晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

髙田郁『あきない世傳金と銀(三)奔流編』

2021-09-22 | 日本人作家 た
そういえば、前に何かで見たか誰かに聞いたか、「情けは人の為ならず」の意味を「かえって本人のためにならない」と誤って理解している人が多いらしく、まあ確かに「~ならず」は否定形ですのでそう間違えたとしても不思議ではないのですが、「ため(に)ならず」だったら間違えてもいいのですが、正確にいえば「為」の直後に「断定(なり)+打ち消し(ず)=ならず」で「~でなくて」になり、つまり「人のためでなくて自分のためなんだよ」という「真意」を読み取らなければならないわけですね。というか、間違えて解釈してしまう前に親なり教師なり周りの大人が誰も教えなかったんですかね。

言葉の乱れは心の乱れ。

ざっとあらすじを。摂津国(現在の兵庫県)の学者の娘、幸は、早くに兄と父を失い、大坂、天満の呉服商「五鈴屋」に奉公に出されます。本を読むことが大好きな幸は、女中でありながら、番頭が教えてる丁稚たちの勉強会を見学させてもらうことに。そのうち、幸の商才に気付いた番頭は、遊びに夢中で仕事をしない当代主人の四代目徳兵衛の嫁にどうかと五鈴屋の女将で五代目の祖母である富久に相談、なんと幸は四代目徳兵衛と結婚することに。しかし遊びをやめることはなく、挙句、死んでしまいます。さらに、番頭の治兵衛が卒中で倒れ、隠居。四代目徳兵衛にはふたりの弟がいて、次男の惣次は商売熱心で真面目、兄に代って店を切り盛り。三男の智蔵は物書きになりたいということで家を出ています。長男が死んだということで惣次が五代目になるのですが、惣次には他家に養子に行く話が決まっていて、この状況で惣次に出ていかれたらアウトなので、五鈴屋に残ってくれとお願いすると、「幸と結婚するなら五代目を継いでもいい」と条件を・・・

もう、ここまででじゅうぶん大映ドラマ&韓流ドラマ&昼ドラ感満載。

さて、なんだかんだあって、幸は惣次と結婚することに。じつは惣次も幸に商売の才能があることを認めていて、五年以内に江戸に支店を出すという目標を掲げます。はじめこそ「ふたりで力を合わせて五鈴屋を盛り上げていこう」と言ってくれていたのですが、「幸は家の中のことだけ考えていてくれたらいい」と商売の相談も少なくなります。さらに、奉公人に厳しい売上げノルマを課し、だんだん雰囲気が悪くなっていきます。そして、新しい商売として、京の西陣から反物を買うのではなく、直接産地から買えばいいということで、江州(滋賀県)の絹糸の産地に資金提供をして絹布を現地生産して完成品を買い上げるというシステムを作ろうとします。富久は「天満の呉服商仲間に声をかけて一緒に盛り上げていこう」と提案しますが「なんで私の考えたビッグビジネスに他所を入れるんだ」と却下。さて、これが軌道に乗るかと思った矢先、五鈴屋が預かり手形を発行していた両替商が潰れて・・・

幸は、なにかあると、隠居した治兵衛の家を訪れます。預かり手形の件で相談した幸に治兵衛は、確かに前貸しは「支援」ではあるが、言い方を変えれば、借金で身動きできなくさせる、と言います。それを聞いた幸は「商人というのはやはり金銀に翻弄されるのでしょうか」とつぶやきます。治兵衛は「大坂商人は金銀に汚いようでいて実は違う。金銀を動かしても動かされない。血の通わぬ金銀に命を吹き込むのが本物の大坂商人だ」と教えます。
五代目徳兵衛の惣次は「商いに情を持ち込んでもろくなことはない」を信条にビジネスをしています。一方、富久は幸に「二代目徳兵衛は(徳は得に通じる)といって、受けた恩は忘れず、困ってる人には情をかけた」と教えます。これがシビアな経済小説なら前者が正しいなんて展開もよくある話ですが、そういうアレではないので、まあ今風にいえば(縁は円に通じる)ですかね。あ、ちなみに、個人的に仕事を(志事)ってアレ、苦手です。

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