晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『あかんべえ』

2009-03-23 | 日本人作家 ま
宮部みゆきの時代小説は、おもに江戸時代の深川近辺が舞台で、
登場人物は料理屋夫婦、女中、岡っ引きといった市井の人々。
彼らの人情話であったり、幽霊が出てくる怪談話であったりする
のですが、そもそも時代小説といっても、リアリティーを追求し
たければ史実や史料に基づいて書いたとしても、それらが事実や
真実であると断定はできないのであって、ましてや当たり前です
が、その時代に生きていて、いまも現存している人なんていません
ので、確実な証言も取れない。つまり舞台設定は読者にとって、想像の
範疇であるということ。
さらに、非科学的だと一蹴するつもりはありませんが、化学的に
実在するとは断言できない、幽霊が登場してくる。
これに作者のユーモアと筆力と想像力が結集すると、あら不思議、
ファンタジーになるのですね。

『あかんべえ』は、江戸市中で孤児だった少年が、料理人として
出世して、結婚しますが、なかなか子宝に恵まれず、ようやく娘
が授かると、料理人の師匠である旦那から独立して、料理屋をま
かされることになります。
ようやく引越しも済み、いろいろ下準備にかかろうとすると、娘
が生死をさまようような重い病気に罹ってしまい、その時に娘は、
夢の中で川岸にたたずみ、川岸にいたお爺さんと会話します。
目が覚めると、お坊さんが娘の体を指圧してくれています。その
お坊さんは「これでお前の病気は治る」といって、すっと消える
のです。
じじつ娘の容態は良くなり、しかし、娘はこの新しい料理屋に、
なにも喋らず娘と目が合うと「あかんべえ」をしてくる女の子や、
二枚目のお侍さん、遊女などといった、さまざまな幽霊がいること
が分かります。この幽霊は、娘の両親も、娘がおばちゃんと慕って
いる女中にも見ることはできません。

幽霊がこの料理屋に居座っている理由とは・・・、なぜ成仏できて
いないのか・・・、女の子の「あかんべえ」の意味とは・・・

見事といえる伏線で、これらすべて解明されていくのですが、ほんと
うにおもしろい。話に無理もなければ無駄もない。

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