晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『お文の影』

2015-08-04 | 日本人作家 ま
年をとったせいなのか、最近テレビドラマをまったく見なくなりました。
もし面白くなかったときに「時間を返せ」とぶつけるあての無い怒りの
ようなものが込み上げてきたりするのです。
まあ、タダで見させてもらってその言い分はなんだ、と思うでしょうが、
なんといいますか、有意義な時間を過ごしたいんですね。

ラッキーなことに、いまだ小説を読んで「時間を返せ」と思ったことは
ありません。この『お文の影』は、正直、読後スッキリはしませんでしたが、
無駄な時間だったとは思わなかったです。

短編で6編あり、江戸時代の怪談話です。

江戸でコロリ(コレラ)が発生し、材木問屋「田屋」の主人、重蔵が
私財で患者の身内を助ける「お救い小屋」を建てます。そこで家族を
コロリで失くしたおつぎという女の子がお救い小屋の手伝いをしている
うちに田屋の女中となります。ある日、重蔵に、ある掛け軸を見せて
もらうのですが、おつぎには不気味なお坊さんが見えて・・・
という「坊主の壷」。

隠居の佐次郎のもと、長屋の子供が集まり、そこでみんなで影踏み遊び
をしていたところ吉三という大工の息子がどうも様子がおかしいので、
佐次郎が聞いてみると、自分は怖がりじゃないんだが何かが怖い、という
のです。影踏みをしていると、人数より”一人分多い”影がある、しかも
それは女の子の影のようで・・・という表題「お文の影」。

醤油問屋「近江屋」で朝ごはんの最中、突然主人が「わっ」と大声を上げ
ます。そして「政吉兄さんが死んだ。”あれ”が来る」と言うや、男どもに
蔵を空けさせ、女子供は家から出るなと命令します。そこに不気味な音と
大きな揺れが起きます。主人の長女、お美代は、近所の男の子から、今朝、
近江屋に飛んで来た”大きな黒いもの”は何だと聞かれますが・・・という
「博打眼」。

手習所(今でいう学習塾)の先生、青野利一郎は、紙問屋「大之字屋」の番頭
からある相談をされます。大之字屋の息子、信太郎は青野の習子(生徒)で、
なんと番頭は、青野に信一郎を「斬ってくれ」と頼み・・・という「討債鬼」。

小間物商「伊勢屋」の若夫婦、お志津と婿の佐一郎は、箱根へ旅行に出かけ、
その帰り、東海道の戸塚で一泊します。宿の人から、相部屋をお願いできないか
と頼まれます。そこへ松という老女が入ってきます。その夜、松が布団の中で
泣いているのを佐一郎は見て、その涙のわけを聞くのですが・・・という
「ばんば憑き」。

傘貼りの内職をしている柳井源五郎右衛門に、娘の加奈が「父さまは、化け猫は
お嫌いですが」といきなりたずねてきます。
どういうことかと聞けば、この父娘の住む長屋にいる猫のタマが、化け猫だと
いうのです。ある夜、女が訪ねて来ます。「加奈ちゃんにお頼みしていたんです
けど」というではありませんか。さて、そのタマのお願いとは・・・という
「野槌の墓」。

怪談話というくらいですから、幽霊的なものが出てきて、幽霊になった”いきさつ”
も描かれているのですが、つまりこの世に強い恨みや悔いがあって成仏できない
わけで、これが悲しい。切ない。

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