晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

楡周平 『フェイク』

2012-08-16 | 日本人作家 な
楡周平といえば、ハードなアクションエンタテインメント小説でおなじみ
ですが、この『フェイク』は、ソフトな路線。

主人公、陽一は、田舎で生まれ育ち、大学入学のため上京。大学といっても
名乗るのが恥ずかしいような偏差値最底辺の大学で、就職活動も悲惨な状況
で、かろうじて内定をもらったところが、飲食関係の会社。

といえば聞こえはいいのですが、ようはクラブのボーイ。といってもそこら辺
の安キャバクラなどではなく、いちおう銀座の一流クラブ。しかし安月給。

ある日、下半身に違和感があって、病院に行ったら性病といわれ、高い薬代
を払い、大学時代の友人で、実家の酒屋(歌舞伎町にある)で働く謙介に
借りる始末。

さて、そんなカツカツな生活を送る陽一ですが、よそのクラブから引き抜かれ
てきた新しい摩耶というママの専属運転手をすることに。なんとボーイの月給
とは別に日当がもらえるとあって、陽一は大喜び。この摩耶ママ、少人数の太い
客(来店のたびに大金を落としてくれる上客)を引っ張ってきて、年収はなんと
一億近くというから驚き。
さらに、ひとりの上客の愛人をしていて、高級マンションに住んでいます。

そんな摩耶ママの送迎をするようになって懐具合もよくなり、大学時代からお
付き合いをしている彼女、さくらとデート。
急に羽振りのよくなった陽一から、ホステス業についてあれこれ聞くさくら。
なんでも、実家の印刷工場が大変らしく、ホステスになりたいというのですが、
陽一は反対します。するとさくらは、じゃあ風俗をやる、と言い出します。
仕方なく、摩耶ママに話だけはすると約束することに。

なんと、摩耶ママはさくらを気に入って、ママの妹分ということで採用。

しかも、実家の印刷工場の話を聞いて、ママの上客のひとりから、印刷の仕事
を回してもらうことに。

ママとはプライベートな話や悩みなども聞くようになる陽一ですが、送迎の
ほかに、もう”ひと仕事”があるんだけどやらない?というお誘いが。

それは、さくらの印刷工場に仕事を回した、ワインの貿易をしている社長が、
とある事情で安いワインを大量に仕入れてしまい、それを捌くために、陽一
の働いてるクラブに置いてあるワインとすり替えてほしい、というのです・・・

そもそも、ディスカウントショップにいけば数千円で売られているものを
数万~数十万で売る銀座のお店で、それを”見栄”だけで払うような客に
ワインの味など分かるはずもない、と怖気づく陽一にはっぱをかけるママ。

さくらの実家に仕事が回り、社長も無駄になるはずだったワインが捌け、その
おかげで陽一には臨時収入が入り、ママも大助かり。
しかも、うっかり謙介に話をしてしまい、歌舞伎町のホストクラブにワインを
卸しているということもあって、その”ビジネス”に乗せてくれ、ということで
謙介も加わることに。

ところが、そうそうウマイ話が続くはずもなく、謙介は大金を手にして調子に
乗って、ノミ屋で競輪をやって大借金をこしらえて、ワインの裏仕事を頼んだ
社長は買い付け先の海外で脳梗塞で倒れ、さらに追い討ちをかけるように、
ママの妹分としてホステスのイロハをママから教わっていたさくらが店を
移るというのです。しかも摩耶ママの愛人だった上客を寝取って・・・

ヤクザに追われる謙介、ワインの仕事はいったん無かったことになり、摩耶ママ
は悲しいやら怒りやら、そこで摩耶ママは、なんとか”元”愛人をギャフンと
いわせたいと、ある策略を計画するのですが・・・

いわゆる「コン・ゲーム」とよばれる詐欺小説。詐欺といっても、騙されるほうに
救いようのない悲劇が訪れることはなく、痛快さがあって、楽しめました。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 服部真澄 『バカラ』 | トップ | 山本一力 『かんじき飛脚』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日本人作家 な」カテゴリの最新記事