緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

山田耕作編曲「春雨」を聴く

2016-05-01 23:16:42 | ピアノ
今日、近くの図書館で「山田耕作の遺産Ⅱ(器楽編)」なるCDを借りてきいてみた。
この「山田耕作の遺産」シリーズのCDは今から15年ほど前に、東京高田馬場のムトウレコード店で、「歌曲編」を買ったことがある。
「からたちの花」や「荒城の月」のピアノ編曲版などを収めたものであるが、「春雨」という端唄を山田耕作がピアノに編曲した曲がとても印象に残った。
典型的な五音音階陰旋法による純日本的な曲である。
いまやこの手の音楽は、正月や特別な演奏会でしか聴けなくなった。
しかし当時の日本の音楽といえば、この「春雨」のような曲が殆どだったに違いない。
しかし美しい。
この音階による音楽は世界に類を見ない。
もっと世界に伝えるべき音楽だ。
日本人は、日本古来のもの、伝統的なものにコンプレックスを抱く傾向がある。
西洋のものが優れていると思うことが多い。
箏、尺八、篠笛などの音色や音楽に若い世代は殆ど関心を向けなかった。
いやもっと上の年代でも関心を示す人は少ない。
ビートルズの音楽に日本中の若者が熱狂していた1960年代に、伊福部昭の「古代日本旋法による踏歌」や「箜篌歌」が作曲されたが、殆ど取り上げられることはなかった。
楽譜は長い間絶版となっいた。
ビートルズやレッド・ツェッペリンでみんなが浮かれていた時に、若い人がこういう純日本的な音楽に関心を向けることは、変わり者と思われたのであろうか。
しかし日本の伝統音楽には西洋の音楽には絶対にない、独自のものがある。
その日本のルーツとも言える日本人の感じ方に触れられるのも、日本の伝統音楽を通してである。
古い流行歌でもこの手の旋法を使用したものがあるが、この「春雨」はもっと日本の古い根源的なものを感じる。

今度古い民謡や子守唄の音源を探したいと思っている。
そこに必ず、西洋の文化の影響を受けなかった、日本の独自の文化や人々の感じ方を見出せるに違いない。

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久しぶりの日本酒(3)

2016-05-01 22:30:10 | グルメ
今、ゴールデンウィークの開放感に浸りながら日本酒を飲んでいる。
昨日(4月30日)、栃木県烏山市にある酒蔵を訪れた。
「東力士」という銘柄を出している酒蔵であるが、日本酒好きの方であれば知っているかもしれない。
JR宇都宮駅で烏山線という路線に乗り換える。
この烏山線はもう20年くらい前から一度は乗ってみたいと思っていた路線だ。
今回酒蔵見学を兼ねての乗車であったが、のどかな田園風景の中を走る気分のいい、ちょったした小旅行を楽しむことができた。
地方のローカル線なので、車両数は2両、ワンマン車であった。



しかも昭和の時代のディーゼル車。
この手の列車は大学生の頃まで北海道でよく乗った。
ホームを出発して加速するのが遅い。しかもものすごいうるさいエンジン音をたてる。
そして独特の石油を燃やす臭い。
現在の最新型の電車ばかり乗っている人からすると、「なんだこの列車は?」と思われるかもしれないが、この独特の古臭さがなんとも好きなのだ。
特に独特の排気ガスの臭いが懐かしい。
北海道にいた頃によく乗った、肌色に窓の周りが朱色、または朱色一色の「キハ」と呼ばれる車両が思い出された。
帰りに宇都宮駅に着いた時にはこのタイプの車両が駅構内で待機していたのを見て何だか嬉しくなった。

このディーゼル車の車両内も昭和50年代に戻ったかのような気持ちを感じた。
窓は左右の端のクリップのような金具を同時に下げて上に持ち上げて開けるタイプ。
この懐かしい窓を操作したのは何年ぶりだろう。
そして天井には回転式の扇風機。椅子の生地も色は赤だったが国鉄時代によく使われていた、あの生地だ。

1時間弱で終点烏山駅に着く。
スイカが使えない駅だったので、現金で払い、スイカの記録は後で他の駅で消してくれとのこと。
小さな駅で、駅周辺はとても静かであった。



高層のマンション、ホテルの類は無い。
駅近くに小さな旅館が2件。
昔からある古い民家や、鉄筋の建物もさびれたものが多い。
しかし暗い感じはしない。
地味であるがのどかで静かな町という感じだ。
それと派手な町おこしを望まない感じがする。古くからある伝統や街並みを保っていこうとしているように思われた。
この町で観光らしいものと言えば、「山あげ祭り」という祭りのようだ。
くわしくは分からない。

さて今日の主目的である酒蔵を目指す。
20分程歩いて、やや坂を下った所にその酒蔵はあった。



客はもしかして私一人かもしれないと一瞬思ったが、店の暖簾をくぐると数名の客が来て、たくさんの種類の酒を見たり、試飲したりしていた。
綺麗な店だ。
小さな酒蔵に見えたが、酒の種類は驚くほど多い。安い大衆酒から数万円のものまで色々だ。
この酒蔵が得意としているのは、何年も何十年も寝かせて熟成させた貯蔵酒のようだ。
店の人にいろいろ質問して、酒の違いを聞く。
失敗したのは、自宅から最寄の駅まで車できてしまったことだ。
本当は車で駅までいかないで試飲する計画だった。
かなり不便であるが、バスで自宅の最寄の駅に行くつもりだった。
しかし当日の朝、試飲のことなどすっかり忘れており、日常の惰性で車に乗ってしまったのだ。
試飲できなかったことを悔やんだが、いつかまた来れるからいいや、と思った。

この酒蔵から車で5分くらいのところに、先の酒を熟成させる天然の貯蔵庫があるという。
そこは、第二次世界大戦中に建造された洞窟だという。
店の人に聞いたら、特に車で送迎はしていないとのこと。
歩くと30分かかるとのことなので止めた。
そして、おいしい酒がどれか物色することに集中した。
しばらくすると、思いがけず、いろいろ質問を聞いてくれた店の方が、洞窟を案内するから、これから車で行きませんか、と言って下さったのである。
これは嬉しかった。
早速、車で例の洞窟まで連れて行ってもらった。
この洞窟は、小高い丘のような所にあったが、石を切削して建造したものなのだと言う。
第二次世界大戦末期に、戦車を作るために作るために作られた軍需施設であったが、切削機械を持ち込めなかったため、人力による手彫りで建造されたのだという。
洞窟内の天井や壁は、ごつごつしており、たしかに手彫りで作ったに違いない状態であったが、アーチ状に切削したことで、先の大震災にもびくともしない強度を保っているとのこと。
洞窟内はとても気温が低く、この天然の冷蔵庫で、何年も何十年も時間をかけて酒を熟成させていくのだそうだ。



洞窟から酒蔵に戻り、さんざん見て選んだ酒2本を買った。
1本は、「熟露枯(うろこ)」と呼ばれる洞窟酒で、山田錦を使った純米吟醸酒。
もう1本は、スタンダードな純米吟醸酒で、銘柄は「東力士(あずまりきし)」というこの酒蔵の定番の商品だ。
家に帰り早速飲んでみた。
「熟露枯(うろこ)」は独特な味だ。



よく色の黄色い熟成酒があり、飲んだことがあるが、それとも違う味だ。
かなり独特な味なので、万人受けする酒ではない。
純米吟醸「東力士(あずまりきし)」はとてもおいしい味だった。



いわゆる今流行の果実酒のような味はせず、落ち着いたスッキリとした味で、後味もいい。
スッキリとしているが、何杯か飲んでいるうちに味に深みが出る。
華やかな香りと味を前面に出す酒が多い中で、この酒はこの酒蔵昔ながらの伝統の味を引き継いでいるように感じた。
私はどちらかというと、昔ながらの日本酒らしい日本酒、それも米の味がする酒が好きだ。
20代半ばに松本の上高地に撮影旅行に行った帰りに買って、会社の寮に帰ってその日のうちに飲んだ酒が、米のおいしい味がして、その味がいまだに忘れられない。
その酒の銘柄は覚えていない。
いつか探し出してみようと考えている。

買い物を済ませて店を出ると、駅から来た道とは違う道を歩いてみた。
市役所の向かいに、古めかしい喫茶店?、お茶処というのれんのかかった店に出会った。



軒先に薪が置いてあり、この薪で沸かしたお湯でお茶を入れてくれのであろうか。
こんど来た時にはここに入ってみよう。

帰りの列車は、最新型の電車で拍子抜けした。



こんな電車では旅の雰囲気を味わうこともできない。
せめてローカル線は、新型車両は廃止して元の古い車両に戻して欲しい。

下の写真は、新旧車両お揃い。



ささやかな小旅行であったが、初夏に入る前の気持ちのいい季節を満喫できた。
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