晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

柚月裕子 『臨床真理』

2012-03-02 | 日本人作家 や
「このミステリーがすごい!大賞」の受賞作品はとりあえず
読んでおこうと決めているのですが、まだぜんぶは読みきれ
ておりません。

というわけで、この『臨床真理』は、2008年の大賞受賞、
知的障害者の施設で入所者が手首を切り、意識不明と通報を
受けて、救急車が「至誠学園」へ急行。
風呂場で倒れている女性を運ぼうとすると、入所者の男が、
自分も救急車に乗せろ、と車の前に立ちはだかり、仕方なく
乗せることに。しかし、病院に着く前に女性は死亡、すると
男はいきなり同乗していた施設長に襲いかかり、救急車は横転、
というスタート。

藤木司は、傷害、公務執行妨害、器物破損の罪で起訴されました
が心神耗弱で不起訴、医療機関に入院となりました。
臨床心理士の美帆は、司の担当となり、カウンセリングをはじめ
ようとしますが、突然「あか・・・」とつぶやくなり、吐いてし
まいます。

その後のカウンセリングでは「しろ・・・」とつぶやきます。する
と、それまで黙っていた司が、美帆の質問に答えはじめ、施設で
自殺を図って救急車で搬送途中に死亡した彩という女性のことを
語りはじめます。
そのときに、なぜ「お前が彩を殺した」といって施設長に襲いかか
ったのか、司は、他人が話す言葉に色がついて見えるというのです。

正直な言葉は白、嘘は赤、悪意のある言葉は、泥のような濁った色
に見えて、不快な匂いも感じて、たまらず吐いてしまう、と。

彩のことを話し始めたのは、美帆が「今日は」正直に話をしている、
と“見えた”からだったのです。
あの施設では、何か良からぬことが行われていると訴える司。
気になった美帆は、高校の同級生で警察の栗原に、至誠学園のこと
を調べてもらうのですが、調べていく途中に施設長がビルから飛び降り・・・

身内(弟)も心の病で、自分が放っておいたせいで自殺してしまった
ことを、美帆は罪の十字架を背負いつづけ、臨床心理士になったのも
それがきっかけ、という人物背景は、この手の話では前に見たような
定石パターンですね。
美帆にきつくあたり、司のことを何故か嫌っている女性看護士も、
途中まで悪者に描き過ぎたせいか、かえって「ああ、この人は一連の
犯罪とは関係ないや」と分かってしまいます。

それはともかくとして、だんだんと真相が分かってくるにつれての
緊迫感とスピード感はすばらしいと思いました。
コメント
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