緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

金属の魅力-鉄-(1)

2019-06-16 20:15:45 | 金属
今日はとても暑い1日だったが、新宿までマンドリン合奏の練習に行ってきた。
定期演奏会まであと1週間。
去年の11月から練習開始してからあっという間に過ぎた。
マンドリン合奏を30年ぶりに再開して1年余り。
この間、多くの人たちと演奏をともにしてきたわけだが、今まで長い間このような経験をしてこなかった私にとっては1日、1日がとても貴重だった。
もとより会話の苦手な自分ではあるが、話の出来る対象の方も徐々に広まってきているし、何よりも合奏練習を通して多くのことを学べるのが楽しい。

今年のプログラムの中には管楽器やパーカッションの賛助のみならず、ソプラノ独唱や男性合唱が挿入される曲があり、とくに男性合唱が挿入される曲がもっとも弾き応えがある。
早世した、作曲者の親友の死を悼む短い曲なのであるが、作曲者の人格というのか、人間性が随所に滲み出た素晴らしい曲だと思う。
私はこの曲に最大のエネルギーを注入することにした。

今日の帰り道、JRの駅からは車であるが、クーラーを付けずに窓を開け(クーラーを付けるとスピードが出なくなるというせいもあるが)、夕方の黄色い穏やかな日差しが緑の木々に反射するのを見たり、またやや強いが気持ちのいい風を感じることができた。
こういう日って年に数回しかない。
しかも都会では感じられない。
緑の多いところで、自然のものに触れることは絶対に必要だ。


さて、話は変わって金属の話だ。
今回は鉄だ。
鉄は真鍮やステンレスなどと違って合金ではない。鉄鉱石が原料だ。
だから鉄は他の金属と違って人工的な感じはしない。自然のものだ。

鉄は生地ままだと酸化して錆びてしまう。
だから鉄の加工物は殆どが表面に塗装かメッキを施している。
メッキは溶融亜鉛か電気亜鉛メッキだ。
亜鉛は錆に強いと言われている。
メッキではないが、亜鉛の微粒子を鉄板に溶射して錆止めにしたものもある。
このようなものは亜鉛溶射した上から塗装する。

鉄を生地で使用するものの例として、日常品では釘がある。
釘は木材に埋め込まれ、空気に触れないから錆びない。
しかしフック代わりに釘をちょっとしか打ち込まなかったものは錆びている。
後は、昔の表面処理をしていないフライパン、南部鉄器と呼ばれる鉄瓶がある。

下がその鉄瓶だ。







20年くらい前にヤフオクで買った中古品だ。
塗装などの表面処理はしていない。
鉄瓶は鋳造(鋳物)と呼ばれる製法で作られる。
鋳物は、まず木型を作り、その木型に砂を詰めて砂型を作り、その砂型に溶解した鉄を流し込み、冷えてから砂型を壊して成形物を取り出す。
鋳物は古代から続いてきた製法で、現在でも至る所で行われている。
誰もが目にするのはマンホールの蓋だ。これは鋳鉄で作られたものだ。
私の勤務先は鋳鉄は殆ど無いが、銅やアルミ鋳物の加工部品を購入して、組立工程などに投入されている。

鉄瓶は塗装やメッキなどの表面処理をしていないから、鉄という自然の生んだ素材を味わえる。
外側は多少錆が出ても気にならないが、内側は使用後に水分を完全に除去しないとすぐに錆びてくる。
鉄瓶を長く使っていると、内側が茶色く変色してくる。
これは一見錆のようであるが、錆ではないようだ。
調べてみたが、あるホームページでつぎのようなことが書かれていた。

「そして、鉄瓶を使い始めておよそ2週間目頃になると、鉄瓶の内側に褐色の斑点や白い沈殿物が付着し始めます。
これは錆ではなく、湯の中に混じっている様々な物質(カルシウムなどのミネラル等)が沈着したもので、「湯あか」と呼ばれます。
「あか (垢)」というと聞こえが悪いですが、鉄瓶におけるこの「湯あか」は、絶対に取り除いてはいけません。
なぜなら、この「湯あか」こそが、湯をまろやかで美味しいものにしてくれるからです。
「鉄瓶は使い込むほどに良い」とされるのは、このためです。」

自分の鉄瓶の内部は一見すると錆だらけのように見えるのであるが、これを読んで安心した。





鉄は水分が付着したり、空気に触れるとすぐに錆が出る。
塗装やメッキをしても防ぎきれるものではない。
暇があったら電車の窓から見える風景に注目して欲しい。
至る所に、塗装が剥げて錆に侵されたフェンスや手摺、ガードレールなどが氾濫している。
下の写真も通勤で利用する駅のフェンスを写したものだ。



塗装しても、わずかな傷から水が入りこみ、腐食が進行していく。
その進行はPOR-15のような特殊で強力な塗料でないと防ぎきれるものではない。
よく、鉄鋼材の塗料を剥がして、内部の錆をグラインダーなどで除去し(これをケレンという)、再塗装されることがあるが、このケレン作業を完璧に(すなわち錆を全て除去)行わないと、またしばらくすると錆が塗膜の下で進行し、塗料が浮いてきて元の状態に戻ってしまう。
よくケレンしてからパテ盛りすることがあるが、錆びが残っていたらパテも浮いてきてしまう。
ケレンすると鉄鋼材の板厚が薄くなり、そこに更に錆が出来るともはや表面だけの腐食ではなくなる。

下の写真は今日、家に帰ってから家のそばにあったものを写したものだ。
これは溶融亜鉛メッキを施していた縞鋼板だったと思われるが、メッキは完全に剥がれ落ち、表面が錆に一面覆われている。



表面だけ錆びているように見えるが、恐らく縞鋼板の内部まで錆が進行しているに違いない。

このタイヤのホイールはアルミではなくスチールホイールだ。
元は塗装が施されていたであろうが、今は見る影もない。
ここまでくると朽ち果てるのを待つしかない。



そして次の写真であるが、完全に鉄の内部まで進行した末期症状の鉄板だ。
もはや原型をとどめていない。
元の状態がどのようなものであったのか見分けることもできない。
手で触ると、ボロボロと崩れてくる。もはやなすすべはない。
これがあわれな鉄の末路だ。






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