晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

浅田次郎 『プリズンホテル 冬』

2012-10-20 | 日本人作家 あ
「夏」からはじまって全4巻、「冬」は3巻目になります。

おおざっぱに説明しますと、極道小説が人気の売れっ子作家、木戸孝之介
は、幼い頃に母に出て行かれます。父が再婚した富江には一度も母と呼ばす
名前を呼び捨て、ばかりか暴言、暴力。恋人の清子にも暴言暴力。
孝之介の叔父はヤクザの仲蔵親分。その仲蔵がホテル経営に乗り出します。
そのホテルは”任侠団体専用”、誰が呼んだか「プリズンホテル」。
プリズンホテルの番頭と女将は夫婦で、じつは女将は孝之介の実の母。

叔父を「一家の恥」と嫌う孝之介ですが、なんだかんだいってこのホテルに
宿泊しに来るのです。

そして、季節は冬。孝之介は、クビ寸前という編集者から逃れるために、プリ
ズンホテルへ。

話は変わって、とある病院の救急センターに勤務する看護婦長、阿部は、その
仕事ぶりから、いつしか「血まみれのマリア」と呼ばれます。その阿部が、心
の休息にしていたファミレスの、お気に入りの店員が、救急センターに運ばれて
くるのです。なんと深夜勤務のときに、強盗に銃で撃たれて・・・

もう嫌になった阿部は、どこか人里離れた温泉に行こうと決めます。それが、どう
間違ったのか、予約した宿は、プリズンホテル。

そこで阿部は、久しぶりに”元同僚”に出会います。その医師、平岡はかつて患者に
安楽死をさせたのです。

孝之介に原稿を書いてもらうため、会社ではもう後のない編集者、みどりは、どうにか
して、孝之介の宿泊先を突き止めて、プリズンホテルへ。

さらに、武藤嶽男という世界的に有名な登山家と、自殺志願の少年も、プリズンホテル
へとやって来るのです。

「血まみれのマリア」は、どう間違ったのか従業員(仲蔵の舎弟たち)から、どこぞの
大物の姐さんと勘違いされたり、ちょうどこの頃、従業員たちのあいだで登山ブームに
なっていて、そんな折、登山会の有名人、武藤がホテルに来たので、大騒ぎ。

救急センターの看護婦、安楽死事件の医師、何度も死にそうになった登山家。
彼らの思う「命とは、生きるとは、死ぬとは」に、胸が熱くなります。

富江と亡くなった父との関係が、この巻で孝之介の知るところとなります。
自分を哀れんで、あるいは父を哀れんで富江は後添いになったと思っていたのですが
孝之介は何を知ったのか・・・

ドタバタからしんみりまでの緩急のバランスが、好きです。まあそれを「雑多」と評価
されなくもないのですが、小説なんて、面白いものの勝ちですよね。



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