと夥しい量の手汗で黒い染みが随所に付くほど(?)練習した。









「プレリュード」はこれまでのギター曲には全く無い独特の曲想を持つ曲であった。
「トッカータ」も同様、日本の打楽器的要素を取り入れた超絶技巧を要する曲であり、このような曲を内外のギター曲で聴いたことはなく、独自性、強い個性を持つ曲であった。
「プレリュード」と「トッカータ」を通しで練習し、昔のミキサー付き録音機に全曲演奏を録音したのだが、惜しいことにCDをダビングするときに消してしまった。
その当時は未だ若かったから「トッカータ」もそこそこに弾けていた。

この曲は1969年の夏に作曲された。作者が40歳手前の頃であろう。
この曲に何故惹かれたかというと、伊福部昭や鈴木静一、原田甫といった5音音階陰旋法を主体とした音作りとは全く異質の「日本的情緒」を感じたからである。
それは日本が敗戦の廃墟から立ち上がり、復興、そして幸福で豊かな生活の実現に向けて凄まじい努力をしていた活気あふれる時代、まだ貧しいながらにも素朴な美しい自然を感じながら生きていた時代の人々の生活からにじみ出るものを感じさせてくれたからである。
とくに「プレリュード」は冨田勲の「新日本紀行」のテーマ音楽から伝わってくるものとどことなく共通のものを感じる。
古い日本式家屋の縁側で夏にスイカを食べ、日没近くまで川遊びに興じ、静かな川べりで沈む行く美しい夕日を眺めたり、といった素朴な、まだ日本が美しさを残していた良き時代の日常生活の雰囲気が感じ取れる。

今日、この「プレリュード」を録音してみた。
もう少し、ダイナミックレンジの広さ、表情の豊かさが欲しい。気持ちの出方が足りない。

「プレリュード」が完成したら「トッカータ」も来春の完成を目指して頑張ろうと思っている。

作曲家、野田暉行(1940-2022)も絶賛した日本人によるギターの名曲「ギターのためのプレリュードとトッカータ」より「プレリュード」 まだまだおとなしい演奏 2023年12月17日夕
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