晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

浅田次郎 『蒼穹の昴』

2009-04-24 | 日本人作家 あ
正直、読む前は、浅田次郎お得意の、日常にファンタジーやドラマチックなイベントが
盛り込まれて、最後にウルッとくるような系統なのかと思っていたのですが、中国の
後期清朝時代の小説ということで、しかもけっこうな長編。

べつに歴史時代小説はキライではないのですが、登場人物などの中国語読みと日本
語読みがごっちゃになって書かれているので、それが気になるから読み進むのに時間
がかかるのですが、そんな心配は杞憂でして、読みはじめた途端に物語にハマってし
まいました。

中国、清朝時代の地方豪商家の次男梁文秀は、放蕩生活ながらも、日本でいうところ
のキャリア官僚になる出世コースに昇進。
貧しい家に生まれ、牛や馬の糞拾いで生計をたてている、李春児の亡き兄は文秀と義
兄弟の契りを交わしており、実の弟のように世話をします。
町に住む占い老婆に、春児は将来、西大后の宝を手にするといわれて、その気になった
春児は、進士の試験を受けに北京へ行く文秀に、いっしょに連れていってもらいます。

文秀は進士にトップの成績で合格します。春児は出世の方法として、宦官になる決意を
します。

春児は、現在はうらぶれた生活をしている、もと宮廷に勤めていた人たちに芸や礼儀作法
のほどこしを受け、宦官として廷内で働きはじめ、やがて西大后の目にとまり、側近となり
ます。
一方、文秀もキャリア官僚の出世コースをひた走ります。

時代は、欧米列強が中国を植民地にしようと虎視眈々と狙っている状態で、そこに東の
小国日本も加わり、国内政治や情勢は紛糾。
これから清国が進むべき道は、西大后の院政に終止符を告げて開国政策をとるか、旧来
の帝政維持か。

文秀は開国派、春児は西大后側に付き、ふたりの運命は天子の運命の通りになるのか。
これに、この時代にあった史実、または作者独自と思われる解釈がふんだんに盛り込ま
れて、じつに興味深い。ぐいぐい惹かれていく。
高校時代に世界史でこの時代を勉強したとき、これを読んでいればすんなり頭に入ってた
だろうなあ。

李鴻章という文士、政治家で軍人が出てくるのですが、下関条約、香港割譲の全権などと
いったこの時代を語るうえでのキーバーソンで、中国国内では「売国奴」呼ばわりされていま
すが、彼と西大后がいなかったら大きく歴史は変わっていた、いやそれどころかのちの中華
人民共和国は無かったのではないでしょうか。

物語の後半、クーデターに失敗した元官僚が命からがら脱走して逃避行を続けているとこ
ろに、ひとりの少年と出会うのですが、その少年は、勉強してえらくなりたい、えらくなったら、
今のような人民に不公平を強いるのではなく、みんなが公平に幸せになれる社会を作りたい
と理想を掲げるのですが、その少年こそ毛沢東。

「ベルサイユのばら」で、わずかワンシーンですが、青年将校時代のナポレオンが登場し、
オスカルと会話を交わすのですが、なんかそれを思い出しちゃいました。


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