晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

エラリイ・クイーン 『Yの悲劇』

2012-03-25 | 海外作家 カ
十代のころから文学青年で名作を読み漁っていればよかったの
ですが、生憎、数年前から本の面白さに目覚めたので、「読んで
おかなければ」いけないような名作をほったらかしにしてきて、
そんなわけで、今さらですが『Yの悲劇』を読むことに。

ニューヨークでは有名な、頭のおかしい一家という意味で有名な
「ハッター家」のひとり、ヨーク・ハッターが水死体になって発見
されます。
ヨークの妻でハッター家の中でも悪名高いというか、この家の中で
もっとも「頭のおかしい」エミリー夫人は、夫の死にこれといって
悲しいそぶりもみせず「あ、そう、死んだの」くらいの態度。

ヨークとエミリーのあいだには1男2女の子どもがいて、長女の
バーバラは詩人、ハッター家にあって唯一“まとも”とされてい
ます。長男のコンラッドは、マーサとのあいだに2男をもうけま
すが、母の頭のおかしさを色濃く受け継いだように、常に酔っ払い
評判は悪く、次女のジルも兄に負けず劣らず評判が悪い、といった
ところ。

そしてこの家には他にも、エミリーが前夫(ヨークとは再婚)との
あいだに生まれたルイザ・キャンピオンという、耳と目が不自由な
女性がいて、そのルイザの住み込み看護婦、家政婦と夫、コンラッド
の子どもたちの家庭教師がハッター家に住んでいます。

こんなハッター家で事件が。ルイザが飲もうとしていた卵酒の中に
毒が仕込まれていたのです。ルイザはそれを飲むことなく無事だった
のですが、コンラッドとマーサの子どもジャッキーが悪ふざけで飲み、
ゲエと吐いてしまって、毒が混入していたことが分かったのです。
何者かがルイザを殺害しようとしている・・・?

警視は、元俳優で探偵のドルリイ・レーンにこの事件の捜査協力を
依頼。ヨークの死からルイザの殺害未遂といった中、なんとエミリー
が殺されてしまうのです・・・

凶器は、楽器のマンドリン。犯人はこんなものでエミリーの頭を殴り、
それが直接の死因ではなかったにせよ、なぜ部屋の中には暖炉の火かき
棒など殺傷力のある凶器もあったのにマンドリンなのか。
そして、部屋の床じゅうに巻かれたパウダーのため、誰かが歩いた足跡
が。その靴の型からコンラッドの靴と判明はしたのですが彼にはアリバイ
があり、ルイザのために用意された果物カゴの中には、家政婦が見たとき
には洋なしが2つしかなかったのに、現場には3つ。そのひとつを調べて
みると、毒が混入してあったのです・・・

どこまでも奇怪な事件。それを探偵レーンはひとつずつ解明していくの
ですが、ちょっと展開に強引さがあるにはありますけど、それにしても
あまりにも複雑な筋をスッキリと読ませる、収納の達人のような構成の
力には、さすがミステリの金字塔と評価されるだけのことはありますね。

コメント
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